ハロウィン

 目の前にあるカボチャをいったいどうしたら持って帰れるだろうか。ルルーシュは先ほどからそれを考えていた。
「これだけ大きければ、間違いなく人目をひくだろうが……」
 そして、これでジャック・オ・ランタンを作れば、今回のハロウィンパーティーが盛り上がることも目に見えている。
 しかし、だ。
 自分がどれだけ非力かも、ルルーシュはよく知っていた。
「失敗したな。リヴァルを帰すのではなかったか」
 しかし、彼には彼でやらなければいけないことがある。だから、買い物に付き合わせるわけにはいかなかった。
「仕方がない。誰か運べそうな人間を呼ぶか」
 そう呟いたときだ。
「どうしたの、ルルーシュ」
 何を悩んでいるんだ? と背後から声がかけられる。その声の主が誰のものか、確認しなくてもわかってしまう。
「スザクか」
 同時に、どこかほっとしている自分がいることにも気付いている。
「これを購入したいのだが、運ぶ手段を見つけられなくてな」
 そう言いながら目をつけていたカボチャを指さす。
「大きいね」
 すごい、と彼はどこか楽しげに目を細める。
「だろう? これでジャック・オ・ランタンを作って玄関の所に飾っておけば気分が盛り上がると思うのだが……」
 悔しいが、自分では持ち上げることも出来そうにない。スザク相手に意地を張っても意味はないから、と思いながらそう付け加えた。
「あぁ、そう言うことか」
 そうだよね、と彼はあっさりと頷いてみせる。
「財布の中身が足りないなんてことはルルーシュに限ってあるはずがないもんね」
 そう言うことなら、自分でも役に立てるか……と彼は笑った。
「スザク……お前は俺のことをどう考えているんだ?」
 思わずこう問いかけてしまう。
「しっかり者の美人」
 彼は即答してくる。
「……しっかり者はともかく、美人っていうのは何なんだ?」
 普通、男に使う言葉ではないだろう。そう思う。
「だって、美人としか言いようがないんだから、仕方がないじゃん」
 つまり、彼の語彙では……と言うところか。
「……ともかく、配送の手配はするにしてもレジまでは持っていかないわけにはいかないようだからな。付き合え」
 ここで無駄に時間を使っても仕方がない。そう判断をしてルルーシュはそう言った。
「イエス、マイロード……でいいのかな、この場合?」
 会長の指示だとと彼は笑いながら聞き返してくる。
「そうだな」
 いったい、ミレイは彼に何を教えているのか。後で問いかけてみよう。そう思いながら苦笑を返した。

 翌日、そのカボチャが生徒会室に届いた。
「……これって、すごく大きいけど、食べられるのか?」
 即座に問いかけてきたのはリヴァルだ。
「残念だが、これは飼料用だ。だから、人間は食べられない」
 料理用にはちゃんと食用のものを用意してある、とルルーシュは言い返す。
「そもそも、何故、お前が食べることを前提にしているんだ?」
 さらにこう問いかけた。
「それは決まっているじゃない!」
 しかし、答えは別の人間の口から返ってくる。
「ルルちゃんがとても料理が上手だから、です!」
 だからみんな期待しているのだ、とミレイが言い切った。
「……俺一人で用意しろと?」
 高等部の全員分を? と冷たい視線で聞き返す。
「そんなことは言ってないわよ。もちろん、私たちも手伝います」
 ただ、せめて役員分は全部作ってね? と彼女は笑った。
「……ともかく、リヴァルとスザクの二人はこれでジャック・オ・ランタンを作ってくれ」
 女性陣には料理を手伝って貰おうか、とため息混じりに言い返す。
「……私も?」
「って、あたしもよ、ね?」
 しかし、即座にこんな声が上がるのはどうしてなのか。カレンとシャーリーへと視線を向けながらルルーシュは首をかしげる。
「出来ないのか?」
 女子には確か調理実習が会ったはず。それなのに、と思う。
「……あのね、ルルーシュ君」
 おずおずとニーナが口を挟んでくる。
「二人とも、私と同レベルなの……」
 他の女子も似たり寄ったりだから……と言われて、頭を抱えたくなったのは自分だけではないだろう。
「そうなのかよ」
 俺の夢を返せ、とリヴァルが呟いている。
「まぁ、最近の女の子はお母さんが全部やってくれるからって、包丁も持ったことはないって言う話だし」
 スザクは一体どこからこんな知識を得てくるのか。だが、とルルーシュはミレイをにらみつける
「会長!」
「私に言わないでよ! この二人がここまで使えないなんて、思ってもいなかったんだから」
 とりあえず、基本だけは直ぐにたたき込まないと……と彼女は拳を握りしめた。これからクリスマスも待っているのよ! と続けるその言葉に、本気で頭痛を覚えるルルーシュだった。

