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真夏の蜃気楼

31



 とりあえず卒業までは腫れ物扱いだったがちょっかいをかけてくるものはいなかった。
「まぁ、平和でいいんだけどね」
 問題は、いつ、ルルーシュ奪還作戦が行われるかだ。
「おそらく、卒業後……オズの叙任式が終わってすぐでしょうね」
 マリーベルがクッキーをつまみつつそう告げる。
「私の、ですか?」
「父上のご判断ですもの」
 盛大にやると母が張り切っていたわ、とマリーベルは微笑む。
「それに、そうすればナナリーとスザクの叙任式も可能になりますしね」
「そうだね」
 ナナリーになるか、それともルルーシュになるか。それはわからないが、自分が彼女を守りたいのは事実だ。スザクは心の中でつぶやく。
「でも、オズの叙任式は華やかだろうね」
 にっこりと微笑みながらスザクはこう告げる。
「僕は出席できないだろうけど」
「あら、どうして?」
「ナンバーズだから」
 たぶん招待されないよ、と続けた。
「そんなこと、ないわよ?」
 オルドリンが反論するように口にする。
「ご親戚に嫌われているようだけど?」
 そもそもの発端になったマリーベル皇女襲撃事件。その帰り似合ったことを思い出しながらそう告げた。
「それに、ナナリーが参加するにしても護衛はジェレミア卿になると思うし」
 彼は立派なブリタニアの貴族だし、と苦笑を浮かべながら告げる。
「……何がありましたの?」
「まぁ……ちょっとしたトラブル、かな?」
 たいしたことではない、と言い返す。
「スザク、教えてくださりません?」
 マリーベルが問いかけてくる。その表情は笑顔だが、逆らうことを許さない雰囲気があった。
「……置いてけぼりにされただけですよ、演習場に」
 そこから途中まで歩いたが、さすがに帰り着くことは出来なかった。途中でロイドに拾ってもらわなければ当日中にナナリーの顔を見ることは不可能だったのではないか。そう続ける。
「……叔父様……」
 オルドリンが怒りを押し殺しながらつぶやく。
「まぁいいでしょう。そう言うことならきっちりと認めさせるだけです」
 まずはオイアグロに、と彼女は微笑む。
「でも、わたくしが命じては意味がありませんね」
 スザク自身の力で認めさせるしかない。その手伝い具ラウは出来るだろうが、とマリーベルは続けた。
「それは当然のことですね」
 望むべきことだ、とスザクは言う。
 問題はその方法だ。
「でも……マリーを助けても認めてもらえない以上、もっと大きな功績が必要だよね」
 それこそ、どこかの国を落とすとか……とつぶやく。だが、すぐにその考えを捨てた。それをするのは上の人々だ。自分の役目ではない。
 では何があるだろう。
 やはりルルーシュを救い出すしかない。
 問題は、それは一人では不可能だと言うことだ。
「……そうですわね」
 マリーベルもため息交じりにうなずいてみせる。
「でも、あなたには考えがあるのでしょう?」
「そうですね。あちらこちらに許可を頂きに行かなければなりませんが……」
 でも、シュナイゼルが許可を出してくれるなら可能だろう。そんなことを考えていた。



21.11.10 up
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