何か、登校前から既に疲れ切っているような気がするのは、自分の錯覚か。そんなことを考えながら、ルルーシュは外を流れていく光景を、車の中から眺めていた。
「明日からは、歩くんだからな」
 そんな彼の耳に、スザクのこんなセリフが届く。
 しかし、ルルーシュは即座に言葉を返すようなことはしない。そんなことにはなっていなかったはずだが……とは思う。しかし、迂闊なことは口にしない方がいいだろう。そう判断したのだ。
「スザク君。殿下は明日からも車を使って頂く予定になっているよ」
 そんなルルーシュの代わりにハンドルを握っていた人物――日本軍の中佐で藤堂という名前なのだ、と聞いている――が言葉を返してくれた。
「……何でですか、藤堂先生」
 憮然とした口調でスザクが聞き返している。
「殿下はブリタニアからお預かりした方だ。安全を優先するのは当然のことだろう?」
 スザクに関して言えば、ゲンブはともかく君はあくまでも一般人だから……とさらに彼は言葉を重ねる。
「それに、身を守れる程度には君を鍛えているつもりだからね」
 SPも近くに控えているのだから、スザクに関しては問題ないと考えている。そうも藤堂は付け加えた。
「……だったら、そいつらがルルーシュも守ればいいじゃないですか」
 でなければ、警備を増やせばいいだろう、とスザクは口にする。
「その準備は進めているが、まだ時間がかかる……と言うことだね」
 だから、ルルーシュは明日からも車だ……と藤堂は締めくくった。
「どうしても、というのであれば君が車で登下校をするのだね」
「……それじゃ、意味ないじゃないですか」  ルルーシュに見せたいものがたくさんあるのに、とスザクはすねたように頬をふくらませる。
「お前はそれでいいのかよ」
 そのまま、彼は視線をルルーシュに向けてきた。
「それじゃ、全然、文化交流にならないぞ」
 留学の目的はそれではなかったのか、とスザクは付け加える。
「だが、そのせいで周囲の人々を巻き込むわけにはいかないだろう。学校だって、本当は悩んだんだ」
 アッシュフォードが万全のセキュリティを構築し、なおかつ日本軍がこうして警備を強化してくれたからこそ登校することも可能になった。だが、どこからバカが出てくるかわからない。
「ブリタニアの皇族である以上、しかたがないことだがな」
 そして、日本国内にも、現状を快く思っていない者もいる。そして、そんな者達を煽っている他国のものもいるはずだ。
 そう考えれば、多少の不便な時にならない。
「一番大切なのは、一般人の安全を守ることだろうが」
 それが、最低限の義務だ……と兄弟達から教えられてきた。兄弟達の足の引っ張り合いは奨励しても民衆までは巻き込むな、というのは父の言葉だっただろうか。
 だから、ルルーシュにしてもそうするのが当然だと認識している。
「……つまんないな」
 ぼそっとスザクがこんな呟きを漏らす。
「でも、いいのか」
 しかし、すぐにその表情をいつものあの不遜なものへと変化させていく。
「人前でキス何かしたら、ルルーシュが困るだろうしな」
 車の中ならいいよな、と口にすると、そのままルルーシュの方ににじり寄ってくる。
「……貴様、何を考えている」
「いいだろう。いずれ結婚するんだし!」
「誰がいいといったぁ!」
 それどころか、全力で拒否しているだろう! とルルーシュは叫び返す。
「……男同士で結婚は無理だよ」
 さらに藤堂もこう言ってくる。
「大丈夫。父さんが法律を変えてくれるから」
 変えさせるからの間違いではないのか。心の中でそう呟いてしまうルルーシュだった。



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07.08.16移動up