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WebFrog Blog 1.02
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2016/12/18(Sun)
なんとか終わりが見えてきたので、自分の尻たたきようにサンプルをアップしておきます。 校正前のものですので誤字脱字が多数ありそうですが、こんな流れになると言うのは掴めるんじゃないかな、と。
「……無理ね。感覚的には理解しているつもりだけど、言葉にしようとするとものすごく陳腐になるわ」 しばらく考え込んだ後で彼女はそう言う。 「だろう? 僕だって同じだよ。まして、相手はルルーシュだよ? ブリタにあの中でもどちらかと言えばあがめ奉られる方だよ。そんな相手に日本の神様の概念を説明できない」 こう言われて今度はルルーシュ自身が首をひねった。 「そんなに難しいものなのか?」 神とは世界を作った存在だと聞いたことがあるが、と続ける。それは日本も同じだったはずだ。 「国産み神話だよね。まぁ、そうなんだけど……日本の場合、その神々の前にも神様が存在していたんだよ」 「……神がいなければ世界が作れないからだろう……って、ちょっと待て」 それではその神はどこから来たのか、と疑問に思う。 「日本の神話だと、神の意識が生まれたときになるのかな。しかも別天津神と呼ばれる神は性別がなかったしね本当に国を産むためだけに存在していたみたいだし」 神話には『身を隠した』としかかかれていない。だが、日本語でそれは『死んだ』と同義に使われることも多いのだ、とスザクは言う。 「……難しいな……」 「でしょう? だから言葉で説明できないんだよね。とりあえず『日本では神は身近な存在で、この世界にあるものすべてに神が宿っている』と覚えておけばいいよ」 そう言う点ではギリシャ神話やケルト神話、北欧神話に近いのかもしれない。スザクはそう続けた。 「それだけでレポートが一つ書けそうだな。いや、既にかかれてあるのか?」 調べてみよう、とルルーシュはつぶやく。 「それにしても、何でそんな話に?」 「神楽耶から招聘がかかったから」 年末年始の行事があるから仕方がない、とスザクはため息をついた。 「ルルーシュとナナリーも一緒に、と言われたんだけどね」 「俺の方もニューイヤーのパーティには出ないといけないからな」 そうしなければシャルルがすねる。本人がすねるだけならば放っておくが周囲にも被害が出る以上、無視するわけにもいかない。だから、不本意ながら参加するしかないのだ、とそう続ける。 「それがなければスザクの帰省に最初から同行するんだが」 仕方がないから翌日の便を手配した、とルルーシュはため息をつく。 「だからね。十日夜に参加してみたら、と言ったんだよ」 神楽耶もルルーシュ達の日程を聞いてそう提案してきたし、とスザクが笑う。 「それで御祭神の話になった訳ね。把握したわ」 ルルーシュならばそのあたりのことをしっかりと理解しておきたいと思っても仕方がない。カレンはそう言ってうなずく。 「それでカレンはどうする? スザクと一緒に日本に行くならそのように手配をするが?」 「……それだとあいつが押しかけてくるから、護衛と言うことであんた達と一緒に行くわ」 母さんと兄さんにはすぐにでも会いたいんだけど、と彼女はため息をついた。 「あいつ、一度母さんを捨てたくせに、いまだに未練たらたらなのよね」 母が再婚をしないのもそれに拍車をかけているらしい。本人は『もう男なんてこりごり』と言う理由で独り身を満喫しているのにだ。 「……それこそ、母さんに相談するか? カレンの母君は母さんのお気に入りの友人だしな」 日本に行くたびに押しかけていって手料理を満喫させてもらうぐらい、とルルーシュは笑う。さすがのシャルルも女友達にまでは嫉妬できないようだし、と心の中だけで付け加えた。軍に関しては下手に止めると本人がぶち切れるのと、軍人で彼女に手出しをするような命知らずはいないことをビスマルクとコーネリアが補償しているからだろう。 事実、あそこにいるのは──一部の貴族出身者を除いて──ただの猛烈なマリアンヌ信者だ。その心酔ぶりに息子であるルルーシュですらどん引きしたほどである。 