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ペーパー小話 - 笹の葉さらさら -
ペーパー小話
笹の葉さらさら
スザクの部屋の前に大きな鉢が運び込まれた。危険物ではないと判断したのは、持ってきたのが顔見知りの庭師だからだ。
「笹か?」
それとも竹だろうか。ルルーシュはそうつぶやく。
「笹だよ。去年、ナナリー達が『本物の笹で七夕をやってみたい』っていったから、庭師さんに無理を言って育ててもらったんだ」
これは下手に植えられないから、と彼は苦笑とともに続ける。そうすれば、庭中、笹だらけになるとも。
「……恐ろしいな」
「適切に対処していれば問題ないよ。タケノコも小さいけど採れるし」
もっとも、今回は関係ないからすぐに処分することになるだろうが、と言われて納得をする。
「とりあえず、願い事を書くための短冊と七夕飾りは用意するけど……」
これはどこに置こう、とスザクは視線を笹の鉢植えに向けた。
「……そうだな。日の当たるところの方がいいか」
「だよね。そうなるとどこかのバルコニーかな?」
「ならばリビングがいいだろう」
運ばせないといけないか。そう思って誰かを呼び寄せようとルルーシュは視線を移動した。
「ルルーシュ。ちょっとどいて」
この呼びかけに視線を戻せば、スザクがあっさりと鉢を持ち上げている。
「あ、あぁ……」
脇によければ彼がすたすたと歩いて行く。その足取りに不安はない。考えてみれば自分を抱えて兵器で歩いているのだ。あの鉢が自分よりも重いはずはないし、とは思う。だが、自分にあれができるかと言えば答えたわかりきっている。
「……俺が非力なわけじゃないぞ、多分」
ため息とともにこうつぶやくとルルーシュは彼の後を追いかけた。
事前に用意してあったのだろう。色とりどりの髪がテーブルの上に広げられている。
「そういえば、七夕の後にはお前の誕生日が来るな」
それをはさみで切りながらルルーシュは問いかけた。
「そう言われてみれば、そうだったね」
今思い出した、とその顔にはっきり書いてある。それはどうなのかと言いたい。
「スザク、お前なぁ……」
「この年になると面と向かって祝ってもらうのは恥ずかしいんだよ」
いろいろと、と彼は告げる。
「そうなのか?」
「そうだよ。君みたいにお祝いされるのが当然という立場じゃなかったから」
好きな人にお祝いしてもらうのはいやじゃないけど、大々的にはしてほしくない。少しだけ視線をそらせながらスザクはそう言った。
「わかった。ならば身内だけでちょっとしたお祝いの席を用意するか」
「なら、ハンバーグが食べたい。ルルーシュの手作りで」
即座に彼はこうリクエストしてくる。
「お前はいつもそれだな」
「だって、おいしいから」
ルルーシュが作ってくれるのが一番おいしい。そう言われて『いやだ』と思う人間がいるだろうか。
「わかった。作ってやる」
そういえば彼はうれしそうに笑った。しかし、その間も手が止まることがないのはさすがだと言うべきか。しかもどれもきれいにできている。自分の方はと見れば、少しだががたついているところがあるではないか。
ちょっと悔しいと思う。
「楽しみにしているね」
手元のそれらのできを確認していたスザクが不意に顔を上げるとそう言ってくる。そんな彼に自分のふてくされた表情を見られなかったか、ルルーシュには気にかかった。
「任せておけ」
それをごまかすように彼は笑みを浮かべる。
「それで、次は何をすればいいんだ?」
「みんなに短冊を配って願い事を書いてもらうことかな?」
そうしたら笹につけてもらおう。そういうスザクにルルーシュはうなずいて見せた。
数日後、色とりどりの願い事で飾られた笹がアリエスの庭で揺れていた。
短冊に書かれた願い事が叶えられたかどうか。それはまた別問題だろう。