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同じ父の遺伝子を持つ兄弟はたくさんいる。 しかし、母を同じくする兄弟をクロヴィスは持っていなかった。 それでも構わないと思っていたのは、間違いなく彼等の存在があったからだろう。 ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアとナナリー・ヴィ・ブリタニア。 騎士侯であるマリアンヌが皇帝シャルル・ジ・ブリタニアに見初められ、后妃に取り上げられて産んだ子供たちだ。 もっとも、最初からそうだったわけではない。兄弟なんてお互いを蹴落とすことしか考えていない存在だ、と思っていた。それでも彼らに興味をもっていたのは、マリアンヌの子供たちだからだ。 閃光のマリアンヌ。 誰よりも強く美しい女性。間違いなく、クロヴィスにとって彼女は初恋の相手だった。もちろん、それがかなうはずもない、ということもわかってはいた。それでも、少しでも近くに行きたかった。そのため――といっては語弊があるだろうか。自分よりも年下の子供に興味があったことも否定しない――にルルーシュに声をかけたのだ。 あのころ、彼はまだ三歳だったろうか。 自分の胸の高さほどしかない体躯なのに、その視線はしっかりとクロヴィスのそれを受け止めていた。 「マリアンヌがちょうし、ルルーシュです。クロヴィスあにうえはこのりきゅうにどのようなごようけんでしょうか」 まだまだ幼さが際立つ声音で、彼はこう問いかけて来る。その鮮烈さに心を奪われてしまったのだろうか。 「ははうえは、いま、てがはなせません」 ナナリーとともに医師の検査を受けているから、と彼は付け加えた。 そういえば、彼の妹はまだ乳飲み子だったはず。その年頃の赤子は定期的に医師の検診を受けなければいけないものなのか、とクロヴィスは初めて知った。 「君の顔を見に来たのだよ、ルルーシュ」 そのせいだろうか。無意識にこんなセリフが唇からこぼれ落ちてしまった。 「ぼくのかお、ですか?」 今までそんなことはないのだろう。信じられないというように彼は目を丸くしている。 「そうだよ」 だから付き合ってくれるよね、と問いかければルルーシュは困ったように周囲を見回した。しっかりしているようでも、やはりまだこの子は幼いのだ。だから、あるいは自分を純粋に慕ってくれる存在になるかもしれない。 そうあって欲しい……とこの時は考えていた。 そうすることで、きっと自分はマリアンヌともつながっていられるだろうから、とも。 「クロヴィスあにうえは……ぼくやははうえやナナリーをいらないっていわれません?」 おずおずと――だが、期待をこめながら――ルルーシュが問いかけてくる。もう、この子は自分たちが他の多くの后妃や貴族達から疎まれていると察しているのだろうか。だとするならば、本当にこの子は賢い。しかし、それがこの子の不幸につながるような気がするのは錯覚だろうか。 「言わないよ。だから、会いに来たのだろう?」 だから安心してくれないかな? といいながらそうっと手を伸ばす。そして、まだまろい彼の頬へと触れた。 その瞬間指先から伝わってきた温もりに、クロヴィスは驚く。 人の体が温かいものだ……と言うものを忘れかけていたのだ。同時に、これほどまでに子供の体は柔らかいのか、とも。 「と言うわけで、中に案内してくれるかい?」 ルルーシュの頬をそうっと撫でながらクロヴィスは問いかける。 「はい、あにうえ」 ルルーシュが目を細めると心からの笑みを浮かべた。 それを見た瞬間、クロヴィスの中で今までとは微妙に異なった感情が芽生えた。それはきっと、目の前の《異母弟》に対する親愛の情がわき上がってきたのではないか。少なくとも、この時はそう思っていた。 もっとも、その考えは数年と経たないうちに否定されるのだが…… 以下、発行予定の本へと続く。 |