時間は少し遡る。 「そう言うことですから、兄上」 構いませんね? とルルーシュはシュナイゼルに問いかけた。 「仕方がないね。自国だけで暗躍しているだけならば見逃したが、ブリタニアまで手を伸ばしてくれるとなるとそういうわけにもいかない」 こうなれば、徹底的に叩きつぶさせて貰おう。彼はそう続ける。 「だが、あまり大々的に作戦を行うのはまずいよ?」 こちらとしても色々と問題が出てきている状況だ。この言葉にルルーシュも頷き返す。 「わかっています。ですから、メインは俺とスザクで……後は、エリア11にいるジノを借りようかと思っています」 中華連邦に関しては既にV.V.達が根回しをしている。反乱分子との話し合いが終われば、エリア11にいる兵力だけで十分だろう。 「すまないね」 ため息とともにシュナイゼルはこういった。 「本当であれば、軍の半分をつけてやりたいところだが……流石に、ね」 そこまで大々的な行動を起こせば、中華連邦だけではなくEUも動くだろう。今のブリタニアにそれを支えきれるだけの力がないとは言わない。だが、獅子身中の虫を飼っていてはどこで破綻をするかわからない。 だから、早々に叩きつぶす必要があるだろう。 それを終わらせるまでは、大々的な作戦を行うわけにはいかない。 シュナイゼルはさらに言葉を重ねた。 「だから、私に出来ることは、そうだね。もう一人ぐらい、ラウンズを同行させるくらいかな?」 既にエリア11に向かっているはずだ、と彼は笑う。 「誰でしょうか」 「心配しなくていい。エニアグラムだよ」 彼女であれば、信頼できるだろう? と彼は続けた。 「確かに」 しかもジノもアーニャも彼女には頭が上がらない。その点でも申し分のない相手だ。 「では、お借りします」 ふっと微笑みながら、ルルーシュは言葉を返す。 「陛下には事後承諾だが、君のためならば何も言わないだろうしね」 というよりも、現状では言えないだろう。シュナイゼルはそう言って苦笑を浮かべる。 「V.V.様が動いておられますからね」 そちらの方が怖いかもしれないが、とルルーシュはため息をつく。 「否定は出来ないね」 また仕事が増えるかな、と笑うシュナイゼルの声が虚ろに響いていた。 根回しが終わっているとはいえ、出撃となるとそれなりの準備が必要だ。その準備の指示を出していれば、途中から妙な噂が耳に届くようになった。 「いったい、何をやらかしたんだ、あの人達は」 ルルーシュは思わずこう呟いてしまう。 「聞きたいの?」 それにスザクが即座に聞き返してくる。どうやら、彼の元にはあれこれ情報が集まっているようだ。しかし、その票呪おから判断をして、聞かない方がいいような気がする。 「いや、やめておく。それについて考えている暇はない」 その位なら、準備を進める……と言い返す。 「そうだね」 知らない方が平和だよ、とスザクが深いため息とともに付け加える。 「そう、なのか?」 「なんか、マリアンヌさんが、本気全開らしいよ」 さらに、C.C.がとても楽しそうだと言っていた……と彼は続けた。 「ちなみに、情報源は朝比奈さんね」 彼から神楽耶経由で報告が来たんだよね、と言われて、ルルーシュも苦笑を禁じ得ない。 「そうだな……移動時間に読むから、後で転送してくれ」 状況によってはシュナイゼルにも転送しなければいけないような気がするが、と心の中で付け加える。 「でも、後で頭痛を起こしても責任知らないよ?」 読むだけで頭が痛くなるないようだと思うから、とスザクは断言をした。 「まぁ、想像はしていたがな」 というよりも、この程度ですんでよかったと言うべきか。 「とりあえず、耐性のない人には内緒にしておくのがいいんじゃないかな?」 シュナイゼルは大丈夫かもしれないが、他の者達はどうだろうか……と彼は続ける。 「これ以上、国政が滞るのは……」 「否定は出来ないな」 本当、さっさとあれが引退してくれれば話は早いのに、とルルーシュはため息をつく。 「まぁ、今は出撃準備を急ごうよ。うまくいけば、久々にナナリーと会えるかも」 スザクがさりげなく付け加えてくる。それだけで機嫌が浮上する自分もどうなのだろうか、そう思わずにはいられない。 