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恋は戦争?

ユーディアライト


 澤崎の身柄確保のニュースが電波に乗ると同時に、神楽耶から『相談したいことがある』という連絡があった。
 それだけではない。
 桐原からも『話したいことがある』とスザクの元に話が来たのだ。
「……ルルーシュ、どうしよう……」
 後始末でいろいろと忙しいときに、厄介な。そう思いながらも確認を求める。
「無視するわけにはいかないだろうな」
 ルルーシュは苦笑とともにこう言う。
「とりあえず、二人一緒でいいなら、と返事をしておけ」
 神楽耶に先に話して許可をもらってから桐原に返事をするように、と彼は続けた。
「わかっている」
 いきなり同席させるのはまずいと言うことぐらい、とスザクは言い返す。一応、自分は知らないことになっているのだ。だから、と心の中で付け加えた。
「ついでにつじつま合わせをしておけばいいんだろう?」
 たまたま連絡が来たとか何とか、とスザクは言う。
「そうだな。それでごまかされてくれるかどうかは別問題だが」
 スザク一人では、とルルーシュは口にする。
「悪かったな」
 どうせ、自分は嘘やごまかしが苦手だよ。スザクはそう言って唇をとがらせる。
「そう言うところも気に入っているがな、俺は」
 自分は嘘ばかりついているから、とルルーシュが笑う。
「ルルーシュは指揮官だから……どんなときでも余裕がある態度を崩せないからだろう?」
 ポーカーフェイスというんだっけ? とスザクは首をかしげる。
「それは仕方がないことじゃん。クロヴィス殿下みたいに、何かあるたびに騒がれるよりは、どっしりと構えていてくれた方が前線にいても安心できるし」
 だから、嘘というのとは違うのではないか。スザクはそう言った。
「そう言ってくれると嬉しいが……」
 あまり、盲信しないで欲しい。言外に彼はそう続ける。
「僕もナナリーも、ルルーシュのことをすぐそばで見てきたんだよ?」
 何を言っているのか、とスザクは言い返す。
「そう言うところがかっこいいって、ナナリーと意見が一致してるんだし」
 だから、ルルーシュはそのままでいい。スザクはそう続けた。
「第一、ルルーシュのことをどうこう言うならマリアンヌさんやシュナイゼル殿下はどうすればいいわけ?」
 シャルルも含めて、と聞き返す。
「ロールケーキはどうでもいいが……母さんと異母兄上と同じと言われるなら、嬉しいか」
 わかった、とルルーシュはうなずいてみせる。
「だからさ。一緒にいてよ」
 スザクはさりげなく本音を口にした。
「そうだな。お前がそばにいてくれると言ってくれている間はそばにいてやる」
 いつまでかはわからないが、と彼は付け加える。どうやら、未だにルルーシュはスザクの気持ちを信じてくれていないらしい。それがおもしろくない。
「ずっとに決まっているじゃん」
 即座にこう断言する。
「わかってる」
 苦笑を浮かべると、ルルーシュは手を上げた。そして、スザクの頭にそっと乗せる。
「だから、お前はそのままでいろ」
 そして、こうささやいてきた。
「ともかく、だ」
 話を元に戻そう。表情を引き締めながらルルーシュはそう言う。それだけではない。せっかくなでていてくれた手も引っ込められてしまった。
「要注意なのは桐原公の方か?」
 そして、代わりにこう問いかけられる。
「どうだろう。神楽耶もまだ、何か隠しているような気がするんだよね」
 スザクはそう言い返す。
「そうか」
 ルルーシュは何かを考え込むような表情を作った。
「藤堂さんなら、何か知っているかな?」
 あるいは四聖剣だろうか。
「聞いてみるか」
 素直に教えてくれるとは思えない。だが、確認せずに判断ミスをする訳にもいかないだろう。ルルーシュはそう言った。
「そうだね。あぁ、ルルーシュの手料理を並べれば朝比奈さんあたりは口を割るかも」
 自分が食べてみせればいい。スザクはそう言って笑った。
「でも、ルルーシュにしわ寄せが行くか」
 料理を作らなければいけないから、と少しだけ首をひねりながら付け加える。
「そのくらいは何と言うこともないな」
 だが、ルルーシュはあっさりとそう言った。
「気分転換にちょうどいい」
 彼はそう付け加える。
「執務室にこもっているだけでは人々がどう考えているのか、わからないしな」
 と言うことは、買い物にも自分で行くつもりなのだろうか。
「荷物持ちにつきあうよ」
 ともかく、とスザクは笑う。
「そうだな。お前よりも食べると考えておかないとだめだろうし」
 ルルーシュはそう言ってうなずく。
「何がいいだろうな」
 こう付け加えた彼の声がどこか弾んでいるような気がするのは、錯覚ではないだろう。
「藤堂さんは肉より魚とか野菜かな?」
 朝比奈は無条件で肉だろうけど、とスザクは口にする。
「でも、和食なら何でもいいんじゃないかな」
「そうか」
 ならば、作りたいものを作るか。ルルーシュはそう言ってうなずく。
「楽しみだな」
 久々にあれこれとルルーシュの手料理を食べられるかもしれない。そう考えれば、自然と頬が緩む。
「これは、がんばらないといけないか?」
 そんなスザクの表情に、ルルーシュはこう呟いていた。

