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ぎゅっとしてね

ピクニック―準備編―


 とりあえず、ミレイやコーネリアの突撃はない。
 ルルーシュもこの家になれてくれたのか、スザクとともに庭で遊ぶようになってきた。
「でも、どうせならもっと広いところに連れて行きたいよね」
 ルルーシュを、とスザクは呟く。
「日帰りで行けそうな所で、いい場所はないかな」
 そう言いながらペンドラゴン周辺の観光ガイドを開いた。
「図書館なんか良さそうだけど、でも、人が多いだろうし……」
 ルルーシュは可愛いから変な人間に目をつけられるかもしれない。
 では、どこがいいのだろうか。
「咲世子さん、どこかいい場所を知っていますか?」
 お茶を持ってきてくれた彼女にそう問いかけてみる。
「……公園はいかがでしょうか」
 少し考えた後で咲世子はそう言ってきた。
「公園ですか?」
「はい。ウサギやリスがいる公園があります。そこの動物たちは人になれているそうです」
「それは……ルルーシュが喜びそうですね」
 ここで動物を飼うことは難しい。面倒を見られる人間が咲世子しかいないからだ。それでは彼女の負担が大きくなる。
 何よりも、いつ、また、引っ越しをしなければいけないのかがわからない。それでは飼われてきた動物がかわいそうだ。
 だが、ルルーシュにはいろいろと経験させてあげたい。
「動物を見るだけならば、動物園の方がいいんだろうけど」
 日本ならば動物園の中にふれあえる場所がある。しかし、ブリタニアの動物園でもあるのかどうかがわからない以上、咲世子の提案に従った方がいいのか。
 ただ、とスザクはため息をつく。
「問題なのは、僕が動物に嫌われていることかな」
 自分がそばにいては動物が近づいてこないかもしれない。
「……その時はその時でございましょう」
 咲世子が慰めるような声音でそう言ってくる。
「ですね。咲世子さんにルルーシュのことをお願いすればいいだけのことです」
 自分が離れていれば大丈夫だろうから、と続けた。
「なら、そこにしましょうか……事前に、一度行ってみるべきだろうな」
 自分の目で確認しないとわからないこともあるし、と心の中だけで付け加えた。
「ならば、地図を用意させていただきます」
「お願いします」
 ルルーシュには『ランニングに行ってくる』と言っておけばいいだろう。
 問題は、とため息をつく。
「またミレイさんをまかないとな」
 どうやら、今までの部屋に俺たちが住んでいないと彼女は気づいたらしい。新しい住居を知りたがっているのだ。
 しかし、いくらミレイとはいえ、ここを教えるわけにはいかない。彼女のあの行動パターンを見ていれば、余計な人間にまで知られることになりかねないのだ。
「……大旦那様にお伝えしておきます」
 同じ判断に至ったのだろう。咲世子がこう言ってくる。
「お願いします」
 ルルーシュが可愛いのはわかりが、自重してくれないだろうか。それがなければ、今度のピクニックに誘ってもいいのだろうが、とスザクは思う。
「そろそろお昼寝から起きる頃ですね」
 一度思考をリセットするためにそう告げる。
「はい。お茶の用意をして来ます」
「わかりました。じゃぁ、僕は先にルルーシュのところに行っていますね」
 そう言うと、スザクは立ち上がった。

「ピクニック?」
 ルルーシュが目を輝かせながら聞き返してくる。
「今度の週末にね。行けたらいいねという話だけどね、まだ」
 問題が解決したら、だ。
「ミレイさんが騒ぎまくってくれているんだよ」
 自分達の居場所を教えろと、とため息をつく。もちろん、それは断っている。ルーベンも彼女を諫めているそうだ。
 それでもあきらめないミレイを感心すればいいのか、それともあきれればいいのか。
 どちらにしろ、ミレイの言動がルルーシュにとって-になりかねないのは事実だ。
「……そとであうのは?」
「その後につけられる可能性があるからね」
 本当に、無駄に行動力があるから。スザクはそう付け加えるとため息をつく。
「妙なところだけ、大旦那様に似られました」
 咲世子がそう口を挟んできた。
「ともかくこちらの計画は進めていてよいそうです。お嬢様のことは大旦那様が責任を持って対処してくださるそうです」
 さらに彼女はそう付け加える。
「最悪、ルーベンさんにも一緒に来てもらえればいいか」
 そして、別れるときにミレイを確保してもらえばいい。
 もちろん、彼女のことだ。
 他の誰か――おそらく、生徒会の誰かだろう――を使って跡をつけさせようとするだろう。しかし、そのくらいならいくらでもまけるはずだ。
 もっとも、本職を使われたらまずいかもしれない。
「そうですね。それと……いざとなれば私が対処いたします」
 さらりと咲世子がとんでもないセリフを口にしてくれた。
「……その時にはお願いします」
 確かにその方が安全だろうと素直に頭を下げる。
「後は……お弁当のおかずのリクエストかな、まずは」
 気分を変えようとスザクはそう言う。
「確かに、それは一番重要なことです」
 咲世子がまじめな表情で頷いて見せる。
「そうなの?」
 ルルーシュだけが状況を飲み込めていない。
「そうだよ。外で食べるんだから、うちの中で食べるのとはまた気分が違うしね」
 楽しいよ、とスザクは付け加えた。
「……おそとですか?」
「そう。地面にシートを敷いて、その上で食べることが多いかな」
 だから、手に持って食べられるものの方がいいだろう。そう続ける。
「サンドイッチ、とかですか?」
「そうだね。後はおにぎりとか唐揚げとかかな。たこさんウィンナーというのもあったね」
 あくまでも日本の定番だけど、と笑う。
「たこさんウィンナー?」
 これには興味を持ったらしい。ルルーシュは咲世子を見上げた。その瞳がなにやら期待に輝いているのはスザクの錯覚ではないだろう。
「ご希望であればお作りします。他にもチューリップとかネズミなんかもありますよ」
 咲世子がそう説明をする。そうすれば、ますますルルーシュの瞳が輝き出す。
「つくって!」
「お任せください」
 その言葉にルルーシュが笑う。それが可愛いと思える。
 やっぱり子供は笑顔でないと。そんなことをスザクは考えていた。




14.09.13 up
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