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恋は戦争?

火色



 あれだけ準備を整えていたというのにどうやらテロリストの侵入を許してしまったらしい。あるいは、入国審査をしているものの中にあちら側の関係者がいたのだろうか。
「ともかく、ルルーシュとクロヴィス殿下の周囲はしっかりと固めないと」
 スザクはそう呟く。
「姫様はいいのか?」
 即座にダールトンがそう問いかけてくる。
「コーネリア殿下はお強いですから。ルルーシュとクロヴィス殿下の体力のなさを考えれば比較になりません」
 彼らの場合、抵抗するので精一杯だ。言外にそう付け加えた。
「なるほど。確かにそう言う意味では姫様相手に心配無用だな」
「何よりも将軍達がおられるでしょう?」
 コーネリアのそばには、と問いかける。
「なら、僕たちが心配することはないかと」
 彼らがいればコーネリアには指一本触れさせないに決まっている。それよりもルルーシュたちを優先するのは当然ではないか。
「言われれば納得するしかないな」
 ダールトンがにやりと笑うとそう言った。
「だが、クロヴィス殿下は心配いらぬと思うが……」
「あの方は騎士をお持ちではありませんから」
 だから、そばにいるのは騎士候とはいえ心配なのだ。ルルーシュがそう言っていた。
「なるほど。それについては姫様から一言言っていただこう」
「お願いします。ルルーシュには僕とジェレミア卿がついてますから」
 絶対に手出しはさせない。スザクはそう言って笑った。
「その表情を見る限り、大丈夫そうだな」
 ダールトンはそう言って頷く。
「当然です。ナナリーとも約束しましたし……それに」
「それに?」
「ルルーシュに傷が残ったら、マリアンヌさんにまず殺されます」
 スザクのこの言葉にダールトンは一瞬目を見開く。
「あの方はお前を気に入っているから殺されはせんだろうが……しごかれるだろうな」
「同じ意味です!」
 スザクの主張に彼は笑い声を上げた。

 しかし、だ。
「ここまで計画通りだとあきれるのを通り越して笑うしかないな」
 目の前の光景を見つめながらルルーシュはそう言った。
「確かに、そうだね」
 そんな彼を背中にかばいながらスザクもため息をつく。
「こっちがこの状況だと言うことは、向こうもなのかな?」
「可能性は高いが……だが、あちらの方が護衛は多いからな」
 どちらが楽と考えるか。それは自明の理だろう。ルルーシュはそう付け加える。
「だから、多分こちらに来るだろうと思っていたよ」
 平然とした声音で彼は告げた。
「ルルーシュが計画していたなら、それでいい」
 スザクはそう言って笑う。
「ジェレミアさんがすぐに駆けつけてきてくれるだろうち……それまでルルーシュを守ればいいんだろう?」
 そう言いながら刀の柄を握りしめる。
「相手の命は?」
「一人は残しておけ」
「了解」
 ルルーシュの言葉にスザクはそう言い返す。
「では、遠慮なく」
 言葉とともにスザクは行動を起こした。

 予想外に敵が多い。
 スザクはその事実に忌ま忌ましさすら覚え始めていた。
「スザク!」
 そんな彼の背中にルルーシュの声が届く。
「僕は大丈夫だから、ルルーシュはそこから動かないで」  スザクはそう言い返すと、襲いかかってきた相手をたたきのめす。
 もうすでに血糊で刀は使い物にならない。それでもルルーシュを守るために出来ることをするだけだ、と自分に言い聞かせる。
 同時に、何故、ジェレミア達が来ないのか。それが不思議だ。
 少なくともジェレミアならばどのような厄介事が待っていようと、全てを排除してこの場に駆けつけてくるはず。
 逆に駆けつけてこられないような厄介事が起きていると言うことだ。
「……ランスロットを持ってくるんだった……」
 そうすれば一発で片が付いたのに、と心の中で呟く。
 いっそ、危険を承知でルルーシュを抱えて逃げ出すべきか。そうすれば、事態が好転する可能性はある。
 そんなことを考えながら周囲を見回す。
「あそこなら……」
 目に付いたのは木箱が積み上げられている壁際だ。あれを利用できないだろうか。
 もちろん、事前に罠が仕掛けられていた可能性がないわけではない。だが、と思っていたときだ。
「スザク!」
 自分の視線から何かを感じ取ったのだろう。ルルーシュが声をかけてくる。
「負ぶさって!」
 そう言うと彼はすぐにスザクの背中に体重を預けてくれた。
 スザクはそのまま駆け出す。
 もちろん、連中がその行動を見逃すはずはない。即座に攻撃を仕掛けてきた。
 もっとも、それはルルーシュの体重が増えても予測していれば避けられる程度のものだ。実際、マリアンヌさんの訓練の方がえげつなかったし。
 そんなことを考えながら、目につけていた木箱へと駆け寄る。その瞬間の連中の表情から、自分の予想が当たっていrとわかった。
 もちろんこちらもそれを使うはずがない。
 その手前にあるエアコンの室外機を踏み台にして木箱の後ろの壁へと飛び移る。さらにその脇のビルの窓へと移動しようとしたときだ。
「……サザーランドまで持ち出したか」
 屋上から数機のサザーランドが下りてくるのを見て、ルルーシュが嫌そうに呟く。
「どうする?」
 一人なら何とか出来る自信はあるが、ルルーシュを無傷でとなると難しい。
 どうするか。
 ナナリーに『ルルーシュを守る』と約束したのに、とスザクは唇をかむ。
「スザク、俺のことは無視していいから」
 ルルーシュがそうささやいてくる。
「できるわけないよ。どんなときでも、ルルーシュは僕より後に死んじゃだめなんだ」
「お前……」
 スザクの言葉にルルーシュが絶句した。
「ルルーシュが先に死んだら、追いかけるからね」
 さらに追い打ちをかけるようにスザクはこう続ける。
「……バカだな、お前は」
 ルルーシュがため息とともに言葉を唇に載せた。
「ならば、最後まであがいて見せろ」
 そしてこう続ける。
「Yes.Your Highness」
 言葉とともにスザクは眼下にいる者達をにらみつけた。
 そのまま次の行動に移ろうとする。
 しかし、だ。  上空から影が落ちてきた。そう思った次の瞬間、二人の前に一機のナイトメアフレームが現れる。
「嘘!」
 これはナイト・オブ・ワンの専用機だったはず。
「と言うことは、いるのか?」
 ルルーシュが周囲を見回し始めた。それが誰を探しての行動なのか、確認しなくてもわかる。どうやら当面の安全は確保されているようだし、とスザクも同じように周囲を見回す。
「ルルーシュ、あそこ……」
 何かそのシルエットだけで正体がわかる人影を見つけてスザクは指さした。
「我が子に手を出す愚か者達よ。今すぐこの世から消え去るがよい!」
 高らかに皇帝陛下が宣言してくださる。次の瞬間、ルルーシュが頭を抱えたのがわかった。


14.02.21 up
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