アリエス宮襲撃事件で足にケガをしたのはナナリーではなくルルーシュという設定になっています。
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「ルルーシュ殿下ぁ!」
そのジェレミアの声が聞こえたのだろうか。ルルーシュ達がトレーラーの中にはいるよりも先にロイドが飛び出してきた。
「お久しぶりですぅ! 相変わらず、美人さんですねぇ」
いつものハイテンションで彼はこう言ってくる。しかし、とルルーシュはため息をつく。
「ロイド……俺は男だぞ」
「いいんですよぉ! 男だろうと女だろうと、美人は美人です!」
シュナイゼルもそういっているのだから、と付け加えられて、ルルーシュは思わず彼にどんな報復をしてやろうかと心の中で呟いてしまった。
だが、今はそれよりも優先すべき事がある。
「……お前に、人間の美醜がわかるとは思わなかったな」
それでも、こう言わずにはいられない。
「酷いですねぇ! 僕にだってその位はわかりますよぉ」
即座に、ロイドは反論の言葉を口にした。
「酷いも何も……貴様がわかるのはルルーシュ殿下のことだけだろうが」
それ以外の人間は眼中にないのではないか。そういってきたのはジェレミアだ。
「昔からそうだったはずだ」
パブリックスクール時代、寮内で話題になったマドンナに対しても存在すら知らなかったのは貴様だけだ! と彼は続ける。
「……あれぇ そんなこと、あったっかなぁ……」
「そういうことがあったことすら覚えていないわけだ」
本当にロイドらしい、とルルーシュは頷く。
「違いますよぉ! あのころの僕にとって《美人》と言えば、マリアンヌ様だけだっただけですぅ」
それに比べれば、どんな女性も色あせて見えただけだ。ロイドのこの言葉に、ルルーシュはどのような表情を作ればいいのかわからなくなってしまう。
「そういうことであれば、貴様のあの反応も妥協してやろう」
しかし、ジェレミアはあっさりとそれで納得をしてしまったようだ。
「……ともかく、だ」
このままでは、いつまで経っても本題にたどり着けないような気がする。そう考えて、ルルーシュは強引に話題を変えようと口を開いた。
「まず、お前のおもちゃを見せて貰おうか」
それから、あれこれ相談をしたいことがある。そう続ければ、ロイドの意識はあっさりとそちらに向いたらしい。
「おもちゃじゃありませんよぉ! ランスロットです」
きっと、ラウンズの者達が乗っている機体にも負けませんよぉ……と彼は続ける。その瞬間、アーニャの頬が引きつったのをルルーシュは見逃さなかった。
「ようやく、最後のパーツも揃いましたしねぇ」
いいデーターも取れていますよぉ、と気付かずにロイドは続ける。
「デヴァイサーですよぉ。わかりやすく言えば、パイロットですけどね」
でも、僕のランスロットは特別なのでパイロットの呼び方も特別なんです……と笑う彼に、アーニャの機嫌はさらに悪化していく。
「……ルル様……」
それでも、ルルーシュに向かって呼びかけてくる口調はいつも通りだ。
「何だ?」
しかし、声音が彼女の今の機嫌を如実に表している。もっとも、それに気付いているのは自分だけだろう。
「模擬戦、したい」
この言葉を耳にした瞬間、ロイドは雄叫びをあげ、ルルーシュはため息をついた。
「モルドレットは持ってきてないだろう?」
この指摘に、アーニャはようやくその事実に気が付いたようだ。
「それに、今回の目的はそれではないからな……我慢しておけ」
機会はまだあるだろうし……とそう付け加える。それで話がすんだ、と思ったときだ。
「それならば、私に」
今度はジェレミアがこう言ってくる。
「ジェレミア?」
何を言い出すのか、とルルーシュは相手を見つめた。
「ルルーシュ殿下のお側にいるかもしれない相手です。実力を確認しなければ、私が納得できません」
ナナリーの側にいる以上、自分には次の機会があるかどうかはわからない。もっとも、ナナリーの側にいることがいやなのではないが、と彼は慌てたように付け加えた。
「それは知っている」
だが、とルルーシュは言い返そうと口を開く。
「だからこそ、ルルーシュ殿下の側には私が納得できるだけの実力を持ったものにいて欲しいのです」
ビスマルクは問題がない。そして、現在、ラウンズの名を与えられているものも、だ。
