スザクの腕の中は、いつでも暖かい。
 その腕の中で眠るのは大好きだ……とルルーシュはそう思う。それは、自分の形を変えた今でも変わらない。
「……で、も」
 一応、自分の本性は猫だから、やっぱり夜の方が目がさえるんだよな……とルルーシュはスザクの胸に耳を押し当てながら思う。
 とっくん、とっくん、と彼の心臓の鼓動がそこからしっかりと聞き取れる。
 そのリズムが心地よい。
 そう思いながら、ルルーシュは目を閉じる。そのまま、眠りの中に滑り込もうとした。
 したのだが……
「……痛い……」
 何かがルルーシュの髪の毛を引っ張ったのだ。視線を上げれば、闇の中に見覚えがある緑と黄金が確認できる。
「C.C.?」
 何かあったのか、と思いながらルルーシュはそっと体を起こす。もちろん、スザクを起こさないように気を付けて、だ。
「私は、ピザが食いたい」
 そんな彼に向かって、C.C.はこう告げる。
「はぁ?」
「ピザだ、ピザ。本当であれば、デリバリーのがよいがこの時間では無理だろう?」
 だから、冷凍庫に入っているあれで我慢してやる……と彼女はこう口にした。
「……それはかまわないが」
 作れと言われれば、作ることはやぶさかではない。レンジの使い方はスザクが教えてくれたし、ピザを作る手順も同様。
 それでも、とルルーシュはあることを思いだして口を開く。
「夜中にものを食べると、太る……と言っていたな」
 だが、C.C.は神様だからそんなことは関係ないのだろうか。そう付け加えながら視線を向ければ、彼女の表情が強ばっている。
「それは、誰がいったんだ?」
 スザクか、とその表情のまま問いかけられて、ルルーシュは首を横に振ってみせた。
「ユフィだ」
 この言葉に、C.C.は少し考え込むような表情を作る。
「コーネリアの方は、いつでも気にしないで食べるそうだが」
 もっとも、彼女の場合夜遅くまで仕事をしているからかもしれないが……とルルーシュは付け加えた。スザクが帰ってこない晩に、気まぐれに散歩に行けば、彼女の執務室からよく明かりが漏れているのだ。だから、そのせいで腹が減るのかもしれない、とそう思う。
「……難しいところだな」
 いったいどうするべきか、とC.C.は本気で悩む。
「まぁ、いい」
 しかし、すぐに結論を見つけ出したようだ。にやりと笑うとルルーシュの鼻先に指を突き出してくる。反射的にその匂いを嗅いでしまうのは、猫としての本能のせいなのだろうか。
「ともかく、私は腹が減っている。太る太らないはそれを満たしてから考えればいいことだ」
 だから、取りあえず作れ! と彼女は命令をしてくる。
「……わかった……」
 言葉とともに、ルルーシュはベッドを抜け出した。毛皮に覆われていないせいか、素肌には夜の風は冷たく感じられる。今までそれを感じていなかったのは、きっとスザクのぬくもりがあったからだろうな……とルルーシュはそんなことも考えてしまった。
「……見ていて恥ずかしいな……」
 そんなルルーシュの様子を見ていたらしいC.C.がこう呟く。しかし、ルルーシュにはその意味がわからない。
「まぁ……服を着るようになっただけ、マシか」
 さらに彼女は笑いとともにこう口にする。
「スザクも喜んでいるようだし……いいことにしよう」
 この言葉に、ルルーシュはますます意味がわからないと言うように首をかしげてみせた。
「そのうち、そいつに聞け」
 それよりもさっさとピザの用意をしろ……と付け加える彼女に、ルルーシュは小さなため息をつく。そのまま、冷蔵庫の中から冷凍のピザを取り出す。
「それではなくて、トリプルチーズの方だ」
 そっちであれば、タマネギが入っていないからな……とC.C.は即座に言ってくる。
「……普段は、どれでも文句を言わないだろうに」
「今晩はな。お前とマオにもわけてやろうと思っただけだ」
 そうすれば、少しはマシだろう……と言うところを見れば、どうやら彼女も『太る』の一言は恐怖だったらしい。
「……マオ……」
 しかし、ルルーシュにしてみれば、目の前にあれがやってくるのは遠慮したいとそう思ってしまう。今は特に、スザクが幸せそうに眠っているのだから、とそうも考えるのだ。
「本当にお前はスザクが大好きだな」
 この言葉とともに彼女はさらに笑みを深める。
「いいことだ」
 これ以上、あれこれ話させてはいけない。でなければとんでもないことになるのではないか。そう思って、ルルーシュは取りあえず言われたピザをレンジの中につっこんだ。
 その彼の耳に、窓の外からマオの鳴き声が届く。その瞬間、思わず嫌そうに顔をしかめた理由はあえて言う必要はないだろう。
「本当、可愛いよ、お前は」
 C.C.の言葉が、むなしく聞こえた。

 それにしても、どうしてこれだけ騒いでいるのに、スザクは起きないんだ?
 そんなに疲れているんだろうか。
 と言うことは、原因はロイドだな。
 後で、ひっかいてやろう。
 こう心に誓うルルーシュだった。




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07.04.07移動