ルルーシュは今日もまた、総督府を好き勝手に歩いていた。
 もちろん、追い払われる場所もある。だが、基本的にブリタニア人は猫好きの人間が多いのか、邪険にされることはない。その事実に、ルルーシュは満足していた。
 何よりも、ここにはスザクがいる。
 気が向いたときにはいつでも会いに行けるのだ。
 でも、今は昼寝をしたいな……とそう思う。
 どこがいいだろうか。
 一番気持ちいいと思っているスザクの膝は、今はダメだ。彼の仕事を邪魔するようなことはできないし……とルルーシュは思う。
 そうなれば、次に心地よいのはあそこだろうか。
 こう考えると、進行方向を変える。そのまま、彼は真っ直ぐに目的地を目指して歩いていった。

 やがて彼がたどり着いたのは、この建物の中枢とも言える場所だった。
 ちょうど誰かが出てくるところなのだろう。
 中からドアが開かれた。それを確認して、ルルーシュは体を滑り込ませる。
「こら! 貴様」
 ここをどこだと……という言葉とともに手が近づいてきた。その手をどうしてやろうか……とルルーシュが考えたときだ。
「かまわん」
 ここの主とも言える女性の声が届く。それに、伸びてきた手が行き場を失ったかのように止まった。
「おいで、ルルーシュ」
 その手をどうしてやろうか。そう思ったルルーシュの耳にこんな声が届く。
 彼女の言葉に、ルルーシュは目の前の手に対する興味を失った。その代わりに真っ直ぐに彼女の方へと歩み寄っていく。そして、引き締まったその足に頭をすりつけた。
「いいこだ。昼寝に来たのか?」
 眼を細めながら彼女はこう問いかけてくる。それに言葉を返すように、ルルーシュは一声鳴いて見せた。
「そうか。ゆっくりとしていくがいい」
 お前は仕事の邪魔をしないからな……と彼女はルルーシュののどを撫でながら微笑む。
「なぁん」
 言葉を返すと、彼女は満足そうに頷いた。それを確認してから、ルルーシュはメイド達が用意してくれた彼専用のベッドへと移動をしていく。
「あの……」
「何だ? まだいたのか」
 ゴットバルト卿と問いかけられて、彼は慌てて言葉を飲み込む。
「いえ、何でもありません」
 その代わりにこう言うと、肩を落としたまますごすごとその場を後にした。

 もちろん、ルルーシュにしてもただ惰眠をむさぼっているわけではない。
「何度言わせる。そのようなもの、必要はない!」
 そんなことをしている暇があれば、他のことに時間を使う! とコーネリアが低い声でこう告げる。その声を耳にして、ルルーシュは目を開く。そのまま、いつでも動けるようにさりげなく体勢を変える。
「そうはおっしゃいますが、コーネリア総督。クロヴィス前総督は……」
「クロヴィスはクロヴィス、私は私だ!」
 いい加減にしろ! 彼女は相手を怒鳴りつけた。
「私のやり方が気に入らぬなら、本国へ帰るがいい!」
「そういうわけにはいきません!」
 何があっても許可をもらわないわけにはいかないのだ! と相手も叫び返す。
「しつこい!」
 これ以上、この男をコーネリアの前に置いていてはあとが面倒だ。せっかくの居心地がいい場所なのに、こんなことで使えなくなるのは困る。そう判断をすると同時に、ルルーシュは行動を開始した。
 ベッドから飛び出すと同時に、男の顔に遠慮なくつめを立てたのだ。
「うわっ!」
 さすがに、これには男も悲鳴を上げるしかないらしい。そして、それを耳にした者達がわらわらと執務室に飛び込んでくる。
「なぁ」
 それを尻目にルルーシュはコーネリアの元へと歩み寄った。
「助かったぞ、ルルーシュ」
 これでしばらく、あれも大人しくしているだろう。そういってコーネリアは笑った。

「そういうことがあったの」
 ルルーシュの体を抱きしめながら、スザクが頷いてみせる。一日に一度、彼はルルーシュを人間の姿にした。そして、言葉の練習だと言って、その日にあったことを話させるのだ。
「あぁ……ほめられたが、よかったのか?」
「総督閣下から直接ほめられたからね。ルルがしたことはいいことだよ」
 言葉とともに彼はルルーシュの頭を撫でてくれる。それに、ルルーシュは眼を細めながら彼の胸に頬をすり寄せた。
「しかし、キスで人間になったりネコの姿に戻ったり……誰がそんな力をルルに与えてくれたのかな」
 話をできるのは嬉しいけど……ちょっと辛いかな、とスザクが苦笑を浮かべる。
「スザク?」
「君は気にしなくていいよ、ルル」
 僕の問題だから、とスザクは苦笑を深めた。
 最近の彼はよく、そんな表情を作る。それはどうしてなのか、とルルーシュは考えてしまう。だが、どうしても答えを見つけられない。
 でも、彼の側にいられるならいいのか。そう考えてしまうルルーシュだった。




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07.02.06移動