しかし、見ず知らずの相手ではそういうわけにはいかない。
「この地には、私が使っているサザーランドがあります。許可さえいただければ、すぐに用意できましょう」
だから、と彼は真っ直ぐにルルーシュを見つめてくる。
「ともかく、だ」
本当に、こいつらは少し過保護すぎないか? と心の中で呟きながらもルルーシュは言葉を唇に乗せた。
「その……デヴァイサーを俺が気にいるかどうか、まだわからないんだぞ?」
相手の顔も見ていないのに、今、ここで騒いでも意味がないだろう。そう付け加える。
「それは……そうかもしれませんが……」
ですが、とジェレミアはさらに言葉を口にしようとした。
「お前の気持ちは嬉しい。だが、あくまでも、選択権は俺にある。違うか?」
その前に、ルルーシュは彼にこう問いかける。
「もちろんでございます」
「なら、しばらくは俺に任せてくれ」
その後で、ジェレミアやアーニャの協力が必要ならきちんと声をかけるから、と口にした。
「……ルル様がそういうなら……」
アーニャはこう言って引き下がる。しかし、納得したわけではないだろうと言うことはわかっていた。
「Yes.Your Highness」
それはジェレミアも同じだろう。
それでも頷いて見せたのは、ルルーシュの言葉だから、ではないか。しかし、それについて今は気が付かないふりをする。
「と言うことで、ロイド。お前自慢のおもちゃを見せて貰おうか」
代わりに、ルルーシュはこう言って笑った。
ロイドの性格はともかく、少なくともナイトメアフレームに対するセンスは優れている。目の前の機体も、今まで見てきた数多くのそれに勝るとも劣らないほど美しい。
もっとも、自分にとって一番美しいと言える機体は、マリアンヌが操っていたガニメデかもしれない。それは、追憶という飾りに彩られているからかもしれないが、とルルーシュは心の中で付け加えた。
「どぉですかぁ、で・ん・か」
ランスロットを凝視していたのがわかったのだろう。ロイドがこう問いかけてくる。
「予想以上によく動くな。あれだと……機動性だけを言えばトリスタンと互角か?」
もっとも、あちらは空を飛べるが……と何気なく付け加えてしまった。それがロイドの中の何かを刺激したのか。
「セシルく〜ん!」
側にいた副官に即座に声をかけている。
「はいはい」
だが、彼女の方はそんなロイドの態度にはなれているのか。苦笑と共に頷いてみせた。そのまま、コンソールに向き直るとランスロットのデヴァイサーに向かって何か指示を出している。
次の瞬間、ランスロットが一度デッキに戻っていく。
「ロイド?」
「とりあえず、パーツの換装をしますからぁ」
ちょっとの間待っていてください、と彼は笑う。
「……なるほど……」
その点も考えてあったのか、とルルーシュは頷いた。
「だが、そのわりには脱出装置等がつけられていないようだが?」
設計図を見て気になっていたことをその後に付け加える。
「だって、つまらないじゃないですかぁ」
脱出装置の開発は、とロイドが言い返してきた。その言葉にルルーシュは頭痛を覚える。
「楽しいとかつまらないという問題ではないだろうが」
脱出装置はパイロットを守るために必要なものだろう。ルルーシュはそう言い返す。
「普通はそうなんでしょうけどぉ……でも、そうなったら、見捨てられる機体がかわいそうじゃないですかぁ」
もっとも、と彼はすぐに表情を変える。
「ルルーシュ殿下が乗られるのでしたら、万全のものを開発させて頂きますけどねぇ」
脱出時も安全を確保できるような、と彼はその表情のまま付け加えた。
「その前に、他の機体でそれを実証して貰いたいものだな」
例えば、ランスロットで……とルルーシュは言外に言い返す。
「……そぉですかぁ?」
つまらないけれど、ルルーシュはそういうなら仕方ない……とロイドはため息をつく。
「準備できました」
その場の雰囲気を変えるかのようにセシルが声をかけてくる。
「そのあたりは、お前のご自慢のシステムを見てから話し合おうか」
それに、あれのデヴァイサーとやらにも会いたいからな。そうルルーシュは続ける。
「わっかりましたぁ」
それにロイドは楽しげに頷くと、セシルに向かって合図を送った。
