お隣のランペルージさん
22
当日、ルルーシュとナナリーは一足先に学校へと向かうことになった。
「お三方のことはお任せください」
咲世子の言葉に甘えたのだ。
なんと言っても日本の学校の運動会は経験がない。だから、彼女に任せた方がいいと思ったのだ。
「まずは席を取ってからお弁当をお持ちいたします」
しかし、この一言には引っかかりを覚える。
「……誰もいなくなるの?」
それならば席を別の人に取られるのではないか。そう思いながら問いかける。
「大丈夫です。ダールトン様の所のお子様がお一人、護衛で同行されていますから」
彼に頼む、と言われてルルーシュは首をかしげた。
「うちには泊まっていませんよね?」
「ホテルをとられたそうです」
二人がショッピングなどで出かけるときは合流していたらしい。その言葉に二人に振り回されているのだろうと推測する。しかし、いてくれてよかった。
「わかった。なら安心だな」
オデュッセウスでは何をしでかすかわからないし、と苦笑とともに付け加える。
「……ともかく、時間までにはまいりますので」
あえてそれに関しての返答は避けて咲世子は言葉を返す。ルルーシュにしても別にそれを指摘してこなくてもかまわないから、受け流した。
「ルルーシュ! いっしょに行こうよ」
「うるさいですわ」
「お前には迷惑かけてないだろう!」
玄関の方からこんな怒鳴り声が聞こえてくる。
「もう、あの二人は……」
それにあきれたようにこう告げた。
「咲世子さん、すみません」
「おきになさらず。それよりも遅刻されませんか?」
ルルーシュはこの言葉に時間を確認する。確かにそろそろ出かけないと用具係の集合時間に間に合わない。
「まずい……咲世子さん、行ってきます」
そう言い残すとルルーシュは玄関を出る。しかし、そこには脱力したくなるような光景が存在していた。
「お兄様は私と登校するのです! 貴方は一人でどうぞ」
「そんなことをするからルルーシュはいつまでもぼっちなんだ!」
「お兄様には私がいれば十分です!」
この二人は、とあきれたくなる。特にナナリーのセリフは何なのか。
「お前達」
ともかく、と二人に呼びかける。その瞬間、二人とも背筋を伸ばしてルルーシュの方へと視線を向けた。
「いい加減、けんかはやめろ。でないと遅刻するよ?」
そんな二人に向かってルルーシュはこう告げる。
「と言っても、お前達はもっとゆっくりでもいいんだがな。後から登校するか?」
早めに登校しなければいけないのは用具係だけだ。六年生ともなれば、本来は後一競技に参加しなければいけないことになっている。それを免除されたのだから我慢しなければいけないだろう。
しかし、ナナリーとスザクは違う。
彼らはまだ四年生だ。だから進行に関わるような係は任されていない。だから、もっとゆっくり登校しても何も言われないはずだ。
「いやです」
「そうだよ。いっしょに学校に行く!」
それなのに、二人はこう言うとルルーシュの腕にすがりついてくる。
「なら、けんかをするな」
そういえば二人はいったんは首をすくめる。
「だって、スザクが悪いんですもの」
「ナナリーがルルーシュを独占しているからだろ」
「妹の特権です!」
だが、すぐにけんかは再開された。
ため息をつくとルルーシュは二人の腕を振り払う。
「そこで好きなだけけんかしているんだな」
こう言い残すとさっさと歩き出す。もっとも、二人が謝ってきたら許すつもりではあったが。
「お兄様、ごめんなさい!」
「ルルーシュ、待ってよ……謝るからさぁ」
二人はこう言うと追いかけてくる。しかし、ここで甘い顔をしてはダメだ。
「人の言ったことを聞けない人間は信用できないから」
自分の言葉をすぐに非理がエス人間も、とルルーシュはあえて二人の顔を見ずに告げる。
「ごめんなさい!」
「もう、けんか、しません」
さすがにここで許さなければまずいか。
「本当だな?」
「……たぶん」
「おそらく」
今ひとつ不安が残るが、妥協するか。それにしても、登校前に疲れたような気がする。ルルーシュはそう考えると深いため息をついた。
19.04.20 up