「そこまではいいわ。今のところ、うざいだけだから」 さすがにヴィ家の保護を受けている人間に実力行使は出来ないようだ。カレンは苦笑を浮かべながらそう言った。 「そうか。なら、俺たちと一緒の便を手配するぞ。他に連れていくのはアーニャだから、問題はないな」 スザクとカレンだけでも十分だと思うのだが、とルルーシュはため息をつく。それでも、万が一の時には《ナイト・オブ・シックス》の地位は十分にこちらの役に立ってくれるだろう。ナナリーのフォローは彼女が一番なれているし、と思い直すことにしたのだ。 「アーニャなら何も心配いらないね」 「そうね。彼女も私たちも対等に扱ってくれるし」 と言うよりラウンズは全員そうなのだが、と二人はうなずく。 「ジノは悔しがるだろうが、あいつはあれでも侯爵家の一員だからな。妥協してもらおう」 人の悪い笑みを浮かべつつルルーシュは言葉を口にする。 「カレンが一緒だから、絶対にさわぐはずだ」 その後、シャルル達がどう出るか。それは別問題だ。そう彼は続けた。 「……追いかけてくるかもしれないね」 ジノが、とスザクが笑いながら言う。 「そうならないことを祈るわ」 ものすごく厄介なことになりかねないから、とカレンがため息をつく。 「最悪、うちの兄と大げんかね」 「ナオトさんか……ジノとはレベルが違うけど……でも、状況によってはいい勝負になるかな?」 ジノも人外に足を踏み入れかけている人間だから、一般人には辛いのだろう。だが、カレンの兄ならば、同じように人外なのかもしれない。子ども時代にあまり接触がなかったからはっきりと言い切れないところが辛いが。ルルーシュがそんなことを考えていた時だ。 「ナオトさんは常識人だから。もちろん、二人のお母さんも」 苦笑とともにスザクがこう言ってくる。 「つまり、カレンが突然変異なんだな」 それとも父親の血筋のせいか? とルルーシュは首をかしげた。 「多分、あのバカの血筋も一般人揃いだと思うわよ。強欲だけど」 カレンが即座にそう言ってくる。 「強欲なのは仕方はないな。そう言う人間でなければ、この国では上に上れない」 商人であればなおさらだ、とルルーシュは苦笑を浮かべた。 「だからといって、子どもを売るようなまねをするのは間違っているだろうがな」 そう言う人間は母さんが徹底的につぶすが、と言うのは絞まらないかもしれないが、とそのまま苦笑を浮かべた。 「マリアンヌさんだからね」 「アンタが偉くなったら、その時は自力でやればいいでしょ」 理解されていると言うべきか、それとも『マリアンヌだから』ですべてを納得してしまえるくらい教育されてしまったと言うべきか。どちらが正しいのだろうか。 「……まぁ、その時はお前達にも働いてもらうがな」 微笑みとともにそう告げる。 「ものすごくこき使われそう」 スザクのこの言葉にカレンも首を縦に振って見せた。 「当たり前だろう。お前達が一番に動かなくてどうする。俺の右腕と左腕候補なんだからな」 マリアンヌですらそれは認めている。そう告げれば、二人は嬉しそうに笑う。 「と言うところで、もとの話に戻るが……あちらでやりたいことがあるなら出来るだけ早く予定を出してくれ。スケジュールに入れておく」 護衛の件もあるから、と付け加えれば二人は「わかった」とうなずいて見せた。
年末年始の厄介な行事を終え、その足でブリタニアを抜け出した。もちろん、ナナリーも一緒だ。 「母さんにはお酒でいいからね」 そう言って送り出してくれたマリアンヌにルルーシュ達はしっかりとうなずいてみせる。 「それにしても……やっぱりカウントダウンの夜会は皆さん派手なのね」 初めてさんかしたからか。カレンがどこか陶然とした表情でそうつぶやいている。 「今年はおとなしい方だぞ、あれでも」 苦笑とともにルルーシュは言い返す。 「嘘!」 「本当ですわ、カレンさん。と言っても、私が知っているのは去年だけですが」 「……去年は特に派手だったとノネットが言っていた」 カレンの言葉をナナリーとアーニャが否定した。 「去年は特に派手だったな。何かの記念だったとかで仮装大会だった」 ここぞとばかりに、誰もが豪華な衣装の仮装をしていたな。ルルーシュはそう告げる。 