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黒の螺鈿図 この話はナイトメア・オブ・ナナリーに出てきた枢機卿猊下から妄想したネタです。 猊下の設定は出ていないので勝手に妄想中。 取りあえず、うちの場合はC.C.やV.V.のような存在で、ルルとは別人格と言うことで(苦笑 お誕生日企画で書いた「君が生まれた日」の続きになります。 大丈夫という方のみ、スクロールをしてください。 生母の身分が低い。 ただそれだけの理由で子供を省みる者はほとんどいなかった。 母子もその事実を認識しているのだろう。与えられた離宮でひっそりと暮らしていた。 母と子、そしてほんの僅かばかりの信頼できる者達。 それだけが、子供の世界の全てだったのではないだろうか。 だからといって、子供が不幸せだったのかと言えば答えは『否』だろう。不自由を不自由として認識することなく、素直に育っていた。それは、間違いなく周囲の者達の愛情の賜物だろう。 しかし、子供を慈しんでいる母も第二子を出産のために、今は子供の側を離れている。その事実が、子供に不安を与えているようだ。それでもわがままを言わないのは子供が自分たちの置かれている立場を理解しているからかもしれない。 そんな子供の存在が、哀れといえるのではないだろうか。 しかし、自分にとってみればそれは好都合だと言っていい。 誰の目も気にすることなく子供に近づくことができる。 そう考えながら、自分の閨から世界へと滑り出た。 「誰?」 いきなり現れた自分に対し、子供はこう問いかけてくる。その声に警戒心が満ち溢れていた。 「私か?」 それは子供が自分の置かれている立場を正確に理解しているという事だろう。 その事実に、自分は笑みを口元に刻む。その表情のまま、子供に話しかけた。 「とりあえず、今はお前の遊び相手だ」 この言葉に子供は目を丸くする。 「遊び相手?」 それは何なのか。言葉の意味がわからない、とその表情に書いていた。 いままでそのような存在をこの子供が知らなかった事は幸いなのだろうか。 それとも、不幸なのか。 それはわからない。だが、自分の存在をこの子供に刻みつけるには都合がいい。 静かに静かに、子供の心の中に自分の居場所を作ろう。そして、愛情という名の鎖で絡め取ってしまえばいい。契約よりもそちらの方が強い、と自分は知っていた。だが、あの二人はどうだろうか。 どちらにしろ、関係のないことだ……と笑いを漏らす。 親切に教えてやる義務もない。この子供を巡って、自分たちは間違いなく争うことになるのだから。 だが、それはまだ未来のことだろう。今は、目の前の子供のことを優先しよう。そう判断をして言葉を口にする。 「今日のところは楽しめそうな事を教えてやろう」 その後は二人で楽しめばいい。こうも付け加える。 「僕と?」 子供の表情に期待の色が浮かぶ。 「そうだ、ルルーシュ」 お前とだけだ。こう言えばルルーシュは嬉しそうに笑う。 その表情がいとおしいと感じた。 元々聡明な子供なのだろう。土に水が染み込むように教えた事を飲み込んでいく。 この子供に望んだ事は自分と契約できる資質があることだけだった。その後の事はどうにでもなる。 だからと言って、この子供の聡明さが疎ましいわけではない。むしろ好ましい。 そんな気持が表情に出ていたのだろうか。 「どうかなさいましたか?」 おずおずと声がかけられる。 「気にしなくていい」 見ていて楽しかっただけだ、と言葉を返す。 「楽しい?」 何が、とその瞳が問いかけてくる。 「自分でもいろいろと学んでみたのだろう? 強くなった」 対戦していても面白い、と付け加えた。 「でも、負けました」 悔しそうな口調でルルーシュは呟く。 「クロヴィス兄さんには負けたことがないのに……でも、シュナイゼル兄上には勝てないから、同じなのかな?」 どうなのだろう、と彼は真剣に考え込んでいる。その表情も可愛いと思ってしまうのは、きっと、何事にも全力で取り組もうとしている様子が見えるからだ。 「……シュナイゼル・エル・ブリタニアにクロヴィス・ラ・ブリタニア、だね」 シャルル・ジ・ブリタニアの子供達の中でも高位の母を持つ子供達が珍しいことだ、と呟く。 「後、コーネリア姉上とユフィもよく顔を出してくれます」 もっともチェスはなかなか付き合ってくれないが……とルルーシュは付け加える。 「なるほど。彼らは他人の資質を見抜く目があるようだね」 よいことだ、と頷く。それならば、その中から自分の《共犯者》を選ぶべきだろうか。 だが、誰がいいだろう。 心の中にそれぞれの顔を思い浮かべながらそう呟く。 ルルーシュと一番中がよいのはクロヴィスだろう。しかし、彼は人はいいが政治向きではない。むしろ、そちら方面に関わらせては失策をしそうな存在だ。 ユーフェミアはともかくコーネリア個人は十分に条件に合致する。彼女はマリアンヌに心酔しているし、キラも可愛がっているのだ。 だが、二人の母親はどうか。 彼女はマリアンヌやルルーシュによい感情を抱いてはいない。これ以上、コーネリアがこの家族との親密さをませば彼女が何をしでかすかわからないだろう。 自分に言わせれば愚かとしか言いようがない。 だが、あれらにはあれらの理屈があると言うこともわかっていた。 取りあえず、目の前の子供に直接危害を加えないうちは見逃しておいてもいいだろう。 だが、わざわざこの子を危険に近づけることはしたくない。 だから、コーネリアも選択肢から外さなければいけないだろう。 となれば、残りはシュナイゼル……と言うことになる。 だが、彼は今ひとつ虫が好かない。 いや、信頼できないといった方が正しいのか。 あの男の表情に何か引っかかるものがあるのだ。それがどうしてなのか。自分にもわからない。 「でも……母さんは兄上達のご迷惑になるから、あまり一緒にいてはいけないって……」 マリアンヌも同じように感じているのか。 しかし、選択肢が他にないのであればしかたがない。この子のためになるかどうか、取りあえず観察をしてみよう。 「彼らはそろそろ皇族としての仕事を始めなければならない年齢だからね」 クロヴィスであれば、構わないかもしれないが……とそう答えてやる。 「……そう、ですね」 少しだけ寂しげな表情でルルーシュはこう呟いた。 自分がもっとこの子供の側にいられればいいのかもしれない。 だが、そうすれば自分が望まないのかに関わらず、この子を自分自身に染めてしまいかねない。 それでは意味がないのだ。 自分が欲しいのは自分の言うことを黙って聞く人形などではなく、自分の意志をしっかりと持ったルルーシュだ。 それでこそ、自分のものにしがいがある。 「……そろそろ気分転換も良さそうだね」 ならば、もう一局対戦するかい? とそう問いかけることが今は精一杯だった。 BACK ・ NEXT 08.01.14up |