 結局、日持ちのする焼き菓子を一週間毎日作り続けて何とか間に合わせることが出来た。
「ご苦労様、ルルーシュ」
 微苦笑を浮かべながらスザクがこう言ってくれる。
「当分、甘い匂いは嗅ぎたくないな、流石に」
 毎日毎日、あの甘ったるい匂いの中にいたから……とルルーシュは苦笑を返す。
「来年は、少しはましになってくれるといいんだが」
 あの二人の料理の技量が……と付け加える。だが、それは不可能のような気がするのは何故だろうか。そうならば、来年は手作りのお菓子を配るということは却下しなければいけない。
「あははは……」
 そうすれば、スザクは何故か乾いた笑いを漏らしてくれる。
「スザク……」
「だって、カレンにシャーリーだよ。二人とも、女子に人気だし……調理実習で作業をさせてもらえるとは思えないからね」
 他の女子がさっさと作業を終わらせてしまうような気がするから、と彼は付け加えた。
「そういうものなのか?」
 勉強にならないだろう、とルルーシュは言い返す。
「そういうものらしいよ」
 女子にとって見れば、と彼は言い切る。
「訳がわからない」
 後で困るだろうに、と思わず呟いてしまう。もっとも、己の母のような人間もいるから、何とかなるのだろうか。しかし、彼女はある意味、家事という言葉から一番遠い世界にいる人間だ。だから、普通の女性と同じ範疇に考えてはいけないような気もする。
 しかし、カレンとシャーリーは違うのではないか。
「まぁ、切実な状況になったら覚えるんじゃない?」
 それよりも、と彼は真顔を作るとルルーシュの前に一枚の紙を置いた。
「会長から……どれがいいか、選んで、だって」
 明日の衣装だそうだけど、と言う彼の腰が引けている。それはどうしてなのかはその紙を見た瞬間、わかってしまった。
「……ほぉ……」
 あれだけの作業をさせたあげくさらにこれか……とルルーシュの中に怒りがわき上がってくる。
「そうかそうか。何をされても怒らないと言うことだな、これは」
 ふふふ、と低い笑いと共にこう呟く。
「ル、ルルーシュ?」
 何を、と表情を引きつらせながらスザクが問いかけてきた。
「耳を貸せ」
 ついでに付き合ってくれ、と笑いかける。
「危ないことじゃない?」
「心配するな。ちょっとした悪戯だ」
 ハロウィンだからな、と告げれば、彼は「仕方がないな」と苦笑を浮かべた。

