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真夏の蜃気楼

11



「中華連邦か……また厄介なところに」
 ため息とともにシュナイゼルがそう告げる。
「あそこは他国の人間が潜入するのは難しいからね」
 オデュッセウスもそう言ってうなずく。そのまま目の前の駒を一つ動かした。
「本当に」
 それを確認してシュナイゼルもまた駒を動かす。
「チェック」
 そしてこう告げる。
「あぁ……また負けてしまったね」
 オデュッセウスはそう言って肩をすくめた。
「一度ぐらいは君に勝ってみたいんだがね」
 実力で、と彼は続ける。
「……兄上……」
「無理だとはわかっているんだけどね」
 苦笑とともに彼は言葉を綴った。
「万が一にでも君に実力で勝てたらすべてがうまくいくような気がしてね」
 そう告げればシュナイゼルも苦笑いを浮かべる。
「兄上。大丈夫です。少なくともルルーシュのことはなんとかしましょう」
 あの子を取り戻せるならばどんな苦労もいとわない。彼はそう続けた。
「陛下もそのおつもりのようです」
「だろうね。陛下はあの子を大切にしておられる。我々も同じくらい大切にしていただいているが、ね。あのことナナリーは特別だ」
 わざわざ枢木の息子を連れてくるくらいに、とオデュッセウスはうなずく。
「それで、どうなんだい?」
「ナナリーの護衛としては有能ですよ。後は今後の教育次第でしょう」
 このまま成長すればラウンズになり得るだろう。シュナイゼルの言葉にオデュッセウスは目を丸くする。だがすぐに表情を和らげた。
「それはいいことだね」
 彼は本心からそう告げる。
「では、その前にルルーシュを連れ戻さなければいけない」
 その言葉にシュナイゼルもうなずいて見せた。

「あの子は紫禁城にいるようだよ」
 何時ものようにふらりと姿を現した兄がそう口にする。
「本当ですか?」
「僕は嘘は言わない」
「わかっています。ですが、すぐに信じられません」
 自分達に何も要求もしてこないのだから、とシャルルは続けた。
「……あちらの理由は金銭ではないらしいよ」
 その言葉にシャルルは目を丸くする。
「まさか……」
「そのまさかだよ。あちらがほしいのはブリタニアの皇族の血だ」  つまり、あちらはブリタニアに戦いを挑んでくると言うことか。それとも暗殺か。
 どちらにしろ皇族の血が流れることは間違いないだろう。
「……では、今しばらくあの子の身の安全は確保されるでしょう」
 ブリタニアの血がほしいのであれば二次成長が来なければ意味がない。それまでは飼い殺しにされるのではないか。
 だが、あの子が飼い殺しにされているはずはない。
 いずれ何かの行動に出るだろう。
「それまでになんとかあの子のそばにあの子を守ってくれるものを送り込まなければ」
 最悪の場合、あの子を連れて逃げることが出来る者を……と続ける。
「……そうだね。僕の方で探しておくよ」
 何人かあそこに送り込んでいるし、と兄は笑った。
「お願いします」
 シャルルはそう言うと頭を下げる。
「任せておいて」
 そんなシャルルに彼は笑ってうなずいた。




20.11.10 up
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