デッキに戻ってきたランスロットをルルーシュは側で見守っていた。もちろん、アーニャ達も一緒だ。
「気に入られましたぁ?」
機体から目を離さずにいるルルーシュに向かってロイドがこう問いかけてくる。
「あぁ……」
否定する気になれないから、素直に頷いて見せた。
「それはよかったですぅ」
君もそう思うだろう? といいながら、ロイドはランスロットのコクピットへと視線を向ける。まるでその言葉を待っていたかのようにハッチが開いた。
ランスロットとおそろいのカラーリングのパイロットシーツに包まれた体はよく鍛え上げられている。その位でなければ、あの機体をコントロールできないのかもしれない。
だが、ルルーシュは別のことに意識を奪われていた。
ブリタニア人よりも黄色味が濃い肌の色。
見た目よりも柔らかな茶色の癖毛。
そして、夏の森を思い浮かべる鮮やかな緑色の瞳。
それら一つ一つであれば他にも持ち得ている人間はいるかもしれない。しかし、全てを兼ね備えている人物をルルーシュは一人しか知らなかった。
何よりも、その容貌には自分が出逢った頃の面影が色濃く残されている。
「……スザク……」
信じられない、と言う思いを隠せないまま、ルルーシュは相手の名前を呼ぶ。それに、彼は笑みを浮かべた。
「ルルーシュ……殿下」
おそらく、昔のように呼び捨てにしようとしたのだろうか。だが、今の自分の立場を思い出したのか、すぐに敬称を付けてきた。その事実が、どこか哀しいと感じてしまうのはどうしてなのか。
「本当に、スザクか?」
それ以上に、再会できた喜びの方が大きいと言うことは否定しない。すぐにでも彼に近づきたくて車いすを進める。
だが、ここは宮殿でも政庁でもなく、開発のための場所だ。当然、ルルーシュの車いすのことなど配慮されているはずもない。所狭しとおかれた機器は何の配慮もなくケーブルでつながれていた。
その中の一つに、ルルーシュの車いすが引っかかる。
「ルル様!」
「ルルーシュ殿下!!」
バランスを崩した彼に、アーニャとジェレミアが慌てて駆け寄ろうとしたようだ。
しかし、それよりも先に誰かの力強い腕がルルーシュの体を抱き留めた。
「ダメだよ、気をつけないと……」
ここは健常者ですらよく脚を引っかけて転ぶんだから……と間近から聞こえたのは、先ほど、ランスロットのハッチの上にいた相手のそれだ。
「……スザク……」
誰よりも遠くにいたはずなのに。そう思いながら、ルルーシュは顔を上げる。
「ずいぶんと軽いね……ひょっとして、女の子にも抱き上げられる?」
ルルーシュを抱え直しながら、スザクはこんなセリフを口にしてくれた。それは、はっきり言って、触れて欲しくない内容ではある。
「……相変わらず、空気を読めない奴だな……」
それでも、そんなところは昔と変わらない。そう心の中で呟いた瞬間、ルルーシュの口元には知らず知らずのうちに笑みが浮かぶ。
「会いたかった……」
生きていてくれてありがとう、とそのまま付け加える。
「僕も、君に会いたかったよ……ルルーシュ」
スザクも即座に言葉を返してくれた。
その言葉だけでいい。
その思いのまま、ルルーシュはそっと彼の肩に自分の手をおいた。
「僕がルルーシュを?」
恨んでいるわけないだろう、と口にしたスザクの口調はとても親しげなものだ。しかし、何か違和感を感じてしまう。
「……クルルギ准尉!」
その答えを見つけようとしたルルーシュの意識を、ジェレミアの声が強引に遮断する。それはスザクの言動が皇族に対するものではないから、だろう。
「構わない」
自分は別にそこまでスザクに求めているわけではない。もっとも、周囲の者達から見ればそういうわけにはいかないのだろうが。
「それよりも、俺はスザクと話がしたい。しばらく口を挟むな」
スザクの語彙力ではそこまで求めても無駄だろう……と付け加えたのには悪気はない。
「……酷いな、それは……」
ぼそっとスザクがこう呟いている。その口調は、ルルーシュの記憶の中にある彼の面影と重なる。
「でも、否定できませんけど」
こちらははっきりとした声量で言ってきた。その瞬間、違和感の答えが見つかったような気がする。
「……スザクが俺様な口調じゃない……」
それを素直に口にすれば、
「僕だって、この七年間で成長したんだよ」
と即座に言い返された。
「そういう君だって、かなりがさつになった」
