ロイルル1


「……あはぁ」
 目の前のナイトメアフレーム――と言っていいのだろうか――動きを見て、ロイドは苦笑を浮かべる。
「どうやら、ちょーっと遅かったようだねぇ」
 誰かがあれに取り込まれてしまったようだ……と呟く。
「それにしても、クロヴィス殿下も困った方だよぉ」
 ブリタニア人が巻き込まれる可能性だってあるって予想しておいてくれれば世かったのにぃ、と呟きながら周囲を見回す。そうすれば、トウキョウ租界の中でも有名な私立学校の制服を身に纏った少年の姿が確認できる。ブリタニア人には珍しい黒髪に、ある人物のことを思い出してしまう。
「あらぁ」
 ひょっとして死んじゃったのかなぁ……と呟きながら、何気なくその少年に歩み寄ったのはそのせいだろうか。
 だが、相手の顔をのぞき込んだ瞬間、ロイドの表情から余裕が消える。
「……ルルーシュ様……」
 何で、と思いながらとっさに呼吸の有無を確認した。そして、細いながらも呼吸があることに取りあえず安堵のため息をつく。
「ともかく……医者ですねぇ」
 彼の存在に気付かれるかもしれない。それでも、彼を完全に失うよりはマシだろう。そう判断をする。
「……あれが例のものだとするなら、誰が契約を結んだのかは確認しないといけないんですけどねぇ」
 それでも、優先順位を考えればこちらの方が先だ。そう思う。
「生きていてくださったのなら、全力でお守りしますからぁ」
 だから、安心してくださいね……と呟きながら、そっとルルーシュの体を抱き上げる。そして、そのまま歩き出そうとしたときだ。
「貴様! ここで何をしている!!」
 歩兵らしい人間がこちらに銃口を向けている。
「……ルル?」
 しかし、その中の一人だけが別の反応を見せた。それはどうしてなのか。
「何をしているってぇ……あんなものが出たって聞いたら、興味を持つに決まっているでしょぉ」
 特派の主任である以上……とロイドはへらりと笑う。
「……特派、ね。だが、我々はここに足を踏み入れたものは全員処分するように命じられている」
 それは特派だろうと誰だろうと例外はない、と隊長らしき男が口にした。
「そんな!」
「……邪魔立てするなら、貴様も同罪だぞ、枢木一等兵!」
 それで、ルルーシュの名前を相手の正体がわかった、とロイドは心の中で呟く。同時に、厄介なことになったとも。
「ですが!」
「うるさい!」
 怒鳴り声とともに枢木の体が吹き飛ばされる。そのまま彼は頭を打って意識を失ったようだ。
 しかし、逆に言えばこれは好都合かもしれない。
「……忘れさせるくらいであれば簡単だしねぇ」
 でなくても、あれが側まで来ている。だから、ごまかすことも可能だろう。
「さて、次は貴様だな」
 逃げずにいたのはほめてやろう……と口にしながら、相手はロイドを見つめてくる。
「……それは僕のセリフだよぉ」
 くすりと笑いながら、意識を左目に集めた。
「僕の殿下に手を出そうとしたお前達は、生きている価値なんてない。自分で自分の始末を付けるんだね」
 そのまま、相手を見つめる。
 そうすれば、その場にいた者達全員の動きが止まった。
「……イエス、マイロード」
 言葉とともに、連中は自分の銃を己の首筋に押し当てる。そして、そのまま引き金を引いた。
 周囲に血だまりが広がっていく。
「……さて……どうしようねぇ、あちらは」
 このまま放っておいてもかまわないような気がする。しかし、それではあれに踏みつぶされそうだし……とそう思ったときだ。
「適当な場所に捨ててきてやろう」
 女性の声にしては硬質なそれが耳に届く。
「お願いしますよ、C.C.」
 ふわりと目の前に現れた緑色の髪の女性に向かって、ロイドは言葉を投げかける。
「しかたがあるまい。それはマリアンヌの子供だからな」
 そして、あれはその子供の初めての友人。なら、見捨てるわけにはいかないだろう……とC.C.は口にした。
「その子供を守ることも、間違いなく契約の一部だ」
 だから安心しろ、という彼女にロイドは頷く。
「じゃ、お願いしますねぇ」
 そして、こう告げると彼はゆっくりと歩き始めた。


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08.05.21移動