お隣のランペルージさん
21
渋々とスザクは帰り、ルルーシュは妹たちと家の中へと入る。
「大丈夫だったかな?」
それと同時にオデュッセウスがこう問いかけてきた。
「兄上……見ていないで止めてください」
ルルーシュはそんな彼にこう告げる。
「そうでないと、人死にが出かねませんでした」
本気でスザクが殺されるかと思った。そう続ける。
「そうは言うけどね、ルルーシュ。私が彼女たちに勝てると思っているのかな?」
「……無理ですね」
オデュッセウスの言葉にルルーシュはこう答えた。それは彼を軽んじているわけではない。妹たち三人が結託すればオデュッセウスはおろかシュナイゼルでも太刀打ちできないからだ。
「かろうじて君の言葉は届くようだけどね」
「兄上のお言葉も同じだと思いますが……」
本当に彼女たちは、とルルーシュはため息をつく。
「それよりも着替えておいで。その間、マリーとユフィは私が見ていよう」
でないと突進していくからね、とオデュッセウスは続ける。
「お願いします」
着替えぐらいはゆっくりとしたい。そう思いながらオデュッセウスに頭を下げた。
「ナナリー。まずは着替えてからだよ」
そして二人と楽しそうに話しているナナリーへと呼びかける。
「はい、お兄様」
タタタ、とナナリーが駆け寄ってきた。その後をユフィが付いてこようとしている。
「ユフィ。君がルルーシュを大好きなのは知っているけどね。着替えにまでついて行くのはレディとしてどうかな?」
オデュッセウスがそれに注意の言葉を投げかけた。それにユーフェミアは渋々といすに腰を下ろす。
「早く戻ってきてね」
そしてこう声をかけてくる。
「わかっているよ」
こう言い返したものの、ゆっくりと着替えようと考えるルルーシュだった。
三十分ぐらいかけて着替えをして、ついでに宿題と明日の準備を終えたところでルルーシュはリビングに向かう。
「あら、早かったですわね」
ユーフェミアがこう言って迎えてくれる。てっきり怒鳴りつけられると思っていたのに、と首をひねっていたところ、マリーベルがルルーシュを手招いた。
「……ユフィは『身支度には時間がかかるものだ』と思っているのよ」
そう言われて納得をする。
「ありがとう。そこまで思い当たらなかったよ」
苦笑とともにそうささやき返す。
「宿題を終わらせてしまわないと、これからゆっくりできないからね」
そんな会話を交わしていれば、後ろから「何、内緒話をしているんですか!」とユーフェミアが文句を言ってくる。
「ごめんなさい。お兄様に確認しておきたいことがありましたの」
できれば内緒で、とマリーベルは微笑みながら言葉を返す。
「ところでお兄様。どのような競技に出られますの?」
代わりというようにこう問いかけてくる。はっきり言えば、聞いてほしくないことだ。
「……徒競走と玉入れだよ。後は用具係であちらこちら動くことになる」
ダンスのことはあえて言わないでおく。
「まぁ、忙しいのですね」
「そうだな」
だが、無様な様子を見せるよりもその方がましだ。心の中でそう付け加える。
「でも、ナナリーは最後のリレーに出るぞ」
ついでとばかりにナナリーへと話題を移す。
「クラス対抗だから、見ていて楽しいと思うが?」
確か、クラスで四人しか選ばれないはずだ。そう続けた。
「それはすごいですわ」
予想通りと言うべきか。ユーフェミアの意識はナナリーへと向いたらしい。
その事実にほっとしながら、ルルーシュはキッチンへと足を向ける。
「今日の夕食は咲世子さんといっしょに用意するよ。ナナリーは兄上といっしょに二人の相手をしていてくれ」
ついでに夕食の支度をいいわけに逃げ出すことにした。
「ルルーシュの手料理ですか! 楽しみです」
「えぇ。今日は甘えさせていただきますね」
二人そろってこう言うのだからかまなわないだろう。ルルーシュはそう考えた。
19.04.11 up