周囲に炎が迫っている。
しかし、二人は動くことができない。
「……馬鹿だ、お前は……」
ようやく、ルルーシュが言葉をはき出す。
「私なんかのために、こんなことを……」
決してしてはいけないと言われている大罪。自分のためなんかに、それに手を染めるなんて……とルルーシュは付け加えた。
「僕が、君を守るって……そう、約束、しただろう?」
父でさえ、自分を一人の人間として必要としてくれなかった。
彼にとって、自分はただ、枢木の名を継ぐだけの存在であったのだ。それは、自分でなくてもかまわなかったに違いない。
そんな自分を、ルルーシュだけが真っ直ぐに見つめてくれた。
「だから、僕にとって、一番大切なのは、ルルなんだ……」
何を失ってもいい。
君さえ守れれば……とスザクは口にすると、ルルーシュを抱きしめようと手を伸ばしてくる。だが、何かに気が付いたかのように、彼は動きを止めた。
「……スザク?」
どうかしたの? とルルーシュは問いかける。
「ごめん……僕は、汚れているから……」
だから、ルルーシュに触れられない……と彼は続けた。
「馬鹿……」
そんなことはない、とルルーシュは口にする。そのまま、彼の手をそっと握りしめた。
「これは……お前が私を守るために汚した手だろう……それを拒むと思うのか?」
そして、こう囁く。
「ルル……」
「だから、絶対に、私から――俺から、離れるな……」
ずっと側にいろ……とルルーシュは口にする。
「うん、ルル」
どんなときにでも、君の側にいて、君を守るよ……とスザクは口にした。そして、そのまま、ルルーシュの手を取るとそっと手の甲に口づける。
そんな二人を、焔が赤く染めていた。
ルルーシュ行方不明の報がブリタニア王宮に伝えられたのは、日本が降伏をしたその日のことだった。
その報告に、さすがのブリタニア皇帝も言葉を失ったという。
そして、その報告はコーネリアの元にも届けられていた。
「……ルルーシュは、死んでいない……」
あの子が、そう簡単に死ぬわけがなかろう……と彼女は続ける。
「お姉様……」
そんなコーネリアの耳に、ナナリーの弱々しい声が届いた。
「大丈夫だ、ナナリー……あの子はきっと、私たちに連絡を取るに取れない状況に置かれているだけ……」
だから、いずれ自分たちの所に戻ってきてくれる。彼女はナナリーの体を抱きしめながらこう口にした。
「……それまで、お前は私が守ってやる……だから、何も心配はいらない」
そして、ルルーシュがどのような状況に置かれていようと守りきれるだけの力を手に入れよう。
彼女はそう心に誓った。
それから、七年の時が過ぎた……
・
06.12.26 up
|