「……やっぱり、違和感あるね」
 スザクはそう言って自分の隣にいる相手を見つめた。
 肩につくかつかないぐらいの金髪と青い瞳。それは、ブリタニア人にはよくある色の組み合わせだ。しかし、彼本来のものではない。
「仕方がないな。当分、俺の正体に気づかれるわけにはいかない」
 ため息とともにルルーシュは言い返して来る。
「お前一人でも目立つからな」
 さらに彼はそう付け加えた。
「君ほどじゃないよ」
 即座にスザクはそう言い返す。
「何を言っているんだ、ラウンズ様が」
 からかうようにルルーシュはそう言った。口元には笑みも浮かべられている。しかし、その瞳には冷たい光がたたえられていた。それは彼本来の瞳の色を隠しているコンタクトレンズのせいではないはずだ。
「ひょっとして、まだ怒っている?」
 自分がラウンズになることを同意したことに、とスザクはおそるおそる問いかける。そのせいで彼との約束を反故にしてしまったから、怒られる理由は十分にあるのだ。
「別に……仕方がないことだからな」
 しかし、ルルーシュはスザクの言葉を否定する。
「ブリタニアにいて、あのロールケーキの言葉を無視できる人間は、一人しかいない」
 それが誰か、確認しなくてもわかってしまう。
「……母さんがいないところでお前の人事を決めたのは、間違いなく故意にだな」
 マリアンヌがいれば絶対に邪魔してくれたに決まっている。せめて、他の誰かが邪魔をしてくれれば、と彼は続けた。
「それでも、今回のことが成功したら『ルルーシュの専属騎士になっていい』って書類をもらったから」
 スザクはそう言って笑う。
「シュナイゼル殿下にも、しっかりと署名していただいたし……なかったことにはできないよね、これなら」
 いくらシャルルでも、と続けた瞬間、ルルーシュの目つきが鋭くなる。
「そうだな。それで約束を反故にして見ろ。本気で反逆してやる」
 とりあえずは経済を混乱させるところから始めるか? と彼は呟きだした。
「ルルーシュ。それはそのときに考えようね」
 頼むから、と心の中でスザクは付け加える。彼ならば、本気で完璧な計画を立てるだろう。それだけならばまだしも、起きてもいないことであれこれと妄想したあげく、本気で実行に移しかねないのだ。さすがに、それは困る。いくら何でも、思い込みだけで突っ走られてはフォローのしようがない。
「そうか?」
 それなのに、彼は真顔でこう聞き返してくる。
「そうだよ。第一、マリアンヌさんやシュナイゼル殿下を無視して計画を立てても意味がないじゃない」
 ため息混じりにスザクはそう付け加えた。
「何よりも、今は先にしないといけないことがあるでしょう?」
 そのためにヨーロッパまで足を運んだのではないか。こう言えば、ルルーシュはようやく現実に戻ってきたらしい。
「そうだったな」
 残念、と言うつぶやきをスザクは聞かなかったことにする。
「全く……兄上の頼みでなければ放っておいたものを」
 いくら異母兄妹関係とは言え、親しくしている相手ではない。むしろ敵対関係にあるというのに、とルルーシュやぼやく。
「まぁ、仕方がないんじゃないかな。下手に動かれるとブリタニアの不利益につながるんだし」
 苦笑とともにスザクは指摘する。
「ブリタニア国内が混乱すると、日本も困るし」
 いろいろとしがらみがあるよね、と付け加えた。
「それがわかっていない馬鹿が多いから問題なんだ」
 全く、とルルーシュは呟く。そのまま、もたれかかるようにスザクの肩に額を押しつけてくる。
「全く……厄介事を押しつけられる身にもなれ」
 自分達のことばかり考えて、とその体勢のままルルーシュはぼやく。そんな彼の背中を、スザクはそっと抱いた。
「わかっているよ。だから、国民にはルルーシュ達の方が人気があるでしょ?」
 後は、さっさとブリタニアの支配権を手にしてしまえばいい。スザクは苦笑混じりにそう付け加える。
「僕はずっとルルーシュのそばにいるから」
 こうささやけば、ルルーシュはうつむいたまま、小さくうなずいて見せた。
「キスしてもいい?」
 そんな彼の耳元でスザクはこう問いかける。その瞬間、彼の耳が真っ赤に染まった。
「そんなことを聞くな!」
 顔も上げずに彼は怒鳴る。
「じゃ、好きにするね」
 言葉とともにスザクは彼の顔を上げさせた。そのまま、そっと唇を重ねる。
 とりあえず、今日のところはルルーシュも素直にキスを受け入れてくれた。


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