昔はもっとおしとやかだった、と彼は真顔で付け加える。
「スザク……」
「何?」
「それは、女性に使うべき言葉ではないか?」
おしとやかというのは、と付け加えればスザクは考え込むように首をかしげた。
「そう、かな?」
そのままこう呟いてみせる。だが、ジェレミアにはそれでルルーシュの言葉が納得できたようだ。
「わかりました。それに関しては、後であれこれ教育させて頂きましょう」
こう言って彼は引き下がる。
「ともかく、だ。お前はどうしてブリタニア軍に?」
スザクの立場であれば、反ブリタニアの旗印に祭り上げられてもおかしくはない。そうなった場合、自分が彼を殺さなければならない状況になっていたかもしれないのだ。だから、この状況はある意味、ありがたいと思う。
「ルルーシュとの約束があったから、かな?」
自分が守ってやる、と言っただろう? と彼は笑いながら口にした。
「……スザク……」
確かに、そんな約束をした記憶はある。しかし、それはあのころ、自分が外にでたときに同年代の子供達からいじめられたときの話ではないのか。
「僕の気持ちは今も変わらないし……そのために、手を貸してくれた人もいたから」
でも、あの人は自分よりも年上のはずなのに、どうして子供のままなのだろうか。彼はそういって首をひねっている。それだけで、誰が彼に手を差し伸べたのかがわかってしまった。
同時に、彼であれば多少の無理を通すことも可能だろう。
「あの人のことは気にするな」
あまり難しく考えても意味はない。自分ですら、彼がどうしてあの姿のままなのかを知らないのだ。ルルーシュはそう彼に説明をする。
「だが……それならば、俺と一緒に来てくれるか?」
命じてしまえばそれですむ。しかし、それをしたくない。だから……とルルーシュはこう問いかけた。
「君が、そう望んでくれるなら」
それに、スザクは笑顔を浮かべる。
「僕が君を守るよ」
この言葉に、ルルーシュも頷き返した。
しかし、それが別の騒動を引き起こすことになるとはルルーシュも想像していなかった。
「……父上――皇帝陛下と宰相閣下の許可は得られましたよ?」
その原因の一つは、目の前にいる三番目の兄だ。
「だけどね、ルルーシュ」
言いたくはないが、と彼はため息を付く。
「彼はナンバーズなのだよ?」
「……ですが、ナナリーと互角に戦える人間を、俺はナイト・オブ・ラウンズの他にはスザク以外知りません」
ナイト・オブ・ラウンズはあくまでも皇帝の騎士だ。自分が好きにしていい存在ではない。アーニャにしてもジノにしても、シャルルが好意で自分に貸し出してくれるだけだと言っていい。
その他の有能な者達も、既に他のきょうだいたちの騎士になっている。
「……ナナリーと?」
しかし、クロヴィスにはこちらの方が気にかかったようだ。
「はい。アーニャがせがむので、シミュレーターで対戦させてみたのですが……それを見てナナリーが興味を持ったようで……」
止める間もなく、とルルーシュは苦笑と共に付け加える。
「……しかも、どちらもエナジーフィラーが尽きるまで一歩も退きませんでしたよ」
もっとも、スザクはそれなりに遠慮していたように見えたが、とはルルーシュは口にしなかった。それを言わなくても、彼には十分だと思ったのだ。
「そうか、ナナリーと……」
実力は文句がつけられないと言うことか……と彼は考え込むような表情を見せた。
「それに……余計な紐が付いていると厄介ですから」
スザクにはその心配がない。あるとすればV.V.のものだけだろうし、とルルーシュは心の中だけで付け加える。
「ルルーシュ……」
クロヴィスはクロヴィスで、複雑な表情を見せた。ルルーシュが何を心配しているのかわかったのだろう。
「ですから、これ以上、反対しないでくださいますか?」
「……君がそういうならね」
でも、自分が引き下がっても、他の者もそうしてくれるとは限らないよ? と彼は問いかけてくる。
「もちろん、わかっています」
その程度の覚悟がなくて、スザクを自分の側に置くなどとは言えない。
「ただ、アーニャも気に入ったので……いざというときには、フォローがもらえるかと」
あまりあてには出来ないが、と心の中で付け加えたのは内緒だ。
「それに……スザクは嚮団からの推薦状を持っています」
