PREV | NEXT | INDEX

お隣のランペルージさん

13


 カレン達一家がシュタットフェルトと縁を切るための手続きを始めた。
 その裏に自分たちがいると推測されたのだろう。最近、ルルーシュ達に対する嫌がらせが始まった。
「……お兄様。また変態さんがいます!」
 ルルーシュの腕に抱きつきながらナナリーがそう叫ぶ。
「ロリコンか? でも、ルルーシュ目当てならショタコン……」
 ここまで言ったところでスザクがじっとルルーシュの顔を見つめる。
「やっぱロリコンか」
 そしてつぶやくようにこう言った。
「スザクは今日のおやつはいらないらしいな」
 ため息交じりにルルーシュはそう言い返す。
「何でそうなるんだよ!」
 何時もならこの辺りでいなくなるのだが、とルルーシュは心の中だけでつぶやく。どうやら今日は違うらしい。
 そういえば、とさらに続ける。
 あちらでは子爵家の権力が通じないでとうとう裁判になるらしい。それは当然だろう、とルルーシュは思う。こちら側の弁護士はあのカノンだ。見た目や言動で誤解されるが、彼もまた伯爵家の後継でありあのシュナイゼルの側近なのだ。下手をすれば侯爵家でも手出しできないはず。
 だからこちらに矛先を向けたのではないか。
 オデュッセウスではないのは彼は基本的に一人で外出することはない。そして、間違いなく咲世子にすでにこてんぱんにされているのではないか。
 それとも自分たちが子供だとあなどっているのか。
「……うっとうしいです」
 小声でナナリーが訴えてくる。
「もう少し我慢して。今、情報部の人間があれこれと証拠をつかんでいる最中だから」
 それが集まったら手助けしているものも含めて引導を渡すと言っていた。ルルーシュはそうささやき返す。
「お兄様のベリータルトが食べたいです」
 我慢するから、とナナリーがそう言い返してくる。
「咲世子さんに材料を買ってきてもらってからな……そうしたらいっしょに作ってみよう」
 タルト台にベリーを飾るぐらいならナナリーでもできるだろう。できれば母のように生活無能者にはなってほしくない。だから、彼女にも料理には興味を持ってもらいたいのだ。これが一番センスが問われるし、とルルーシュは微笑みながら考える。
「ずるい! 俺もやる!」
 即座にスザクが口を挟んできた。
「俺もルルーシュといっしょにやる! 最近、一緒にいる時間が少ないじゃないか」
 カレンのことばっかりで、と彼は訴えてくる。
「あちらの方が緊急性が高いからな」
 ため息とともにルルーシュは言葉を返す。
「今日もお客さんが来たようだし」
 そう続けながらルルーシュは視線だけで自分たちの家の門を示した。そこには丁寧に梱包されたブリタニア人らしい連中が積み上げられている。
「さすがは咲世子さん。お母様直伝なだけありますわ」
 ナナリーが感心したようにつぶやく。
「あそこにあると言うことは大使館に取りに来させるつもりだな?」
 頼むからあの二人のまねはしないでくれ。心の中でそうつぶやきつつ、ルルーシュは言葉を口にする。
「何で? こっちの警察でいいじゃん」
 可愛らしく首をかしげつつスザクが問いかけてきた。
「それではあれこれと証拠を隠されて無罪放免になるからな」
 意味がない、とルルーシュは言い返す。
「大使館なら、後で父上と母さんとその周りにいるもの達がしっかりとお仕置きをしてくれるから」
 二度とバカなことができなくなる。そう言って笑って見せた。本人は悪役顔のつもりだったのに、なぜかスザクだけではなくナナリーも頬を赤らめてしまった。
「……二人とも、どうかしたのか?」
 意味がわからずにそう問いかける。
「わからないならいいよ」
「そうですわ、お兄様」
 珍しくも二人が異口同音にそう告げた。
「それよりもお兄様。オデュッセウスお兄様が心配です。早くうちに入りましょう」
 ナナリーがこう言いながら腕を絡めてくる。
「ずるいぞ、ナナリー!」
 そうすれば、反対側の腕にスザクがすがりついた。
「二人とも、重いぞ」
 ついでに邪魔だ、とルルーシュは口にする。
「うちに入るまでだからいいでしょう?」
「そうだぞ」
 本当に、こういうときだけ仲がいい。そうつぶやくとルルーシュはため息をついた。

 家の中は心配していたよりもきれいだった。それでもそれなりに被害はあったらしい。咲世子が掃除をしている。
「ただいま、咲世子さん」
 ルルーシュの言葉に彼女は姿勢を正す。
「お帰りなさいませ、ルルーシュ様、ナナリー様。ようこそいらっしゃいました、スザクさん」
 そしてこう告げる。
「今、玄関周りが大変なことになっておりますので……」
「そのようだね。あいつらの仕業?」
「はい」
 ですので、お仕置き中です。そう言って咲世子は微笑む。それを見た瞬間、なぜかナナリーとスザクが体を震わせた。
「兄上はご無事か?」
 ルルーシュはため息をつきつつ咲世子に問いかける。
「もちろんです」
 咲世子はそう言ってうなずく。
「なら、まずは部屋に行って荷物を置いて、それから兄上の所かな?」
 ルルーシュはこの後の段取りを考える。
「そうですね。私もここの掃除を終わり次第、お茶の用意をします」
 咲世子もそう言ってうなずく。
「その前に玄関前のあれをどうにかしてほしいな」
 さっさと引き取ってもらえ、とルルーシュは言外に告げる。
「かしこまりました」
 咲世子がそう言って頭を下げた。


18.12.20 up
PREV | NEXT | INDEX