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真夏の蜃気楼

26



 未だに待っていたロイドにコーネリアとともにナナリーをあわせる。
「……ナナリー様、お久しぶりですぅ」
 ロイドは即座にこう告げた。
「アスプルンド伯爵でいらっしゃいますね」
 お久しぶりです、とナナリーも言い返す。そして彼の手を握ろうとする。もっとも見当違いの方向へと手を差し出したのをスザクがさりげなく位置を補正していたが。
 それにナナーは小さく頭を下げる。
「お久しぶりです。お兄さまの家庭教師をされていたとき依頼です」
 微笑みとともに彼女はそう告げた。
「そうですねぇ。ルルーシュ殿下は本当にいい生徒でした」
 一聞いて十を知るというのは彼のことかと思った、とロイドは珍しくまじめに告げる。
 それからしばらく二人はルルーシュのことで盛り上がっていた。初めて聞く話も多く、スザクだけではなくコーネリアも目を白黒させていたのは言うまでない。
「それで、お話とは何でしょうか」
 一通り話が終わったところでナナリーが問いかける。
「スザク君をちょーっと貸してほしいなぁって」
「……クルルギはナナリーの護衛だが? 士官学校以外で側を離れることはしないはずだ」
 ロイドの言葉にコーネリアが思わずといった風情で口を挟んだ。
「わかってますよぉ。ただ、ランスロットとの相性を確認させてほしいなぁって」
 今のところはそれだけで十分、とロイドが笑う。
「ランスロットとは何ですの?」
 小首をかしげつつナナリーが問いかける。その隣でスザクは小さなため息をついた。先ほどの会話から判断して、間違いなくナイトメアフレームだ。それもサザーランドよりも世代が上の、と心の中でつぶやく。
「僕が開発をした新型です!」
 胸を張ってロイドが答える。
「アスプルンド」
「何でしょうか、コーネリア殿下」
「クルルギは名誉だ。名誉はナイトメアフレームに乗れぬ」
「ですが、スザク君はナナリー様の騎士ですよね?」
 騎士である以上、ナイトメアフレームの基本ぐらいは覚えておかないtダメではないか。そうロイドが問いかけてくる。
「……基本だけは教えていただいています」
 ジェレミアに、とスザクは口にした。
「ですから、アスプルンド様に教えていただかなくても大丈夫です」
 それよりもナナリーの側にいたい。そう続ける。
「そうだな。アスプルンドに付き合う時間があるならナナリーと一緒にいてやれ」
 コーネリアがその言葉に満足そうにうなずく。
「でもぉ〜〜」
 だが、ロイドはあきらめが悪い。
「いざというときに自分の期待があった方がいいじゃないですかぁ」
 ルルーシュを取り戻しに行くときにとか、と続けられてスザクはぴくりと体を震わせた。
「ジュリアス卿も参加するんでしょう? 彼ならばスザク君を引っ張り出しますよねぇ」
 ルルーシュの奪還作戦に、と彼は続ける。
「……私は……スザクさんにお兄さまを迎えに行ってほしいです」
 ナナリーがぽつりとつぶやくようにこう口にした。
「ナナリー?」
「スザクさんは私の護衛であると同時にお兄さまの騎士ですもの」
 だから、とナナリーは微笑む。
「……それでいいのか?」
 その言葉にコーネリアがこう聞き返す。
「はい、お姉様。私がここでおとなしくしていれば大丈夫だと思います」
 いや、とスザクは口を開く。
「ここも襲撃されているから」
「そうだな。まぁ、お前の身柄はマリーに任せればいいか」
 あそこであれば安全だろう、とコーネリアが言う。そして、ここにはおとりを置いておけば良い。バカを一網打尽に出来そうだな、と彼女は凄艶な笑みを浮かべた。
「もっともクルルギのことは兄上方の許可をもらわねばならぬ。返答は暫く待て」
 コーネリアの言葉にロイドは「仕方ないですねぇ」と告げる。
「いいお返事とお待ちしておりまぁす」
 そう言う彼にコーネリアがうなずく。二人の態度を見てせめて無事でいられることを祈るスザクだった。



21.9.11 up
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