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真夏の蜃気楼

07



 ブリタニアについたときにはいろいろと騒ぎになった。正確に言えばルルーシュの兄姉が文句を言いに来たのだ。
 その中でもっとも厳しい言葉をジュリアスに向けていったのはコーネリアだった。その名前にスザクは聞き覚えがある。
「……強くてりりしいお姉さん?」
 確かそう言っていたはず、と思いながらとつぶやく。
「コゥ姉上か?」
「うん。ナナリーがそう言っていた」
 ルルーシュがと言わなかったのはジュリアスが知っているかどうかわからなかったからだ。
「ほぉ……」
 小声で話しているつもりだったのにしっかりと聞こえてしまったようだ。コーネリアがそうつぶやく。 「ナナリーがそんなことを言っていたのか」
 どこかうれしそうに見えるのはスザクだけではないはすだ。
「しかし、あれがそんなことを言うとは……よほど信頼されていたか?」
 少しだけ雰囲気が柔らかくなる。
「わかりません」
 でも、とスザクは続けた。
「仲良くはしていました」
 少なくとも自分はそのつもりだった、と続ける。
「そうか」
 コーネリアは一言そうつぶやく。
「どう思う?」
 そのまま視線を脇にずらすと恰幅のいい男性に問いかける。
「あの方が亡くなられたマリアンヌ様のことまで話されたのならば嘘ではありますまい」
 その男性はコーネリアに向かってそう言い返した。
「確かにな」
「それに、彼はジュリアスをかばっているように思えますが」
「私の目にもそう見えるな」
 この会話に、スザクは反射的にジュリアスへと視線を向ける。
「ばれてるの?」
 そしてこう問いかけた。
「ばれているのとは違うな」
 スザクの視線にひるむことなくジュリアスが言い返してくる。
「最初からお二人は計画の一員だったというのが正しい」
 皇族に協力者がいなければルルーシュの不在をごまかすのは不可能だから。ジュリアスの言葉はもっともなのかもしれない。
 しかし、だ。
 それならば最初から教えていてくれればいいのに、と思っても悪くはないだろう。
「君に教えなかったのはどこまで信頼できるか、はかりかねたからだ」
 ルルーシュとナナリーに対する気持ちは本物だとわかっている。しかし、それとこれとは別問題だから。彼はそう続けた。
「殿下の裁定を受けてからでなければ本当のことは言えないしな」
 ルルーシュのことがあって彼女の弟妹に対する保護者意識は限界を突破しているから、と彼はそっと付け加える。
「それで、俺は合格だったと?」
 それとも失格だったのか、とジュリアスに問いかけた。
「とりあえずナナリーのそばに置いておく分には問題ない。後はこれからのお前次第だな」
 ルルーシュの捜索隊に参加できるかどうかに関しては、とコーネリアが口にする。
「ご心配なく。私が面倒を見ましょう」
「いえ。体術に関してはジェレミア卿にお願いしようかと」
 マリアンヌの薫陶を受けた人間だから、とジュリアスがコーネリアに告げた。
「と言っても、基礎は出来ているらしいので後は実戦形式で十分だと思いますが」
「……たまには稽古をつけてやれ」
 ジュリアスの言葉に何か考え込んでいたコーネリアがそばにいた相手にそう命じる。
「ナナリーの様子を見るついでだ。そのくらいはかまうまい」
 違うか、とジュリアスへと視線を向けた。
「Yes,Your Highness」
 コーネリアの言葉に彼はこう言い返す。他にも使っている人間がいるから『どういう意味なの』と聞いたことがある。皇族に対する答えだ、と教えてくれたのはもちろんルルーシュだ。
「……頑張らないと」
 そして絶対にルルーシュを助け出してみせる。スザクは決意を新たにした。




20.09.11 up
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