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お隣のランペルージさん

19


 練習中のあれこれは、はっきり言って思い出したくない。最初は笑っていたクラスメートも、最後には気の毒そうな視線を向けてきた、と言えば想像が付くだろうか。
「僕は一生懸命やっているのに」
「はいはい、わかっているわよ」
 ただ、現実が伴わないだけよね……とカレンが笑う。
「努力してもどうにもならないこともあるのよね」
 ため息のように付け加えられてもうれしくはない。
「そうだな」
 それがわかっているのにどうして運動を競わせようとするのか。
「全く……運動会なんてなくなればいいのに」
 ため息とともにそうつぶやく。
「それしか誇れない連中がいるからじゃない?」
 スザクとか、と付け加えるのは普段から迷惑をかけられているからだろう。
「スザクは勉強もできるだろう?」
 とりあえずスザクのフォローをしておく。一見脳筋に見えてスザクはそれなりに頭がいい。ただ、勉強となると集中力が続かないだけだ。
「まぁ、ただの脳筋なら藤堂先生にあそこまで目をかけられないでしょうね」
 カレンもそれは納得している。
「ただ、あいつの場合、興味がないことはとことん避けるのよ」
「……で、答えだけを聞いてくると」
「やっぱり、アンタにもそうなのね」
 まったくあいつは、とカレンがため息をつく。
「まぁいいわ。藤堂先生に話すだけだし」
 スザクが頭が上がらない数少ない大人に、とカレンは言う。そうすれば少しはまじめに勉強をするだろう、と続ける。
「だといいがな」
 スザクのことだ。また別の手段を考えつくだろう。
 頭がいいのに勉強嫌いというのも困ったものだ。そう考えてルルーシュはため息をつく。
「まぁ、それは後で考えればいいか」
 今は運動会でどうやって恥をさらさないようにするかだ。ルルーシュはそう考えた。

 自宅に戻ってからルルーシュは衝撃的な事実を聞かされた。
「ユフィとマリーが来る?」
 何で、とルルーシュはオデュッセウスに問いかける。その隣でナナリーが喜んでいた。
「お姉様方に会えるのですね!」
 久々です、と彼女はうれしそうに続ける。
「先日、こちらでの生活を報告したときに、ね」
 そんなナナリーをかまいながらオデュッセウスが口を開く。
「陛下の所に二人が来ていて、それでね。話を聞かれてしまったのだよ」
 そうしたら二人──というよりはユーフェミアが『ルルーシュに会いに行きたい』と主張を始めたらしい。それにシャルルが負けた結果、こちらに来ることになったのだとか。
「……なぜ、運動会にあわせてくるんだ」
 自分の恥ずかしい姿を見て何が楽しいんだ、とルルーシュはつぶやく。
「そんなつもりはないと思うよ?」
「そうですわ、お兄様。お姉様方は単に『ちょうどいいから』としか考えていらっしゃいません」
 家族も見に行ける程度にしか考えていない、とナナリーは言う。
「それに、お姉様方もお兄様が運動が苦手なことはご存じです」
 ナナリーのその言葉にルルーシュは衝撃を受ける。
「嘘だろう?」
「本当ですわ。ですから、お兄様が徒競走でビリでも気になさらないと思います」
「それはそれでうれしくない」
 ため息とともにルルーシュはそう口にした。
「では、お兄様。お姉様方に会えるのはうれしくないのですか?」
「うれしいが……あの二人、僕たちが身分を隠していることを忘れてないよね?」
 ブリタニアにいるときとお同じような態度では一発でばれると思うが、とルルーシュはオデュッセウスを見つめる。
「大丈夫だろう。一応、従姉妹と言うことにしておくからね」
 それならば『お兄様』と口にしたところでばれることはない。だから、安心しなさい……とオデュッセウスは言う。
「そちらは心配していません。問題は他人に対する言動です」
 マリーベルの方は大丈夫だろう。問題はユーフェミアだ、とルルーシュは続けた。
「あの子は天然ですから、無意識にあれこれと咲世子さんに命じそうで……」
 そこからばれるのではないかと不安になる。ルルーシュはそう締めくくった。
「……ユフィは日本語がわからないから、大丈夫だよ、うん」
 オデュッセウスがそう言ってルルーシュを慰めてくれる。
「そうですわ。お姉様もバカではないはずですし」
 ナナリーのフォローになっているのかなっていないのかわからないセリフが壺に入ったのか。オデュッセウスが笑い出してその場はうやむやになってしまった。



19.03.20 up
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