 しかし、こう言うときは母によく似た子の容姿を恨めしく思いたくなる。
 だが、それとこれとは別問題だ。
「やっぱり、ルルちゃんにはその恰好が一番似合うわ」
 こう言いながら姿を見せたのは、もちろんミレイだ。彼女の今日の衣装はハ赤の女王だ。
「ミレイ会長!」
 それも忌々しい。そう思いながらルルーシュは彼女をにらみつける。
「予定では俺は白ウサギだったはずですが?」
 今年のハロウィンはと付け加える。
「だって、ルルちゃんの女王様姿を見たいって言うのが、みんなの意見だったんだもの」
 それともアリスの方がよかった? といいながら、彼女は生徒会室の反対側を指さす。そこにはアリスの衣装を付けたシャーリーがいる。白ウサギはカレンに割り当てられたようだ。そして、スザクが白の騎士、リヴァルが赤の騎士、ニーナはハンプティ・ダンプティだろうか。
「……これで、俺の正体に気づくものがいたらどうするんですか?」
 無条件で本国に連れ戻されるぞ、と声を潜めると問いかける。
「大丈夫よ。家の学校であの方の顔を知っているのはごく一部だから」
 全員がマリアンヌの関係者だ。だから、何も心配はいらない。そういうものにしか入学を許可していないし……と彼女は続ける。
「そう言う問題じゃないでしょうが」
「そう言う問題よ」
 第一、一番の力だったのはそのマリアンヌだ……と彼女は笑う。
「……母さん……」
「ちなみに、ドレスを選んだのはナナちゃんだって」
 さらににこやかな口調でそう付け加えられて、どう反応をすればいいのか。
「母さんに、ナナリー、だと?」
 と言うことは、他のきょうだいたちにもばれているのではないか。いや、もっと厄介な相手にも、と考えるとめまいすら感じてしまう。
「写真だけ送ればいいって言う話だから」
「却下、です」
 またそれで二番目の兄にからかわれるのはごめんだ……とため息を吐いたときだ。
「そろそろ時間じゃないですか?」
 こう言いながら、スザクが駆け寄ってくる。
「あら、本当だわ」
 開始の合図をしないと。そう呟きながら彼女は意味ありげに目を細める。
「と言うことでお願いね、ルルちゃん」
 その表情のまま、こんなセリフを口にしてくれた。
「……開始の合図、ですか?」
 思わず逃げたくなったのは、こういう時の恒例だと言って、彼女がとんでもない言葉――声、と言った方が正しいのか――を決めてくれたのだ。それを自分にいえというのか……とルルーシュは頬をひきつらせる。
「……普通、そう言うことは女性がやるものでしょう」
 しかし、黙っていてもこのままでは相手の都合のよいように受け取られてしまいかねない。そう考えてこう言い返した。
「何を言っているの。ルルちゃんは白の女王じゃない」
 コロコロと笑いながらミレイが言ってくる。
「断固、拒否します」
 即座にこう言い返す。
「ダメよ。みんなが楽しみにしているんだから」
 第一、みんなのリクエストを無視するつもり? と彼女は笑う。しかし、あくまでも笑っているのは口元だけだ。
「それとも、ルルちゃんはそれを無視する気?」
 それでも生徒会役員なのかしら、と彼女は続ける。そんなことはないだろう、と思いながら、助けを求めるかのように周囲を見回す。だが、女性陣はもちろん、スザクやリヴァルにまで視線をそらされてしまった。
「諦めなさい」
 言葉とともにミレイが詰め寄ってくる。それだけではない。彼女の手にはマイクがあった。
「ほら、ルルちゃん」
 こう言いながら、彼女はスイッチを入れる。これでは、口論をすることも出来ない。
 羞恥に脳の血管がぶち切れそうな感覚を味わいながらも、渋々ルルーシュは口を開く。
「にゃぁ」
 唇から掠れた声がこぼれ落ちた。