「我が家の場合、母さんがティターニアでナナリーがハーミアだったな」 ナナリーはともかく、マリアンヌはもう一つの女王と悩んだのだ。衣装のことを考えて、ティターニアになったのだと言うことも思い出す。 「真夏の夜の夢、ね」 さすがに有名な戯曲だからか。カレンはあっさりと題名を当てる。 「ルルーシュとアーニャは何をやったの?」 さらに彼女はそう問いかけてきた。 「アーニャはパックだ」 身軽な彼女にはぴったりだったな、とルルーシュは笑う。ナナリーと二人でいた姿は兄姉達も目を細めていた。シャルルもこれには文句を言わなかった安心してみていたからだろう。逆にマリアンヌの仮装には微妙な表情を浮かべていたが。 「……それで、ルルーシュは?」 どうしてそこでこんな風にしつこく聞いてくるのかがわからない。 「俺の仮装なんてどうでもいいだろう?」 「だって、気になるもの」 ルルーシュだけ別の戯曲のキャラをやったわけではないだろう。だからといって、主役クラスの人間では問題があるのではないか。カレンはそう続ける。 「……シーシアスだ」 「無難ね。どうせならヒポリタでもやればよかったのに」 どうやらカレンはルルーシュが女装しているkと尾を期待していたらしい。しかし、だ。ヒポリタはアマゾネスの女王だ。そう考えればブリタニアでそれをやるべき人間は一人しかいない。 「母さんを差し置いてか?」 そのマリアンヌはティターニアをやっているではないかと言外に付け加えた。 「コゥ姉上がヴィ家の方ならともかくな」 カレンが去年参加できていれば無条件で押しつけたのだろうが。そう言って笑う。 「……それは幸いだったわね」 マリアンヌに取り入りたい人間が一番とりつきやすいと判断したのか。カレンは多くの人間に取り囲まれることになったのだ。そんな彼女を救い出すためにジノが獅子奮迅の活躍をしたのだが、それは今は関係ないことだろう。 「こうなると、先に日本に帰ったスザクが恨めしいわね」 一人だけ逃げ出して、とつぶやいている。 「その分、神楽耶様にこき使われているような気がするが」 主に買い物方面で、とルルーシュ半減をした。 「……それはうらやましいです」 ナナリーが小さな声でそうつぶやく。 「声をかけてくだされば、私が付き合います」 それならばシャルルも許可を出すのではないか。アーニャが即座にそう告げた。 「アーニャと一緒に行くのも楽しそうだけど……男の人に荷物を持ってもらうのってすてきじゃないですか?」 テレビで見たのだが、とナナリーが頬に手を当てながら言う。 「それならば俺が付き合おうか?」 ふっと思いついてルルーシュはそう問いかけた。 「お兄さまはダメです」 しかし、即座にナナリーにだめ出しをされる。 「ルル様に荷物持ちなんてさせられない」 アーニャまでもがこう言ってうなずいて見せた。 「俺だって男だぞ?」 そんな彼女たちにこう言ってみる。 「お兄さまはお母様と一緒で、貢がれる方がお似合いです」 「似合わなくてもいいな、それは」 マリアンヌは好きだ。しかし、その下僕達はとルルーシュは少しだけ遠い目をしてしまう。 「ルル様はスザクに荷物持ちをさせるのがいいと思う」 「そうね。あの男の馬鹿力もそれなら役に立つわよね」 女性陣のスザクに対する認識はどうなっているのか。ふっとそんな疑問がわき上がってくる。 「スザクとなら良く一緒に買い物に行くぞ」 主に食材を、と心の中だけで付け加えた。 「カレンが良く逃げるからな」 代わりにそう言って笑う。 「何のことかしら」 カレンが視線をさまよわせ始める。 「次に逃げたらおやつなしだな」 働かざる者食うべからず、と続ければ、カレンの表情が面白いように変化した。 「私も?」 「お兄さま、私もですか?」 アーニャとナナリーが慌てて問いかけてくる。 「お前達は買い物係じゃないだろう?」 それにルルーシュはこう言い返す。その瞬間、面白いように二人はほっとした表情を作った。 「差別だわ!」 「区別だろう。第一、二人とも買い物に連れ出すのは時間がかかる。お前らなら学校帰りによれるだろうが」 毎回、生徒会の仕事中におやつをおねだりしてくるのは誰だ。そう言ってカレンをにらみつける。 「あたしだけじゃないし……」 「だが、だいたいはお前がその中に入っているよな?」 責任をとれ、と続けた。 「えこひいき」 「……今からでも寮に移るか?」 「それもいや!」 ご飯がおいしくない、とカレンは叫ぶように口にする。 「なら、最低限のことはするんだな」 「……ルルーシュに口で勝とうだなんて、あたしには無理なのよ」 肩を落としてカレンがつぶやく。それに周囲から笑いが漏れた。 こんな風にじゃれ合いながら、彼等は日本への機内を楽しんでいた。ただ、ルルーシュにとってこの場にスザクがいないことだけが不満だったが。
