車に乗っていただけなのに、どうしてこうも体力を使い果たしてしまわなければいけないのか。ルルーシュには本当に不思議だ。
「……殿下、どうなされたのですか?」
 そんな彼の耳にアッシュフォード候の孫娘であるミレイの声が届く。
 普通に聞いていれば、心配しているとしか思えないだろう。だが、それは違うと言うことをルルーシュは今までの経験からよくわかっていた。
 彼女は、絶対に現状を楽しんでいる。
「ミレイ。本当にそれを聞きたいのか?」
 ため息とともにルルーシュはこう問いかけた。聞かなくても、この状況だけで十分に理解できるだろう。言外にそう付け加える。
「殿下がお話くださいますなら」
 本気で人の不幸を楽しむつもりだな、とルルーシュはため息を吐く。
「それで本国に連絡をして、兄上たちに『日本を占領しろ』と言わせるつもりか?」
 彼等ならやりかねないよな。そう思いながらルルーシュは彼女を見つめる。
「そんなことはしませんわ。私も、この国を気に入っておりますから」
 だから、自分だけで楽しみますわ〜、という声が聞こえたような気がするのはルルーシュの錯覚か。
「……ルルーシュ……」
 背後からルルーシュを抱きしめていたスザクが、ようやく口を挟む隙を見つけたのだろう。
「なんで、会長とそんなに親しげな訳?」
 まさか、婚約者だとか何だとか言わないよな? と彼はさらに言葉を重ねてくる。ルルーシュは自分の嫁にするんだから、とも。
「スザク! お前な!!」
 少しは空気を読め! とルルーシュは彼を怒鳴りつけた。
「殿下がそんな言動をされるなんて、始めてみましたわ」
 それがさらにミレイの言動に拍車をかける結果になってしまったようだ。
「ミレイ!」
「取りあえず、私と殿下の関係だけど……アッシュフォードが殿下の母君であるマリアンヌ様の後見をさせて頂いているの。その縁で、幼いころからの顔見知りだわ」
 幼なじみ、というのが一番近いわね……と彼女はスザクへと視線を向けると口にする。
「と言うわけで、取りあえず、今は貴方の心配するような関係ではないと教えてあげる」
「……今は?」
「ひょっとしたら、殿下の婚約者になるかもしれないという事よ」
 あくまでも可能性だけれども……とミレイは意味ありげに言葉を口にした。
「……ミレイ……」
 頼むから、そういうことはあえて口にするな。ルルーシュはそう思う。
 ミレイは校内だけの付き合いかもしれないが、自分はスザクとともにまた枢木邸に戻らなければいけないのだぞ、とため息を吐く。
「本当のことではありませんか。うちの両親なんか、本気で工作中ですわ」
 娘を皇族の嫁にしたいと思っているようだから、とそうも彼女は続ける。
「……たとえ会長でも……ルルーシュは上げません!」
 そして、スザク! いつの間に自分はお前の所有物になったんだ? とルルーシュは思う。
「まったく……どうして、俺の回りには俺で遊ぼうとする人間しかいないんだ?」
 いい加減にしてくれ。ルルーシュは本気でそう呟く。
「俺は本気だぞ、ルルーシュ!」
 絶対に幸せにするから! という時点で自分が不幸になっているとどうして気付いてくれないのか。ルルーシュはそういいたい。
「大丈夫。絶対に白無垢も似合うから」
 だから、それは何なのか。
「殿下なら、十二単でもいいかもしれませんわね」
「あぁ。似合うかも」
 しかし、わからないのはルルーシュだけらしい。彼の頭を越えてこんな会話が延々と続けられている。
 最終的に、ルルーシュが立っていることに疲れて座り込むまでそれは続いたのだった。



BACK





08.02.08移動up