 その後は大きな混乱はなかった、と思いたい。いや、ルルーシュ達が姿を見せた瞬間、一部の過激な生徒達が一斉に彼等に向かって押し寄せてきたのは事実だ。しかし、それをスザクとカレンが押しとどめてくれた。おかげで、ルルーシュ達にはケガ一つない。
「スザク君ってば、本当のルルちゃんの騎士みたいじゃない」
 ルルーシュを抱えながら移動している彼にミレイはそう言った。それは、彼女なりのほめ言葉なのだろう。もっとも、ブリタニア人ではないスザクにその意味がわかるかどうかは別問題だ。
 それに、とルルーシュは口を開く。
「どうして、連中が俺を追いかけてくるんでしょうね」
 きっと、彼女はその理由を知っているはずだ。そう思いながら問いかけた。
「……ルルちゃんを捕まえるとスペシャルなお菓子をもらえるらしい、って話がね。何か、広まっていたのよ」
 ハイヒールを履いているのに、よくもまぁ、これだけ走れるものだ。そう思いながらルルーシュは彼女をにらみつける。
「会長が広めたのではありませんか?」
 それに気が付いたのだろう。スザクがこう問いかけた。
「だって……全部作り終わった後で何かまた作ってたでしょ?」
 気付かれていたか、と感心していいのかどうか。
「残念ですが、昨日、カノンが来たので渡しました」
 既に本国に着いている頃だ。そう言えば彼女は納得したような表情を作る。
「やっぱり、可愛い妹さんの分だったんだ」
 可愛がっているものね、と笑いながら言う。
「……ルルーシュの妹?」
 スザクが首をかしげながら呟いている。
「後で説明をする」
 そう言えば、教えたことがなかったか。そう思いながらルルーシュはそう言った。
「それよりもこの状況を何とかしないと、いつまでも逃げ回っているわけにはいかないだろう?」
 スザクの体力だって無限ではない。まして、自分が足を引っ張っているようなものだし……とルルーシュは顔をしかめた。
「後一時間ぐらいなら走っていられるけど……」
 しかし、さりげなく人外発言をされたような気がするのは、自分の聞き間違いだろうか。
「でも、他の人は無理だよね」
 だが、カレンなら可能だろうか……と彼が真顔で付け加えたところから、間違いなくそう言われたのだとわかる。
「スザク君とルルちゃんの体力を足して二で割ると丁度いいかもしれないわね」
 感心しているのかどうなのかわからないセリフをミレイは返してきた。
「今はそれどころではないでしょう」
 第一、自分とスザクの体力はともかく、頭の中身まで二で割っては厄介なことにならないか。そう考えてしまうのは、無条件で実家の事情を思い出したからだろう。
「まぁ、そうなのよね」
 こうなったら、早々におやつの配布にうつった方がいいかもしれない。そうでなければ、皆、冷静さを取り戻さないだろうから。そう言って彼女はため息を吐いた。
「そもそも、誰のせいですか、誰の」
 ミレイが余計なことをいったからの混乱だろう、とルルーシュは叫ぶように言う。
「ルルーシュは人気者だから」
 それとも、人気があるのはルルーシュの作ったお菓子の方だろうか、とスザクはスザクで口にしてくれる。
「……スザク、いいんだな?」
 明日の弁当、と彼にだけ聞こえるように呟く。
「……ごめんなさい。僕が悪かったです」
 だから、お弁当を作ってください……と彼は直ぐに言い返してきた。運動部の助っ人をしている彼にしてみれば、食事は切実な問題なのだろう。
「本当に仲がいいわね、ルルちゃんとスザク君」
 お姉さん、妬けちゃうわ……とミレイが脇から口を挟んでくる。
「黙っていてください、会長!」
 あなたが口を出すと話がややこしくなる! とルルーシュは言い返そうとした。しかし、振動で口の中を噛んでしまったせいでそれも出来ない。
「ルルーシュ。とりあえず、生徒会室に行くまで黙ってた方がいいよ」
 スザクがそう言ってくる。痛みに耐えながら、ルルーシュは頷いて見せた。