久々の実家はどこか居心地が悪い。 それがどうしてなのか。スザクは心の中でそうつぶやく。 「まぁ、ここには誰も住んでいないからな」 もちろん、神楽耶や桐原がそれなりに手入れはしてくれている。ゲンブにしてもまるっきり帰ってこないと言うことはないのだろう。 それでも、ここにぬくもりが戻ることはない。 「……ルルーシュに会いたいなぁ」 彼が側にいてくれれば、どこであろうとこんな気持ちにはならないだろうに。むしろ、二人きりで幸せになれるだろう。 「仕方がないんだけどね」 ルルーシュはブリタニアの皇子だし、自分は自分でやらなければいけないことがある。義務を放棄するのはお互いの矜持が許さない。だから、離れるのも仕方がないことだ。 理屈ではわかっていても感情が納得してくれない。 「でもさ」 そうつぶやいたときだ。外からまた騒ぎ声が聞こえる。それがどうしてなのか。確認しなくてもわかった。 「あいつらもしつこいなぁ」 また押しかけてきて勝手なことを口走っているのか。 いくらあれこれ騒いでも彼等の子に神事に参加する資格はない。 そう考えれば、あと一年、彼女たちには結婚を待ってもらべきだったか。一年経てば、あの子達も七つを数え、神事に参加する資格が得られるのにとため息をつく。もっとも、当人達からすれば迷惑なのだろう。 「だから、ルルーシュとナナリーなんだけどね」 あの二人であれば十二分に資格を持っている。今年限りならば代理をしてもらっても文句は言われないだろう。 しかし、それを発表するのは本当にぎりぎりの時だ。あるいは、神事が終わってからの方がいいかもしれない。 「ともかく、追い返すか」 そうつぶやくと、スザクは声がする方へと足を向けた。
日本は一面の雪景色だった。 それでもどこか暖かく感じられるのは、ここがペンドラゴンよりも緯度が低いからだろうか。それとも空気の質が違うのか。そんなことを考えつつも、ルルーシュはマフラーを巻き直す。 「滑るからな。足下には気をつけろよ」 ナナリーに向かってそう声をかける。 「大丈夫です」 彼女は胸を張って言葉を返してきた。しかし、華奢なヒールのブーツで一歩を踏み出したとたん、つるりと前へ進んでしまった。バランスを崩しかけた身体をアーニャとカレンが慌てて左右から支える。 「……ナナリー、だから言っただろう?」 ルルーシュは思わずため息をつく。それが白い霧のように周囲へと広がっていく。 「運動神経は俺よりも上でも、周囲を把握することが出来なければ万が一の時に困るぞ」 そのまま静かにそう告げる。 「母さんのようになりたいのであれば、そういうところから気をつけないとな」 「……はい、お兄さま」 さすがに注意されたすぐ後での失態はごまかせないと判断したのだろう。ナナリーは素直にうなずいて見せた。 「一度目の失敗ならばまだいい。それに、今のは取り返しのつく失敗だったしな」 それにしても、こういうところは普通除雪しないか。ルルーシュはそうつぶやく。それとも出来なかった理由があるのだろうか。 「昼間溶けてまた凍ったところに雪が降ったのよね。一応、上だけは除雪してあるから、余計に滑りやすくなったんじゃないかな」 その疑問に答えるかのようにカレンが説明をしてくれた。 「圧雪だしね」 注意しないとまずいわ、と彼女は続ける。 「そうか」 厄介だな、と思う。 「この雪で事故が多発していてもおかしくないわよ」 暗に、転びそうになったのはナナリーだけではないと告げたのはフォローのためだろうか。カレンの言葉にナナリーも少しだけ微笑んでみせる。 「……スザク発見」 そんな中、一人マイペースを保っていたアーニャがある方向を指さした。視線を向ければ、確かに見慣れた姿がある。同じように相手もこちらを見つけたのだろう。彼は大きく手を振って見せた。それだけではなくこちらに向かって駆け寄ってくる。 