「……流石の僕も、直ぐにはフォローできないかもしれないなぁ」
 ルルーシュの手料理を食べながらV.V.がこういう。
「でも、黙っているわけにもいかないしねぇ」
 どうしようか、と彼は首をかしげた。
「それは、俺が相談したいことです」
 流石に自分では色々と差し障りが出てくる部分があるから、とルルーシュが言い返す。
「君も、色々と難しい立場だしね」
 全部、シャルルが悪いのだろうけど……と続けた。
「それに関しては、諦めています」
 あの二人の子供として生まれた以上、とルルーシュは苦笑を返す。
「とりあえず、母さんが本気でブリタニアと敵対しないようにすることが俺の役目でしょうし」
 他にもやらなければいけないことがあるが、と彼は続けた。
「そうだね。マリアンヌの機嫌を取れるのは君達ぐらいだ」
 自分では逆効果になりかねないし、C.C.では煽ってくれるかもしれない。言葉とともにV.V.は頷く。
「とりあえず、根回しはしておいてあげるよ。後は……誰がそんな奴をシャルルに押しつけたかも確認しておくね」
 それについての報告はちゃんと届けるから、とV.V.は頷く。
「と言うわけで、デザートのリクエストしていいかな?」
 このくらいはワガママを言ってもいいよね、と微笑む様子は、見た目と相まってかわいらしい。しかし、中身はシャルルと同じだけ年齢を重ねているんだよな……とスザクはため息をついた。
 もっとも、それ以上に年齢を重ねている誰かさんを知っているから、それに比べたらましなのかもしれないが。
「何がよろしいのですか?」
「難しいのじゃないよ。アイスがあるなら、リンゴのキャラメル煮を添えて欲しいなって思っただけ」
 ルルーシュのことだ。そちらは常備しているのだろう? 首をかしげながら彼は付け加えた。
 そうすると、ナナリーの面影が感じられる。
「……ナナリーが陛下似だって言うのも、V.V.様を見ていると納得できるけど……」
 二人とも、中身は彼に似ないでくれてよかったかもしれない。そんな呟きを漏らしてしまう。
「何を言っているのかな?」
 しっかりとそれを聞きつけたのか。V.V.が少しだけ眉根を寄せながら問いかけてきた。
「陛下のように、あちらのこちらをつまみ食いする性格でなくてよかったな、と思っただけです」
 二人とも、本気の相手以外には身持ちが堅いようだし……と素直に薄情をする。
「あぁ、そう言う意味。それなら同意だね」
 シャルルもどこで間違えたのかなぁ……とV.V.はため息をつく。
「皇帝である以上、本当に必要な相手なら複数の妃を持っていても当然だけど……一度つまみ食いした後で放っておかれる女性はかわいそうだよね」
 さっさと他の誰かに降嫁させればいいのに、と彼は付け加える。
「できれば、そう言う行為をしてから一年以上間を開けてだといいですけどね」
 もし、降嫁先で子供が出来た場合、厄介なことになるから……とルルーシュは言う。
「そうだね。まぁ、そのあたりはシャルルだって考えると思うけどね」
 もっとも、それが現実になるかどうかはわからないが……とV.V.は苦笑を浮かべる。
「とりあえず、リクエスト頂いたものは用意できますよ。キャラメル煮は温かい方がいいですか?」
 さりげなくルルーシュは確認をした。
「そうだね。熱い方がいいな」
 V.V.はそう言ってルルーシュを見上げる。
「わかりました。少し待っていてください」
 そう言うと、ルルーシュはキッチンへと歩いていく。
「……とりあえず、大丈夫そうだね」
 ルルーシュは、冷静のようだ……とV.V.が呟く。
「と言っても、あのこの事だから隠しているだけ、と言う可能性もあるか」
 そのあたりはスザクがフォローしてくれればいいけど……と言いながら視線を向けられる。
「心しておきます」
 そんな彼に、スザクはこう言い返す。と言うよりも、それ以外、言いようがない。
「頼むよ」
 自分は傍にいられないから、と彼は笑った。
 まるでタイミングを見計らったかのようにルルーシュが顔を出す。
「何の話ですか?」
 手にお皿を持ちながらこう問いかけてくる。
「彼にちょっと頼み事をしていただけだよ」
 体力勝負になりそうだから、とV.V.は笑いながら言い返す。
「あぁ、そう言うことでしたら確かにスザクが適任ですね」
 体力勝負であれば、自分はまったく役に立たない……と苦笑を浮かべながら、お皿をテーブルへと置く。
「わぁ。やっぱり、ルルーシュが作ってくれたのが一番おいしそうだ」
 その瞬間、V.V.はこう言って微笑む。本当に、見た目だけはナナリーに似てかわいらしいよな……と繰り返してしまうスザクだった。