 その後はなし崩し的にルルーシュ作――ラッピングは生徒会役員――というお菓子を配布して今回の祭りは終了になった。もっとも、代わりというように、女子生徒有志――一部男子生徒もいるらしい――の作ったお菓子が生徒会室の一角を占領していたが。
「と言うわけで、これはみんなの分だが……」
 着替え終わったルルーシュがそう言いながら籐かごを持ってくる。
「ルルちゃん!」
 即座に手を伸ばしてくるミレイを体全体で制止しながら、ルルーシュはさらに言葉を重ねた。
「ただし、普通のお菓子では面白くない、と思いましたので、外れを作りました」
 どれかはものすごく辛い。
 それでもいいなら、どうぞ……とルルーシュは微笑んだ。
「……そんなぁ……」
 酷い、と言ったのはリヴァルだ。
「……ひょっとして、ルルーシュって怒ってる?」
 ぼそっとカレンが呟くようにシャーリーに問いかけている。
「うん、怒っているよね、ルル」
 やっぱり、あれこれ負担を押しつけちゃった上にみんなではっちゃけちゃったから? とシャーリーはシャーリーで不安そうに口にした。
「大丈夫だよ。辛いのは一枚だけだから」
 スザクが苦笑と共に説明をしている。
「何で、知ってるんだ?」
「手伝ったから」
 その瞬間、ルルーシュ以外の全員の視線が彼に向けられた。
「でも、混ぜたらどれかわからないんだよね」
 だが、彼がその後に続けた言葉を耳にした瞬間、期待が失望へとすり替わる。全員がそうしたのは見事だとしか言いようがないのではないか。しかし、故意にそれをしたのであれば、スザクも何かに詰まるようなことがあったのかもしれないな……とルルーシュは心の中でそう呟く。
「と言うわけで、ルルーシュ。僕から選んでいい?」
 スザクがこう問いかけてくる。
「あぁ」
 それに頷いたときだ。
「ダメ! 絶対に却下」
 そう言いながら、ミレイが真っ先にかごの中からお菓子の袋を取り上げる。
「スザク君、本当は見分ける方法を知っているかもしれないでしょう?」
 それに、と彼女は続けた。
「ルルちゃんのことだもの。最悪、どれか一つだけがものすごく辛い、と言う可能性だってあるわ!」
 さすがは付き合いが長いだけはある。自分の性格をよくわかっている、とルルーシュは思う。同時に、詰めが甘い、とも。彼女がそうであるように、自分も彼女の性格をしっかりと把握しているのだ。
「……だそうだ、スザク」
「まぁ、仕方がないよ」
 確かに、疑われても仕方がない……と彼は頷く。
「と言うことで、僕は最後かな?」
 みんなが取ってからでいいよ、と続ける彼に他の面々も手を伸ばしてきた。そして次々とお菓子の袋を取り上げていく。その事実にルルーシュが内心ほくそ笑んでいたと誰も気付かなかった。

 その日、ミレイの部屋から悲鳴が上がったとかあがらなかったとか。
 しかし、本人が自分でしかも、真っ先に選んだ以上、文句を言えるはずもないのだろう。ルルーシュの元に抗議が来ることがなかった。

「しかし、本当にルルーシュの言ったとおりになるとは思わなかった」
 スザクが感心したように言う。
「会長の性格はいやと言うほど確認できていたからな。後は確率の問題だったが……推測が当たっていてよかったよ」
 ミレイの場合、必ず中央に近いところから取るのだ。だから、と告げれば、スザクが感心したようにルルーシュを見つめ返している。
「そうなんだ」
「そうなんだよ。まぁ、次に機会があれば注意してみていればいい」
 こう言いながら、ふっとあることを思いつく。
「スザク」
 今日ぐらいは構わないか。そう判断をしてその思いつきを実践に移すことにした。
「何?」
「Trick or treat.」
 さて、彼はどう出るか。ちょっと意地悪かもしれないが……と思いながらその顔を見つめる。
「……悪戯されてもいいけど……他のみんなに恨まれるのはごめんだから」
 ちょっと残念だけど、と付け加えながら、彼はジャージのポケットから袋を取り出した。
「日本のお菓子でも構わないよね?」
 それには色とりどりの小さな飴のようなものが入っている。
「これは?」
 差し出されたそれを受け取りながら聞き返す。
「金平糖ってお菓子。それしかないから、みんなには内緒にしていてね」
 来年はもう少し多めに入手しないと……と彼は呟く。
「あぁ。ありがとう」
 そう言ってルルーシュは笑う。
「で、僕も同じ事を言ってもいいの?」
 それとも、生徒会室で貰った分がそうなのか……と彼が言外に問いかけてくる。
「ちゃんとお前の分は別にある」
 安心しろとルルーシュが笑う。
「お前は特別だからな」
 この言葉に、スザクは一瞬、驚いたような表情を作る。
「うん、ありがとう」
 だが、直ぐに嬉しそうな表情で言葉を口にした。この表情はナナリーのそれと同じ重さを持っているような気がするのは錯覚だろうか。一瞬悩む。だが、見ていて同じくらい幸せになるのは否定できない事実だ。だから構わないだろう。ルルーシュはそう結論づけた。





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