正確にはV.V.個人のものだが、この場合、関係ないだろう。
「嚮団の……」
「……どうやら、あの戦争の後しばらく、嚮団で保護されていたようです」
そう考えれば、身元は保証されているのではないか。ルルーシュはクロヴィスに向かってこう問いかける。
「そうかもしれないけどね、ルルーシュ」
それでも、スザクがナンバーズだ、と言うことは否定できない事実だよ? と彼はさらに言葉を重ねてくる。
「ナンバーズではなく、名誉ブリタニア人ですね」
少なくとも『ナンバーズ』と蔑まされる理由はない。それ以前に、ナンバーズであろうとも差別はともかく蔑む理由はないはずだ。
「どのみち、軍には直接関わりません。あくまでも、俺個人の護衛、と言う立場になります」
そのような人間が側にいてくれる方が、自分にはありがたい。言外にそう付け加えた。
「……確かに、そのような人物は君の側に必要だとは思うけどね」
でも、彼でなくてもいいだろう……とクロヴィスはまだ諦めきれないように呟いている。
「兄さん達が紹介してくれる人物が、絶対に信用できて、なおかつ、俺を守れるというのでしたら、ここまで我を張らないんですけどね」
一人には殺されかけたし、一人には襲われそうになった。指を折りながらルルーシュは言葉を重ねる。そのたびに、クロヴィスの表情が強ばっていく。
「と言うことで、俺としてはナンバーズだろうと名誉ブリタニア人であろうと、信頼できてなおかつ、俺を守りきれる人間であれば構わないのですよ」
もっとも、まだまだ、これから障害を乗り越えてもらわなければいけないだろうが、と苦笑と共に付け加える。
「そういうことならば、しかたがないね」
ナナリーが文句を言っていないのであれば、とクロヴィスはため息をつく。
「ただし、私もあきらめないからね」
そのうち、スザクよりももっとふさわしい人間を見つけ出してみせる。言葉とともに別の方向に燃え始めたクロヴィスに向かって、ルルーシュはあきれたような視線を投げつける。
「それで、ナナリーに怒られても、俺は責任をとりませんからね?」
仕事を放り出して、と呟くように口にした。
「そんなことはないよ、多分」
いったい、どこまでその言葉を信じればいいのか。そう思わずにはいられないルルーシュだった。
部屋へと戻れば、特派の制服に身を包んだスザクが待っていた。
「お帰り、ルルーシュ」
こう言いながら、さりげなくアーニャから車いすのハンドルを受け継いでいる。
「待っていなくてもよかったんだがな」
「そういうわけにはいかないよ」
それに、これからは自分がこの役目を受け持つことが多いんでしょう? とスザクは問いかけてきた。
「あぁ……そうだな」
「大丈夫。ちゃんとそっちの方の勉強もしてきたから」
ルルーシュの世話なら、ちゃんと出来るよ……と彼は笑う。
「……スザク……」
「でも、敬語に関してはちょっと見逃してよね」
公式の場では頑張るけど、それ以外は自信がない。そう付け加える彼に、ルルーシュは彼がどうやって乗り切ろうとしているのか、想像が付いた。
「公式の場ではしゃべらない気だろう?」
「簡単に言えば、そういうことだけどね」
でも、困らないでしょう? と言われて、本気で反応に困る。
そういえば、昔からスザクと一緒にいると、こんな風に反応に困るのが新鮮だったのだ。
「大丈夫。ちゃんと教えるから」
必要最低限、とアーニャが口を挟んでくる。
「……そうだな。お前達に頼めばいいのか」
そのあたりは、とルルーシュは笑う。
「もっとも、その前に、スザクが立っていられるかどうか、わからない」
おそらく、みんな、手ぐすね引いて待っている。アーニャのその言葉の意味は、流石のスザクにも伝わったようだ。
「……ルルーシュ?」
少し引きつったような声が耳に届く。
「せいぜい頑張ってくれ」
実力さえ見せつければ、ラウンズの者達は納得する。だから、それに関しては心配していない。
「お前なら大丈夫だ」
微笑みと共にさらに言葉を重ねる。
「……ありがとう」
それに小さなため息とともにスザクは言葉を返してきた。
その後、スザクが無事にアーニャ以外のラウンズに受け入れられたのかどうか。それはまた別の話だろう。
終
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