「転ぶなよ!」 ルルーシュの口からとっさにこんなセリフが飛び出した。もちろん、彼がそんな状況に陥るはずがないとわかっていたが。 「大丈夫だよ。なれているから」 ルルーシュのすぐ側で止るとスザクは満面の笑みを浮かべつつそう言った。 「ただ、こういう天気だから夜に移動するのはやめておいた方がいいだろうって、桐原のじいさんが言ってた」 「高速もやばいの?」 スザクの言葉に最初に反応を返したのはカレンだ。 「今のところ、大きな事故は起きてないけど、小さいのはここに来るまでもちょこちょこ見たよ」 警察や消防は大忙しだ。言葉とともにスザクは肩をすくめる。 「と言うわけで、そこのホテルに部屋をキープしてあるから」 一晩そこで休んで明日移動しよう。彼はそう続けた。 「神社の方はいいのか?」 「じいさんの許可が出ているからね」 間髪入れずにスザクは言葉を口にする。 「と言うより、僕が耐えられない。少し避難しないと、爆発する」 あの妙な空気は、と彼は続けた。 「また『さっさと戻ってきて神楽耶様と結婚しろ』とでも言われたの?」 カレンがそんな彼にこう問いかける。 「それはなくなった」 神楽耶が拒否したから、とスザクは言い返してきた。 「ただ、言い出すタイミングを考えてほしかったかな」 ため息交じりに彼はこうはき出す。 「……枢木に食い込みたがったものから嫁を差し出されそうになったか?」 それともゲンブあたりか? とルルーシュは問いかける。 「そっちに関しても桐原のじいさんが全部シャットアウトしてくれているんだけどね」 それでも抜け駆けをしようとするものがいないわけではない。そのくらいのことはルルーシュだけではなく他のものにも想像がつく。 「ちょっと面倒な話になるから……移動してからでいいかな?」 さすがに寒い、と言われてここがどこかを思い出す。もっとも、とルルーシュは口を開く。 「誰かに聞かれたくないことは戸外で話をする方がいいんだがな」 盗聴される可能性が減るから、と付け加えた。 「そうなの?」 「戸外だと誰かが近づいてくればすぐにわかるだろう? スザクとカレン、それにアーニャの三人の目をかいくぐれる人間がどれだけ存在している?」 ブリタニアでもそうはいないぞ、とルルーシュは笑う。 「お母様とラウンズの方ぐらいですわよね」 ナナリーがそう言って微笑む。 「そう言う事だ」 逆に言えば、ブリタニア最強レベルでなければ不可能だろう、とルルーシュは判断していた。 「でも、大丈夫じゃないかな。一応皇グループ直営だから、そのホテル」 何かあれば桐原に切り捨てられる。それは困る人間が多いだろう。 「それに、このままだと体調を崩すよ」 スザクのこの言葉がルルーシュの背中を押した。 「……確かにナナリー達に風邪を引かせるわけにはいかないな」 あれこれと楽しみにしていることがあるのに、とつぶやく。 「君が引いてもダメだからね」 ナナリー達が安心して遊べないから、とスザクは言う。 「そうですよ、お兄さま」 「ルル様、体力ないから心配」 「神楽耶様も楽しみにしているんだから」 他の三人もこう言いながらルルーシュの背中を押す。 「わかった、わかった。スザク、案内を頼む」 「了解」 その言葉とともに五人は歩き出す。途中で足を滑らせたカレンに巻き込まれるように全員が転んだのも後から振り返ればいい思い出になるだろう。そう考えなければやってられない、と思うルルーシュだった。
「神楽耶様にストーカー?」 スザクの話を整理すればそう言う事になるのだろうか。 「ちょっと違うと思うけどね」 スザクはそう言い返してくる。 「この前までルルーシュを追いかけていたやつよりもたちが悪いかもしれないし」 相手が必要としているのは《皇の血》だから。彼はそう続けた。 「既成事実を作って神楽耶に子どもを産ませたら、その子を洗脳しようって考えてるアホ?」 その前に処理されるだろうに、とため息をつく。 「……そう言う問題じゃないでしょう!」 女性だからか。カレンがそのセリフに怒りを隠せないようだ。 「でも、桐原のじいさんならやるよ、間違いなく」 「そうだな。そんな人間の遺伝子など必要ないだろう」 万が一、それを実行に移したとしても適切な処理をすれば子どもが出来ることはないらしい。