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恋は戦争?

紫村濃



 派手に動いたせいか、かなりの敵がこちらめがけて襲いかかってきた。
 もっとも、相手のナイトメアフレームの動きはグラスゴーと比べものにならないくらい遅い。これでどうやってブリタニアに勝つつもりだったのだろうか。
 だから奇襲だったのか、と納得する。
「ルルーシュにはばれてたけど」
 万全の準備を整えてブリタニアに帰ってわざと隙を作って見せた。それに引っかかるような連中だ。勝ち目なんてないだろうに。
「まぁ、さっさと片付けてジェレミアさんに合流しよう」
 クロヴィスの安全を確保しながらルルーシュの到着を待つのが一番だろう。
「籠城戦になるのかな」
 政庁なら問題ないだろうが、と思いつつ、目の前の機体にスラッシュハーケンをたたき込む。
『クルルギ卿?』
「後は放っておいて政庁に向かいます」
 呼びかけてきた相手にそう言い返すと、スザクはランスロットの方向を変える。
『わかりました』
「先に行ってください」
 露払いをお願いします、とたたみかければ彼らも反論できないらしい。
『無理だと思ったときには連絡を。すぐに交代します』
「その時はお願いします」
 こう言い返すと、スザクはまた周囲の警戒へと戻る。
 センサーには味方の機体しか表示されていない。と言うことは、先ほどの連中がとりあえずラストだったと言うことか。
 そんなことを考えながらもランスロットを後退させていく。
「……後ろ向きだと、やっぱり細かな瓦礫を避けるのは難しいよな」
 そのあたりは訓練で何とかなるものなのだろうか。後でジェレミアに聞いてみよう。
「ルルーシュの好きなケーキ屋さんが無事だといいなぁ」
 そんなことを考えていても、周囲の惨状は目に飛び込んでくる。だからだろうか。無意識のうちにこう呟いていた。

 政庁まではどうやら敵もたどり着けなかったらしい。
「クルルギ、よく帰った」
 ほっとしたような表情でジェレミアが声をかけてくる。
「遅くなりました。ルルーシュは、旗艦の不調でもう少し時間がかかるかと……」
 苦笑とともにそう報告をした。
「あの男の設計だからな」
 それにジェレミアはため息とともに言葉を返してくる。
「自分で作らせればまだしも、他人が作ればそうなるだろう」
 ロイドの理論が他の人間に理解できるはずがない。彼はそう続ける。
「でも、ルルーシュを危険にさらすことはないですよ、さすがに」
「それだけは信用している」
 スザクの言葉にジェレミアも頷いて見せた。
「そうでなければ、とっくにたたき出している」
 うるさいだけだ、と彼は付け加える。
「……うるさいのは否定しませんけど……」
 もう少し落ち着きがあれば少しは尊敬できるのに、と心の中だけで呟いた。
「ルルーシュさまのことだ。いざとなれば別の方法を使われるだろう」
 だから、彼のことは心配いらない。心配なのはむしろロイドの暴走の方だ、と彼は続ける。それにスザクも同意だ。
「セシルさんがいるから、いざというときは大丈夫だと思いますが」
 彼女ならばきっとロイドを止めてくれるだろう。
「クルーミー嬢か。確かに、あれの面倒をよく見てくれているな」
 それならば大丈夫だろうか、とジェレミアは呟く。
「……ちょっと、あんた達……」
 その時だ。じれたような声が耳に届いた。
「何で無視しているのよ!」
 あえて無視しているんだが、とスザクは心の中で呟く。
「あぁ、そうだったな。お前の従妹姫は保護してある。安心しろ」
 彼女を人質に取られると別の意味で厄介なことになるだろう、とジェレミアはそう言ってくる。
「それはよかったです。あいつに暴走されると後が怖いので」
 ここにいればコントロールできる、とスザクはにこやかに言い返す。
「と言うことで、そろそろ戻った方がいいでしょうか」
 警備に、と問いかけた。
「心配はいらぬと思うが……ランスロットが前線に出ているだけで威嚇にはなるだろうな」
 だが、大丈夫か? とジェレミアはスザクを見つめてくる。
「待機と同じですから」
 そのくらいならばいつものことだし、と笑った。
「ならば頼もう。クロヴィス殿下も安心されるだろうしな」
 ジェレミアがこういったときだ。
「無視するなって、言ってるでしょ!」
 我慢しきれなくなったのか。とうとうカレンが実力行使に出てきた。
「……いたんだ」
 ため息混じりにそう言ってみる。
「あんたねぇ!」
「それで、何の用?」
 怒鳴ろうとするカレンよりも先にこう問いかけた。
「言っておくけど、名誉ブリタニア人でもない君たちがナイトメアフレームに触れた瞬間、逮捕投獄だからね?」
 出撃なんて当然却下だよ、と続ける。
「……あんたって、やな奴……」
「最高のほめ言葉、ありがとう」
 そう言い返しておく。
「でも、僕よりも神楽耶の方がいい性格をしてるからね」
 がんばってね、と意味もなく付け加えるときびすを返す。
「さて、と。ルルーシュが戻ってくる前に政庁の周囲を掃除しておかないとね」
 にこやかにそう告げると歩き出す。
「私はクロヴィス殿下のおそばにいる」
 クロヴィスのそばに彼がいてくれるなら何も心配はいらない。ついでに神楽耶達も面倒を見てくれるだろう。
 だから、自分は戦うことだけを考えればいい。
「はい。お願いします」
 満面の笑みとともにそう告げる。
「任せておけ。ルルーシュさまがおいでになるまで死守をして見せよう」
「当然ですね」
 ついでに、コーネリア達が動きやすいように目立っておくべきか。スザクは心の中でそう呟く。
「どちらにしろ、民衆はこちらの味方のようだからな。後は早々に終わらせるだけだろうね」
 時間の問題だろうが、とジェレミアは言う。
「ルルーシュの提案をクロヴィス殿下が聞き入れてくれたから、ですね」
 それは、と笑いながら言葉を返す。
「そういうことだ」
 ジェレミアもそう言って頷く。
「じゃ、ルルーシュのためにがんばってきます」
 このセリフとともにスザクは体の向きを変えた。



13.09.24 up
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