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お隣のランペルージさん

15


 連休と言うだけでもわくわくする。その上、今日は皆でお出かけなのだ。
「お兄様、いったいどのようなアトラクションがあるのでしょうか」
 ナナリーは待ちきれないという様子で兄に問いかける。
「観覧車やジェットコースター……あぁ、ゴーストハウスもあるな」
 ルルーシュの言葉にさらにテンションが上がった。
「楽しみです」
 満面の笑みとともにこう告げれば彼は頭をなでてくれる。
「よかったね、ナナリー」
 さらにオデュッセウスもこう言って来る。
「あぁ、他の皆が来たみたいだな」
 ルルーシュがそう告げた。同時に目の前の一大の大型バンが止まる。
「ルルーシュ、お待たせ!」
 次の瞬間、スザクが飛び出してきた。
「なぁ、いっしょに座ろう?」
 そして、ルルーシュの腕をとるとこう言ってくる。
「ダメです!」
 反射的に兄に抱きつくとナナリーはこう叫ぶ。
「お兄様は私といっしょに座るのです!」
「何でだよ!」
「何ででもです」
「だから、どうしてかって聞いているんだよ!」
「どうしてもです」
「そんなのずるいじゃん!」
「ずるくないです! 当然の権利です!!」
 口げんかと言うには激しい口論を始めてしまう。
「ナナリー! スザク!!」
 いい加減にしろ、とルルーシュに怒られるまでそれは続いた。ルルーシュに怒られては仕方がない。そう思ってナナリーが口をつぐんだ瞬間だ。
「だって、ルルーシュ……ナナリーがルルーシュを独り占めするから」
 スザクがこんなセリフを口にする。
「貴方に何の権利がありますの?」
 それに反射的にナナリーは言い返す。
「私は妹です。正当な権利があります」
 さらにこう続ければ、スザクは悔しそうに唇をかんだ。だが次の瞬間、こう言う。
「なら、俺がルルーシュと結婚すればいいんだよな?」
「……スザク君」
 どや顔でそう言った彼の肩を車から降りてきていた藤堂がつかむ。
「我が国では同性同士の結婚は認められていないのだが……誰からそんなことを聞いたのかな?」
 その迫力から彼には思い当たることがあるのではないか、と思う。
「朝比奈さんだけど?」
「やはりか……いいかい、スザク君。君はルルーシュ君とは結婚できない。何があろうとね」
 だから、ナナリーちゃんとくだらない争いはやめなさい……と彼は続ける。
「え〜、なんで?」
「ナナリーちゃんがルルーシュ君の妹だからだよ」
 そう言うと彼はスザクを引っ張っていく。
「私たちも乗ろうか」
 それを見たオデュッセウスが苦笑とともにそう告げる。
「そうですね」
 ルルーシュもうなずくとナナリーも手をさしのべてきた。

「今度はあれにしましょう!」
 こう言いながらナナリーが腕を引っ張る。
「ちょっと待て、ナナリー!」
 慌てたようにルルーシュが彼女を制止した。
「楽しそうですよ?」
 しかし、彼女は聞く耳を持ってくれない。ある意味、それは予想していたが、ここに来てまで振り回されるのはごめんだ。そうは思うものの仕方がない。
「とりあえず、少し休みたいんだが」
 代わりにこう言ってみる。
「まだ二つしか乗ってないじゃないですか」
「……絶叫系をな。むしろ、お前とスザクで乗ってきた方がいいのではないか?」
「いやです!」
 あんな猿と、とナナリーは付け加えた。
「俺が猿ならお前はタヌキじゃないか!」
 その言葉を聞きつけたのか。スザクがこう言い返してくる。
「お従兄さま!」
 それに隣にいた神楽耶が怒りをあらわにした。
「神楽耶様。スザクはルルーシュを独り占めするナナリーがうらやましいだけです」
 あきれたような視線を向けたのはカレンだ。
「いいじゃん! ルルーシュだって何時もナナリーの世話じゃつまらないと思うぞ」
 そう言いながらスザクはナナリーがつかんでいるのと反対側の腕をつかむ。そして他の方向へと引っ張った。
「カレン! 見ていないでなんとかしてくれ」
 ルルーシュはとうとう耐えきれなくなって声を上げる。
「え〜〜っ、無理」
 だが、彼女は無情にもこう言い返してきた。
「カレン、頼むから……」
「スザク一人ならいいけど、ナナリーちゃんもでしょう? 無理よ」
 再度頼んでも彼女はこう言ってくる。
「……お前達、放せ!」  こうなれば自力で何とかしよう。そう考えて怒鳴りつけてもどうにもならない。逆に引っ張る力が強くなるだけだ。
「い、いたい!」
 とうとうこう口にする。次の瞬間、二人は慌てたように手を放す。
「お兄様……」
「ルルーシュ」
 そして、おずおずと見つめてくる。しかし、その程度でルルーシュの怒りが収まるはずがない。
「今日一日、二人で回ってこい!」
 二人にこう命じるくらいルルーシュは怒っていた。



19.02.03 up
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