 V.V.が内密に動いてくれているからと行って、自分たちも何もしないわけにはいかない。
「とりあえず、誰が後見なのかを調べるしかないだろうな」
 ルルーシュは呟くようにこういう。
「そうだね。それからその関係者を洗っていく?」
 なんか、ものすごく引っかかるような気がするから、とスザクは聞き返す。
「あぁ……しかし、これならばジノを向こうに置いてくるんじゃなかったな」
 こういう事に関しては、彼は得意そうだ。ルルーシュはそう付け加える。
「やはり、七年も本国を離れていたのは失敗だったか……」
「ロイドさんも、それに関してはまったく宛にならないしね」
 スザクもそう言って苦笑を浮かべる。
「……ラウンズのみんなも疎そうだし……詳しいとしたら、誰かな?」
 自分たちの味方をしてくれそうな人で、とさらに付け加えた。
「カノンあたりが詳しそうだが……忙しいだろうしな」
 だが、とルルーシュは首をかしげる。
「差し入れを持っていってついでに話を聞くぐらいなら可能か?」
 甘いものなら喜ぶだろう。そうでなかったとしても、お茶請けぐらいには使ってもらえるのではないか。ルルーシュは呟くようにそう付け加えた。
「確か、カノンさんも甘いものは好きだと聞いたよ。ロイドさんとプリンを奪い合っているとか……」
 あくまでもセシルの話だが……とスザクは付け加える。
「なら、信頼できそうだな」
 そう言うことに関しては彼女の言葉が間違っていたことはない。そう言ってルルーシュは頷いた。
 後はこっそりと連絡を取るだけか、と彼は笑う。
「兄上にばれては大騒ぎになるからな」
 そうなれば、カノンの口には入らないだろう……と続ける。
「あぁ……シュナイゼル殿下なら、やりそう。ついでにオデュッセウス殿下とかギネヴィア殿下とか、クロヴィス殿下も乱入してくるよ?」
 そんなことで争う皇族は見たくないな、と呟いてしまう。
「……いくら何でも、それはないだろう?」
「わからないよ。ルルーシュの手作りだし」
 それだけでも魅力的だと思う人がいるはずだ。その上、舌がとろけそうなほどおいしい。取り合いになったとしてもおかしくはないだろう。スザクはそう主張をする。
「でなければ、あの魔女はともかく、V.V.様がつれるわけはないと思うけど?」
 V.V.はかなり舌が肥えているはずだ。さらにそう付け加えれば、彼は納得したらしい。
「そうだな。俺の料理の腕に関しては認めよう」
 しかし、それで兄弟げんかが起きるものだろうか。彼はそう言って首をかしげた。
「だって、みなさん、ルルーシュ大好きじゃない」
 それだけでも取り合いの理由になるのではないか。スザクはさらに言葉を重ねる。
「最近、あまり一緒にお茶をしていないしさ」
 日本に戻っていたから、と付け加えた。
「……そこまで言われると、あり得ない話しでもないような気がしてくるから怖いな」
 まぁ、内緒にしていればいいだけのことだ……とルルーシュは呟く。
「なら、こっそりとカノンさんに会ってきた方がいいかな?」
 僕が、とスザクは問いかけた。
「電話だとうるさいでしょ?」
 ばれたときに、と言葉を重ねる。
「そうだな。お前ならばばれないように声をかけることも可能か」
 頼む、とルルーシュは言う。
「任せておいて」
 そう言うことは得意だ、とスザクは笑い返す。
「ちなみに、リクエストはその場で言われたもの以外受け付けない……と言っておけ」
 シュナイゼルにばれたとき対策用だ。そう言われて頷いて見せた。

 翌日には、しっかりとカノンと話を終わらせることが出来た。と言うよりも、ルルーシュの手作りお菓子の話をした瞬間、彼が無条件でこちらの知りたいことを調べてくれると言ったのだ。
「やっぱり、ルルーシュの手作りだからだろうな」
 確かにおいしいし、と呟きながら目の前のお菓子に手を伸ばす。
 現在の所、これを無条件で口に出来るのは自分ぐらいだ。それは幼なじみだからだろうか。それとも、と思いつつ、また一つ口の中に放り込んだ。

 カノンの優秀さを知らされたのは、そのまた翌日のことだった。





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