 神楽耶と行ったときよりもさらにお重の数が多い。さすがにスザクだけでは運びきれず、今回はジェレミアも同行していた。
「また、何かありましたか?」
 そんな彼らの訪問に、藤堂がこう問いかけてくる。
「話を聞いてもらいたくて。ルルーシュは新作の味見をして欲しいそうです」
 スザクは即座にこう言う。
「桐原さんとか神楽耶の愚痴につきあってくれそうなのは藤堂さんぐらいなので」
 ついでに、適切な突っ込みを入れてくれるのも、とスザクは続ける。
「……そう言う問題ではないと思うが……」
 複雑な表情を作りながら藤堂は言い返してきた。
「そう言う問題です。あの二人の本性を知っている人間でないとだめですから」
 さすがに、ルルーシュに全部ばらすわけにはいかない。それでは、日本人のイメージが悪化する可能性がある。スザクは声を潜めるとそう続ける。
「朝比奈さんぐらい、表裏がないと楽なんですが」
 この言葉とともに視線を移動させた。同じように藤堂も顔を朝比奈達の方へと向ける。そこでは、ルルーシュが持ってきたお重の料理に喜々として箸を伸ばしている当人の姿があった。
「……あいつは」
 その光景に、藤堂は額を抑える。
「朝比奈さん。僕と藤堂さんの分は残しておいてくださいよ!」
 とりあえず、とスザクは声をかけた。
「スザク君はいつでも食べられるんだろう? 藤堂さんの分はともかく、君の分は必要ないじゃないか!」
 山盛りに料理をのせたお皿を手に朝比奈が言い返して来る。
「それとこれは別問題です!」
 ルルーシュの手料理はともかく、弁当は滅多に食べられないのだ。ここで引き下がるわけにはいかない。
「第一、政庁だと神楽耶の手料理が待っているんだぞ! そんなこと言うなら、朝比奈さんが神楽耶の料理を食べればいいんだ」
 量が食べたいなら、と続ける。
「醤油を山ほどかければ、十分食べられるよ」
 もっとも、それは自分に食べさせている分だけかもしれない。そんな疑念が最近わいてきている。
「いやだよ〜! 料理はおいしい方がいいし」
 あれこれと考えているスザクの耳に、朝比奈のこんなセリフが届いた。その瞬間、殺意がわいたのは言うまでもない。
「……藤堂さん、とりあえず、朝比奈さんをぶん殴ってもいいですか?」
 そうしないと、話が終わる前にお重が空になりかねない。
「仙波、卜部……頼む」
 藤堂も同じ危惧を抱いていたのか。年長組に朝比奈の拘束を命じた。
「そんなぁ!」
「お前がいると、話が進まん。おとなしくしていろ」
 ため息とともに藤堂がそう言う。
「ルルーシュ殿下にも失礼だろうが!」
 さらに彼はこう付け加える。
「俺は気にしないが? まぁ、醤油をかけられるのは気に入らないが」
 それにルルーシュがこう言い返した。
「朝比奈!」
「貴様は、少しは礼儀を覚えろ!」
 その瞬間、他のメンバーから朝比奈に叱咤の声が投げつけられる。
「だって、醤油をかけるともっとうまくなるんですよ!」
 負けじと朝比奈が言い返す。
「……四聖剣抜きで藤堂さんに相談を持ちかけるんだった」
 スザクはそう呟く。だが、今更後悔しても後の祭りだろう。
「まぁ、いいけどね」
 ルルーシュが満足そうだから。ため息とともにそう呟いた。



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