だが、考えてみれば誰かさんが邪魔をしてくれたおかげでもう何ヶ月も顔を合わせていないのだ。 「そうだな」 確かにそんな風に楽しいことを考えている方が精神的にもいいのだろう。 「あのロールケーキの顔はもう二度と見なくても構わないが、ナナリーには会いたい」 だから、作業を急がせるか。ルルーシュはそう言って笑った。 そして、二日後。ルルーシュはアヴァロンでエリア11へと向かった。もちろん、スザクも同行している。 「ノネットさんは向こうで合流するって。ジノが既に頭を抱えているって、アーニャから」 写真付きでメールが来た、と彼はさらに言葉を重ねた。 「まぁ、それに関しては諦めて貰おう」 人身御供さえだしておけば、ノネットもマリアンヌも大人しいに違いない。 「問題は、彼のことでカレンから文句が来ていることかな」 しかし、これは予想外だった。 「あいつ、何をやらかしたんだ?」 多少のことで怒るようなカレンではない、と思っていたのだが……と心の中で呟きながら問いかける。 「顔を見るたびに口説いてくるんだって」 毎回断られているのに、とスザクは続けた。 「……あいつは……」 人がいない間にそんなことをしていたのか……とため息をつく。 「まぁ、彼の気持ちもわからなくないけど……」 苦笑と共にスザクがこういう。 「でも、カレンの気持ちも考えて欲しいよね」 本気で嫌がっているみたいだから、と付け加える彼は、ひょっとして怒っているのだろうか。 「……スザク?」 「神楽耶にイヤミを言われるのは僕なんだよね」 彼女のイヤミは結構効くんだ、と付け加える。 「そう言うことか」 それならば怒っても仕方がないことだな、とルルーシュは思う。 「顔を見たら、好きなだけ殴ってやれ」 もっとも、作戦にししょうがでない程度に、と続ける。 「わかっているよ。出会い頭の一発ぐらいだろうな。無条件で決められるのは」 それにスザクはこう言い返してきた。 「まぁ、生身だし、ルルーシュとナナリーのことはアーニャとノネットさんが守ってくれるから、本気を出してもいいかな?」 でも、政庁が壊れるだろうか……と彼は真顔で付け加える。 「出迎えに来るだろう。その時にやればいいだけだ」 一発目は、とルルーシュは言い返す。 「その後は、適当に被害の少ないところに移動しろ」 出来るだろう? と笑いかける。 「了解。任せておいて」 作戦前の慣らしには丁度いい、とスザクは言う。 「本当はカレンも呼び出せばいいんだろうが……そうしたら空港が壊滅しそうだからな」 別の機会にするべきだろうな、と判断する。 「今回の作戦が終わってからでいいんじゃない? どうせ、ジノは回収でしょう」 スザクが確認を求めるように言葉を投げかけてきた。 「あぁ。確かに本国での任務なら書類の決裁が出来ればいいか」 なら、問題はないな……とルルーシュは笑う。 「カレンにはそう連絡を入れてくれ。神楽耶経由なら安心だろう」 マリアンヌはそれどころではないだろうし、他のもの経由では余計な尾ひれが付きかねない。そう付け加えれば、スザクはすぐに頷いて見せた。 「尾ひれの結果ではジノの命が危ないもんね」 わかった、と彼は付け加える。 「あれでも、戦力としては必要だからな」 傍にいると多少鬱陶しいが、我慢できないほどではない。 「しつけの悪い大型犬がいると思えばいいだけのことだ」 こう付け加えた瞬間、スザクは苦笑を浮かべる。 「ジノは犬か。じゃ、僕は?」 その表情のまま、彼は問いかけてきた。 「何を言っているんだ? お前は俺の特別だろう?」 ナナリーと同じように、と続ける。 「期待していたのとちょっと違うけど……まぁ、いいことにしておくよ」 わざとらしいため息とともにスザクはこういう。 「スザク?」 何を言いたいのか、と言外に問いかけた。 「わからないならいいよ」 ルルーシュだもんね、と彼は続ける。 それに反論をした方がいいような気がする。しかし、下手につっこんだら最後だという確信がある。 「……とりあえず、アヴァロンと空港施設だけは壊すな」 ごまかすように言葉を口にすれば、スザクが苦笑を深めたのが見えた。 終
|