ぎゅっとしてね
もふもふ
遊園地ではルルーシュが遊べる乗り物が限られてしまう。だから、と言うことで、動物園へとやってくることになった。
しかも、だ。
なぜかロロとアーニャ、そしてヴィレッタも同行している。
「かなめせんせいはよかったの?」
スザクと手をつないだままルルーシュはそう問いかけた。
「かまわん。たまにはいい薬だ」
そうすれば、彼女はこう言い返してくる。
「……けんかでもしました?」
おそるおそると言った様子でスザクが問いかけた。
「と言うわけではないのだけど」
「昔の友人と出かけたとか?」
スザクが笑いながらヴィレッタを見つめる。
「そのまま飲み過ぎて二日酔いだ」
「それなら仕方がないですね。一日放っておくのが一番です」
彼はそう言ってうなずく。
「明日が平日でなければ『泊まっていきませんか』とお誘いするところですけどね」
ルルーシュはお泊まり会の経験がないから、と続けた。
「確かに、ちょっと残念だ」
苦笑と共にヴィレッタは言葉を口にする。
「まぁ、近いうちに幼稚園でお泊まり会があるから、そちらに参加してもらえばいいか」
色々と準備は必要だろうが、と意味ありげなセリフを彼女は続けた。それでもスザクが「なんとかしましょう」と言ってくれているから、参加できるはずだ。
「ロロとアーニャといっしょにおやすみできるね」
それは楽しそうだ、と思いながらルルーシュは口にする。
「でも、アーニャはねぞうがわるい」
ロロがつぶやくようにこう言う。
「ロロはねごとをいう」
それに対するアーニャの返答がこれである。
「二人とも仲がいいね」
クスクスと笑いながらスザクがそう言った。
「よくない!」
二人が口をそろえて反論してくる。
「十分に仲がいいよ」
笑いながらそういう彼にルルーシュもうなずいて見せた。
その後、二人があれこれと反論している。彼等がこんなに話をする姿を初めて見た、とルルーシュは別の意味でスザクを尊敬してしまった。
騒いでいたロロとアーニャも、動物園に着いたら言葉を失っていた。
それはそうかもしれない。
「……おおきいの」
サーバルキャットを目にして三人は固まっている。
「ねこさんなのに……」
ルルーシュがこうつぶやく。
「普通の猫よりも力が強いからね。近づいちゃだめだよ」
スザクがさりげなく注意をしてくる。
「のれないの?」
アーニャは予想以上に剛胆な性格らしい。
「無理だね。犬とかポニーなら乗せてもらえるかもしれないけど」
そういうコーナーがあるらしいよ、とスザクが言葉を返している。ただし、生き物だから体調によるそうだが、とも彼は付け加えた。
「それでもいい! のりたい」
「……ぼくも」
「ぼくものれる?」
アーニャやロロに負けじと思わずこう言ってしまう。
「様子を見てからね」
スザクがこう注意をしてくる。
「うん」
しっかりとうなずいてみせれば、彼はいつものように頭をなでてくれた。
「でも、途中の動物さんも見ないとね」
せっかくだから、と彼は笑った。
「もちろん」
ルルーシュは即座に言葉を返す。
「かっこいいのがみたい」
アーニャが続けてそう言った。
「もふもふ」
ロロは小さな動物の方がいいのか。こう言ってくる。そういえば、選んでくる絵本もそういう動物が出てくるものが多かったな、とルルーシュは思う。
「もふもふは犬やポニーと一緒のところにいるみたいよ。一緒に遊べるって書いてあるな」
タブレットで調べていたのか。ヴィレッタがこう教えてくれた
「そうだね。この先に虎がいるから、それを見て……それからもふもふコーナーかな」
「それが良さそうだね。後はお昼を食べてから見ていけばいいだろう」
ヴィレッタもスザクの提案を受け入れる。
「本当、あいつも君ぐらいに気遣いができればいいんだがな」
さらにこう付け加えたのは扇が何かしでかしたからだろう。
本当に何をしでかしたのだろうか。
「僕の場合は反面教師ですよ。父が全く家庭を顧みない人でしたから」
苦笑と共にスザクがこう言う。
「今のうちにしっかりとしつけておけば後が楽です」
「確かに。子どもができる前にきっちりとしつけておかなければいけないな」
どうしてそこで顔を見合わせるのか。ルルーシュにはよくわからなかった。
約束通り、三人は犬──グレート・ピレニーズとセント・バーナード──に乗せてもらって、ついでに写真も撮ってもらった。
自分の身長よりも大きい犬がいるとは思わなかったから、ほんの少しだけ腰が引けたことは内緒にしておきたい、とルルーシュは思う。
「そういえば、ランスロットはげんきかな?」
ブリタニアに残してきたペットロボットを思い出してそうつぶやく。
「ロイドさんが連れていったからね……どうなっているんだろう」
いらない機能をつけていそうだ、とスザクはつぶやく。
「今度、ジェレミアさんにメールして聞いてみるよ」
さらに彼はこう続けた。
「うん」
「連れてこられれば良かったんだけどね。こっちだと目立つから」
ごめんね、と彼は口にする。
「でも、デフォルメをしてもらえば似たようなのがいるから大丈夫かなぁ。それも書いてみよう。お礼はルルーシュの写真でいいかなぁ」
そんなこともつぶやいている。
「と言うことで、今度はあっちのちっちゃな動物のコーナーに行こうか。みんなで」
スザクの提案にロロとアーニャもうなずく。
「じゃ、それが終わってからお昼にしよう」
ヴィレッタも笑いながらそう言った。
その日、二人の持ってきたデジカメのメモリカードが限界まで埋まったのは自分たちのせいではないだろう。
15.11.07 up