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「お姉様」 こう言って、可愛い妹が自分の顔を見上げてくる。その様子に、コーネリアは至福を味わっていた。 「私、お願いがあります」 「何だ?」 自分にできることならば、どのようなことでも叶えてやろう。そう思いながら、次の言葉を待つ。 「ルルーシュと結婚したいんです! ですから、婚約させてください」 そうすれば、可愛らしい声でとんでもないことを口にしてくれた。 「……はぁ?」 いきなり何を言い出すのか、とそう思う。 確かに、ルルーシュは数多くいる弟の中でも一番見所がある。母親の身分さえもう少し高ければ、無条件で自分やシュナイゼルのライバルとなっただろう。少なくとも、クロヴィスよりも、だ。 だが、マリアンヌは誰よりも尊敬できる女性だとはいえ、彼女の身分はあくまでも騎士候。その出自は平民でしかない。その事実が、あの有能な弟の前に大きな壁を作っている。それでも、自分の補佐をさせるには十分だろう。 だが、それとこれとは話が別だ。 「ダメでしょうか」 ダメも何もないだろう。 「あれが、せめて貴族であれば無条件で賛同してやった。しかし、母親が違うとはいえ、あれはお前の兄だぞ?」 流石にそれは認められないのではないか。コーネリアはこういう。 「ですが、シュナイゼルお兄様が……」 「兄上が何だと?」 「ルルーシュを嫁にもらうとおっしゃっていらっしゃったと、クロヴィスお兄様が怒っておられました」 まさか、そう来るか。 何を考えているのかわからないあの兄の言動に、コーネリアは頭痛を感じてしまう。 「だが、ルルーシュの気持ちはどうなのだ?」 それに……とコーネリアは妹を諦めさせようとあれこれ言葉を口にし始める。 だが、あの子を自分の味方に付けるにはそれが一番いいこともわかっていた。何よりも、あの子供は懐に入れた相手にはとことん優しいことも知っている。 本当、血のつながりがなければよかったのに。 そう思うコーネリアだった。 「……父上……」 同じ頃、ルルーシュは父であるブリタニア皇帝に謁見を申し出ていた。 「何だ? 申してみよ」 「私を日本に行かせてください。少なくとも、そうすれば今しばらく、時間を稼げるのではないかと」 この言葉に、皇帝は微かに目を見開く。 「それがどのような意味を持っているのか、お前はわかっているのか?」 「もちろんです」 それがどれだけ危険なことなのかも、だ。 だが、それでもブリタニアにいるよりもいい。はっきり言って、母と妹以外の人間は兄弟であっても信じられない。だったら、周囲が敵ばかりの所に行った方が気分的には楽なのではないか。そうも考える。 「……父が『ダメだ』と言ったら、どうするのだ?」 「その時は……しかたがありません。家出をさせて頂きます!」 きっぱりといいきった言葉に、別の意味で皇帝は目を見開く。 「ルルーシュ」 「私は卑小な人間ですので、我が身が一番可愛いです。ナナリーのことも母上のことも愛してはおりますが」 流石に、兄弟達の劣情の対象にはなりたくない。そんな言葉を十にも満たない子供が言うとは思わなかった。周囲で聞いていた者達は、そう心の中で呟く。同時に、皇族達の彼に対する執着を改めて認識させられたような気がする、とも。 その最たる存在は、実は目の前の存在なのかもしれない。 「家出、だと?」 「はい。こうなれば、EUだろうと中華連合だろうと、どこへでも逃げます!」 きっぱりと言いきる彼の態度から、あくまでも本気だと伝わってくる。 「うぅむ……」 流石の皇帝も、目の前の難題に言葉を返せないようだった。 数日後、ルルーシュは日本に向かう飛行機の中で取りあえずご満悦だった。 一年間の留学、という名目ではあるが、少なくともその間はあの厄介な人々からは逃れられる。その間に、他の何かに興味を移していてくれればいいなとそう思うのだ。 しかし、その日本で、一番厄介な存在に目を付けられるとは思ってもいないルルーシュだった。 BACK 07.04.07移動up |