ギネヴィアからそう聞いた記憶がある、とルルーシュはカレンに向かって言う。 「そうならないのが一番だがな」 普段ならば可能だと言い切れる。しかし、今の時期は難しいのではないか。 「客をすべてシャットアウトできればいいんだが……」 「あれでも《皇》の当主だからね。不可能だよ」 いくら側に桐原がいても、とスザクはため息をつく。 「そうなれば、後は信頼できる護衛をつけるぐらいか」 「あいつはあれでも女だから、色々と面倒なんだけどね」 男ならばいくらでもいるのに、それでは問題だとくちばしを挟んでくる連中がいる。かといって、女性を側に置けば実力がどうのこうのと騒ぐ。いったいどうしろというのか、とスザクは続けた。 「それは面倒だな、確かに」 ブリタニアでは考えられないことだ。皇女の中で同性の騎士を持っているのはマリーベルぐらいなものだし、とルルーシュは思う。 「男性でも別にかまわないのではないですか?」 寝室をともにするわけではないのだから、とナナリーも口にする。 「そう思わないバカがいるんだよ」 あるいは、何か下心があるのか。そう続ける。 「自分の手のものを送り込んで、神楽耶様の寝所に忍び込もうというバカか」 「そう言う事」 ルルーシュの言葉にスザクはうなずく。 「いっそ、マリアンヌさんの親衛隊から誰か借りてきたい気持ちだよ」 だが、そうすればそうしたで文句を言う人間は出てくるはずだ。 「神楽耶達が連中のセリフを無視してると僕のところに来るし……本気でうざい」 スザクがそう言う問うことは本気で彼は参っているのだろう。 「当分はカレンでもつけておくか」 藤堂の弟子で、なおかつマリアンヌの薫陶を受けている人間を馬鹿にすることが出来る人間がどれだけいるだろう。下手なことを言えばヴィ家に対する侮辱ととられかねないのだ。 「それでしたら、襟にうちの紋章でもつけていただけばいいですね」 ナナリーがそう言って微笑んだ。 「それと……許されるなら、私とアーニャも神楽耶様の側にいます」 「……あぁ、頼む」 カレン一人であれば心配だが、ナナリーとアーニャのフォローがあるならば大丈夫だろう。それに、後でどのような人物が神楽耶に文句を言っているのかわかれば、その背後を調べることも難しくはないはずだ。それがわかれば別方面から圧力をかけることも不可能ではないだろう。 「もっとも、神楽耶様の意思が最優先だぞ」 本人がいやがるならやめておけ、と言外に告げた。 「わかっています」 ナナリーがそう言ってうなずく。 「神楽耶様のためだものね」 カレンはカレンで、妙に力が入っている。 「ナナさまのお役に立てるなら、頑張る」 アーニャが通常運転でそれが妙に安心できるなと宇生姜浮かんでしまった。 「まぁ、それも明日だね」 これ以上はここで話しあっていても意味がない。せめて神楽耶に同席してもらわなければいけないのではないか。 「……そうだ。ルルーシュは覚悟しておいてね」 そのセリフが引き金になったのか。不意にスザクがこう言ってくる。 「何をだ?」 それに目をすがめつつも聞き返した。どこかで警鐘が鳴っているような気がするのは錯覚ではないだろう。 「神楽耶のストレスがたまっているから……あきらめて付き合ってくれると周囲が助かる」 本当に申し訳なさそうにスザクは言葉を口にする。それだけで神楽耶が何を望んでいるのか、想像がついてしまった。 「……女装か……」 「うん。着物だね」 この前からものすごい勢いであれこれ選んでいたよ、と彼は教えてくれる。しかし、その情報はいらなかったと言い返したい。 「十日夜の時に着てくれると嬉しいかな」 それを、とスザクは笑った。 「……仕方がないな」 がまんするしかないか。ルルーシュはそう言ってため息をつく。 「ごめん」 「神楽耶様だからな」 最初にあったときの服装が服装だったから、とそう言うしかない。 「そろそろ女装が似合わなくなる年だと思うんだが」 「それはない!」 「お兄さまはお母様にそっくりですもの」 「ルル様はいくつになっても似合うと思う」 ナナリー達三人に即座にそう言われてどう反応を返せばいいのか。ルルーシュは微妙な表情で視線をさまよわせるのが精一杯だった。
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