「ともかく、お腹空いていませんか?」
 不意にロイドがこう言ってくる。この唐突さは昔と変わらないな……とルルーシュは思う。
「プリンがありますよぉ。ルルーシュ様をお連れしてから時間がありましたので、腕によりをかけましたからぁ」
 生クリームと苺も常備してありますよぉ、という彼にルルーシュは目を丸くしてしまう。
「それとも、イチゴタルトの方がいいですかぁ?」
 こちらだと、少しお時間をいただかないとダメなんですがぁ……と口にしながら、ロイドは顔をのぞき込んでくる。
「……私はピザがいいのだが」
 そのときだ。先ほども耳にした声が割り込んできた。
「……C.C.……僕は今、殿下と話をしているんですけどぉ」
 食べたいなら、勝手に頼んできてください……とロイドは言い返す。
「……C.C.?」
 その名前には聞き覚えがあるような気がする。そう思いながら、ルルーシュは声がした方向へと視線を向けた。
 鮮やかな緑の髪の毛をした少女が立っているのが見える。ロイドのそばに少女が……と言うことよりも、その少女の姿にルルーシュは驚きを隠せなかった。
「……嘘だ……」
 その少女の姿を、自分は確かに知っている。しかし、それは母がまだ生きていた頃のことだ。あれから七年も経っているのに、まったく変わっていないというのはどうしてなのか。
「覚えていたか」
 そうすれば、C.C.は満足そうに微笑む。
「私のことは気にするな。私の時間は、お前達のそれとは違う。ただ、それだけのことだ」
 それで納得できるはずがない。
「マリアンヌやそれと約束している。だから、お前達のことは守ってやろう」
 しかし、C.C.はさらに人を混乱させるようなセリフを口にしてくれた。
「……母上と、ロイド?」
 何故その二人が……とは思わない。二人が自分たちの身をどれだけ案じてくれていたか、よくわかっているつもりだ。しかし、目の前の少女に頼んだとするのはどうしてなのだろうか。そうも思う。
「C.C.……殿下が混乱されてしまいます。ピザなら勝手に頼んでかまいませんから、取りあえず、二人だけにしてもらえませんか?」
 取りあえず、空腹を満たしてもらった上で説明をしますから……とロイドが彼女に告げる。
「本当にうるさいな、お前は」
 まぁ、勝手にしていいというなら、勝手にさせてもらうが……と口にするとC.C.はきびすを返す。
「ルルーシュ。それの許可が出たら、また話をしよう。マリアンヌのこととかな」
 そういうと、彼女は微笑む。その微笑みが記憶の中の母のそれによく似ているような気がしたのは錯覚だろうか。
「殿下ぁ……あんなのよりも、僕を見てくださいよぉ」
 それとも、ヤキモチを焼かせて楽しんでおいでなのですかぁ? とロイドはロイドでとんでもないセリフを口にしてくれる。
「……ロイド……」
 だから、どうしてそういうことになるのか……とルルーシュは傷のせいではなく別の意味で頭痛を感じてしまう。
「はぁい、殿下」
 何、何……と嬉しそうに顔を寄せてくるその様子は、まるで犬のようだ。彼の体躯から判断をしてアフガンハウンドだろうか。それともボルゾイか。
 スザクであれば、秋田犬か柴犬を連想するんだが……と、自分の身近に痛もう一人の犬属性の存在の顔を思い出しながら心の中で呟く。
「……プリンよりも、もう少し胃にやさしいものが食べたい。おかゆ――じゃなくてリゾットと言った方がわかりやすいのか。それがいいな」
 ともかく、一人になってあれこれ考えたい。せめて、情報だけでも整理したいから……とそう思って、こう告げる。
「はいはい。卵を落として……そうですね、梅干しもおつけしましょうかぁ?」
 そうすれば、ロイドがあっさりとこういう。
「あるのか?」
 まさかと思いながら、問いかける。
「たまたまですけどねぇ。あぁ……ご無事だという連絡は、アッシュフォードでよろしいのですか?」
 今思い出しましたが……といわれて、ルルーシュは反射的に頷く。
「ミレイ・アッシュフォードに頼む。そうすれば、ナナリーにも連絡が行くはずだ」
 そのあたりのことは、彼女に任せておけばいい。そのような信頼感を彼女には抱いている。
「わっかりましたぁ」
 では、今しばらくお待ちくださいねぇ……と口にすると、ロイドは立ち上がる。
「あぁ、トイレ等のご用がありましたら、壁にあるボタンで遠慮なく呼んでください。喜んでお手伝いさせて頂きますからぁ」
「うるさい!」
 そう叫んだ瞬間、傷が痛む。
「ダメですよぉ。きちんと安静にしていないとぉ」
 誰のせいだ、とそう思ってしまうルルーシュだった。それでも、そんな彼を嫌いにはなれない。改めて認識させられたその事実に、ルルーシュは小さな微苦笑を浮かべてしまった。



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