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お隣のランペルージさん

16


 遊園地から戻ってもルルーシュの怒りは収まらなかった。
「ナナリーは学校でスザクと一緒にいろ」
 二人が仲良くなるまで甘えるの禁止、とそう言いきる。
「無理です、お兄様」
 スザクと仲良くするなんて、とナナリーは訴えてきた。
「なら、全部一人でやるんだね」
 自分は手伝わない、とルルーシュは言い返す。
「そんな……お兄様が手伝ってくださらないと……」
「一人でできるだろう?」
 ナナリーの言葉を遮ってルルーシュが言う。
「でも!」
 そう言いながらナナリーが言葉を探している。だが、ちょうどよい言葉が見つからないのか。とうとう彼女は泣き出してしまった。
「ナナリー?」
 それに気がついたのだろう。オデュッセウスが口を挟んでくる。
「何が不安なのかな?」:  この問いかけに、とうとうナナリーの涙腺は決壊した。
「お兄様は、私のお兄様ですよね?」
 ルルーシュに抱きつきながら彼女はこう問いかけてくる。
「決してスザクのお嫁さんになんかなりませんよね?」
「当然だろう?」
 何を言っているのか、とルルーシュは言い返す。
「そんなこと、父上が許されるはずがないだろう?」
 そう続ければナナリーはほっとしたような表情になる。
「……それにね、ナナリー」
 小さなほほえみとともにオデュッセウスがさらに言葉を重ねた。
「君の姉妹達がいるだろう?」
 この言葉にナナリーの瞳が輝く。
「そうですわね。お姉様方がいらっしゃいました」
 オデュッセウスの言葉にうなずくとさらに言葉を重ねる。
「お姉様方がお兄様が『お嫁』に行くことを『認める』とは思えません」
 むしろ率先して邪魔してくれるだろう。そう告げるナナリーの笑顔が実にすがすがしい。
「……まぁ、納得してくれたならいいのか」
 別の意味で心配になってくる、とルルーシュはつぶやく。
「それにしてもナナリー。なぜ、そんなことを考えたのかな?」
 その隣でオデュッセウスがこう問いかけている。
「お兄様はお優しいから、いつかスザクに押し切られるんじゃないかと……」
 彼の問いかけにナナリーはこう言い返す。
「僕はどこまでお人好しだと思われているんだ?」
 ルルーシュがナナリーの髪をなでながらこうつぶやく。
「ダメなものはダメだと言い切れるぞ」
「それを聞き入れるかどうかは別問題だけどね」
「……兄上……」
 そこで話の腰を折らないでいただきたい、とルルーシュは彼をにらみつける。
「あぁ、すまないね」
 そう言うとオデュッセウスがルルーシュの頭をなでてきた。
「ただ、彼の性格を考えるとどうしても難しいような気がしてね」
 オデュッセウスの言葉にルルーシュは少し考え込む。
「そうかもしれません」
 人の話を聞かないのがスザクだ。しかし、とルルーシュは口を開く。
「ブリタニアに帰ってしまえば彼も追いかけては来られないでしょう?」
 あの父が自分と彼との間を認めるはずがない。自分が拒否している以上、なおさらだ。
「……問題は母さんだけどな」
 彼女の場合、面白ければOKを出しかねない。しかし、自分がいやがっていればそこまではしないだろう。そう続ける。
「お母様ですか……」
 しかし、ナナリーはため息をつくとこうつぶやく。
「あの方だからね」
 オデュッセウスまでこう告げる。
「……ともかく、僕はスザクの嫁にはなりません!」
 きっぱりとこう言い切った。

 ただ、スザクがそれで納得してくれたかどうかは別問題だったが。



19.02.11 up
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