真夏の蜃気楼
46
来たときの半分強の時間でスザクは自軍へと戻った。
「ジェレミア卿、お願いします」
その場にいたジェレミアにルルーシュをあずける。
「あぁ。任せておけ」
彼はうなずくとルルーシュへと向き直った。
「お久しぶりです、ルルーシュ様。お疲れでしょうから、こちらへ」
そして頭を下げながらこう言う。
「あ……あぁ……スザクはどうするんだ?」
「彼はこれから出陣です」
ジュリアスの作戦ではそうなっている、とジェレミアが説明を始めた。
「大丈夫なのか?」
「ナイトメアフレームでの出撃ですから……それに、彼のは実験機とはいえ最新型です」
さらに彼の説明は続く。それを耳にしながらスザクは騎乗準備を進めている。
「ロイドさん、準備完了です」
インカムをつけるとロイドへと呼びかけた。
『りょぉかーい』
即座にロイドの楽しげな声が聞こえる。
『こっちはいつでもいいよぉ』
彼の言葉と同時にトレーラーが滑り込んできた。
「スザクくぅん! こっちだよぉ」
そしてロイドが姿を見せると同時にスザクを手招いている。
「ルルーシュ、行ってくるね」
背後で呆然としているルルーシュにスザクはそう声をかけた。
「あ……あぁ、気をつけてな」
それでもルルーシュは言葉を返してくれる。
「当然でしょう? 僕は君たちの騎士だから」
スザクはそう言って笑う。そうすればルルーシュも笑い返してくれた。
「いろいろと苦労して許可を取ったんだ。意地でも君たちの側にいるよ」
そのためにもまずはこの戦いに勝たないと、と続ける。
「だから、待っていて。ジュリアスと一緒に帰ってくるから」
そういうとスザクは走り出す。
「わかっている。絶対だぞ」
話したいことも聞きたいことも沢山あるんだからな、と叫ぶように言うルルーシュの声を耳に特派のトレーラーへと飛び込んだ。
「ルルーシュ様、こちらへ」
ジェレミアがそう言いながらルルーシュを別のトレーラーへと導いていく。
「これは誰のベースだ?」
ルルーシュは思わずジェレミアに問いかけてしまう。
「ジュリアス卿のものです。ルルーシュ様にお休みいただくように命じられております」
「そうか」
では、遠慮はいらないな。そう付け加えると案内されるままに中に足を踏み入れた。
それーラーの中には周囲の地形を映すモニターや通信機、レーダーなど作戦を指揮するのに必要と思える機材が置かれている。今もその周囲では数名の軍人が状況の確認をしていた。
それが気にならないと言えば嘘になる。
しかし、自分がしゃしゃり出ることで命令系統に乱れを生じさせるわけにはいかない。そう考えて我慢することにした。
同時にこれだけのベースを使えるとなるとジュリアスはどれだけ努力したのだろうか。スザクもナイトメアフレームの騎士のようだし、と心の中でつぶやく。
自分一人だけおいて行かれたようなそんな感覚に襲われる。
確かにあそこではいろいろと制約されていた。その中で最善を尽くしてきたつもりだ。
それでも、とジェレミアにばれないようにため息をつく。
彼らがたどってきた道を思えばまだまだとしか言えないのだ。
「ルルーシュ様。おかけになってください」
ジェレミアが声をかけてくる。
「あぁ」
そう答えるが、示された椅子は司令官のものではないのか。
「いいのか?」
「もちろんです。状況をお知りになりたいでしょう?」
「……あぁ」
ルルーシュがうなずくと同時に正面のモニターに状況が映る。そこには白いナイトメアフレームが映し出されていた。
22.07.20 up