ルルーシュの悩み(女の子ルル)

「……お姉様……」
 周囲に誰もいないせいか。ナナリーは小さな声でこう呼びかけてくる。
「どうした、ナナリー?」
 それに、ルルーシュはこう聞き返す。その声はあくまでも優しい。
「あの……ですね」
 そんな彼女に対して、ナナリーは非常に言いにくそうに言葉を切る。そのまま、ルルーシュの方に見えない瞳を向けてきた。
「胸が、苦しいんです……また、サイズが合わなくなったようで……」
 なので、また新しいブラジャーが欲しいのですけど……と彼女は蚊の鳴くような声で付け加えると、視線を落とす。
 そんな妹の胸に、ルルーシュは反射的に視線を向けた。そのまま、自分のそれへと視線を移動させる。
 男、と言うことにするためにアンダーできっちりと押さえつけているせいだろうか。服の上からそれを見ることはできない。もっとも、アンダーをはずしても厚手の服を着てしまえばわからないかもしれない程度のふくらみだ。
「……母上も、胸が豊かな方だったからな」
 それにナナリーは成長期だから……と付け加えるものの、どこか釈然としないものがあることは否定しない。
「お姉様」
「今度、会長か咲世子さんに頼んでおこう」
 流石に、今の自分が買いに行くのは難しいが……とルルーシュは自嘲の笑みを浮かべながら口にする。
「ごめんなさい、お姉様」
 それに気付いたのか、ナナリーが本当に申し訳なさそうにこういう。
「お前が謝ることではないだろう、ナナリー」
 彼女にそんな表情をさせるつもりではなかったのだ。だから、ルルーシュは慌てて言葉を口にする。
「だから、遠慮するんじゃない」
 そのまま、そうっと頭を撫でてやれば、取りあえずナナリーは納得したようだった。

 とはいうものの、やはり複雑と言えば複雑だ。
「どうして、俺の回りには胸の豊かな女性しかいないんだろうな」
 カレンもそうだし、ミレイをはじめとした生徒会のメンバーもそうだ。ユーフェミアとコーネリアに置いては何も言えない。悔しいことに、C.C.だってかなり大きいのだ。
 それに比べて……とルルーシュは自分の胸を見て小さなため息を漏らしてしまう。
「……男のふりをしているには、これくらいでちょうどいいんだろうがな……」
 だからといって、大きな胸がうらやましくないというわけではないのだ。
「男なら、胸が大きな方がいい……とリヴァルも言っていたし」
 だからといって、これ以上大きくなっても男装が難しくなる。制服ならともかく、ゼロの衣装ではなおさらだ。
「……あんなデザインにしなければよかったか?」
 後悔先に立たず。
 今更やめられないし……とルルーシュは小さなため息をつく。
「大きさより形だろう?」
 その瞬間、耳元でとんでもないセリフを囁いてくれた存在がいた。
「C.C.!」
 どこから聞いていたんだ、貴様は! とルルーシュは予想外のことに慌ててしまう。
「どうしても大きくしたいなら、誰かにもんでもらうといいと言うぞ」
 一瞬頭が真っ白になったルルーシュの耳にさらにこんなセリフが届く。
「貴様!」
 反射的に、手近にあったクッションを投げつける。それをあっさりと避けると、笑いながらC.C.は部屋を後にした。

「……ルル」
 久々に学校で顔を合わせたスザクが真顔で見つめてくる。
「何だ?」
 まじめな話なのか、と思いながら聞き返す。
「僕、胸は小さい方が好きだから」
 しかし、彼の口から出たのはこんなセリフだった。
「スザク!」
 何で、それを彼が知っているのか。それを確かめるよりも早く、ルルーシュは彼を殴りつけていた。


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07.06.24移動up