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お隣のランペルージさん

24


 咲世子とともに作った弁当はナナリーとユーフェミアが張り合うように食べていた。それをルルーシュ達があきれつつもしっかりと自分の文は確保するという状況である。
「それにしてもルルーシュ。ダンスは得意ではなかったのかしら?」
「苦手ではないよ。ただ、あんな風な動きをしたことはなかったからね」
 マリーベルの問いかけにルルーシュはこう言い返す。
「テンポも僕が知っているダンスよりも速いし」
 あれで最後まで踊れというのは、自分にとってはつらいことだ。ため息とともにそう続けた。
「確かにそうかもしれませんわね」
 あれを踊りきっただけルルーシュは努力しただろう。マリーベルはそう告げる。
 そのときだ。
「マリーとだけ話すのはずるいです!」
「私もかまってください」
 両側からナナリーとユーフェミアが抱きついてくる。
「その前に食事をさせてくれないか?」
 終わってからならいくらでも話を聞くから、とルルーシュは告げた。ここで拒否をするとさらに厄介なことになると経験上知っているのだ。
「確かに。ゆっくりと味わって食べることも重要だよ?」
 今まで黙っていたオデュッセウスが静かな声音でそう言う。
「でなければ、彼に全部とられるかもしれないしね」
 だが、その後に続けられたセリフは何なのか。反射的に皆、オデュッセウスの隣へと視線を向ける。
「ルルーシュ! これうまいな」
 そうすれば、満面の笑みで料理をぱくついているスザクの姿が確認できた。
「スザク……」
 お前の分は用意していないといっただろうが、とルルーシュは声を潜めながら続ける。
「え〜〜! いっぱいあるからいいじゃん」
「よくない。我が家の人数を数えてみろ」
 そう言われてスザクは人数を数え始めた。
「七人だろう?」
「そうだ。沢山あって当然だろうが」
 それを遠慮なくぱくつかれては他の人間が食べられないだろう。ルルーシュはため息をつきながらそう続ける。
「……だって、うまそうだったんだもん」
 スザクはわざとらしいまでに肩を落としながらそう言い返してきた。
「何をおっしゃいますの、お従兄様」
 あきれたように告げたのは神楽耶だ。
「神楽耶様?」
 いらしていたのですか、とルルーシュは視線を向ける。
「マリー、それにユフィ。皇の神楽耶様だ。ご挨拶を」
 そう告げれば、二人は居住まいを正す。 「初めまして、神楽耶様。マリーベル・ジヴォンです」
「ユーフェミア・ダールトンですわ。よろしくお願いいたします」
 そして、彼女たちはこう告げた。
「ご丁寧にありがとうございます。皇神楽耶でございます」
 神楽耶もまた、礼儀作法のお手本のような態度で自己紹介をする。
「これでこの方はあのお猿よりも年下なのですわ」
 さらりとナナリーが毒を吐く。だが、それに二人は目を丸くした。
「ナナリー、本当なの?」
「信じられません。てっきり年上だと。礼儀作法も完璧でいらっしゃるのに」
 二人はその表情のままこうつぶやいている。
「スザクの方が年下だろうという意見には、俺も賛成だがな……」
 挨拶一つとっても神楽耶の方が大人に思えるから、とルルーシュはため息をつく。
「俺の方が年上だ!」
 スザクがむっとしながら言い返してくる。
「そうは思えない態度をとっているのは誰だ?」
 あきれたようにルルーシュは言い返す。
「勝手に人のものを飲み食いするような人間はお子様と言われて当然じゃないのか?」
「ルルーシュの作る料理がおいしいのが悪い!」
 これは見事な責任転嫁だな。ルルーシュは小さくため息をつく。
「わかった。お前には二度と食べさせない」
 きっぱりと告げれば、スザクはショックを隠せないという表情になる。
「それは……」
「僕としてもその方が楽だしな」
 文句があるのか、とスザクをにらみつけた。
「……お従兄様、恥ずかしいまねはそこまでにしておいてください」
 さらに神楽耶がこう告げる。
「おばさまにお話ししますから」
 そこまで言われたところで、スザクは自分の味方がいないと悟ったらしい。
「……ごめん」
 小さな声で謝罪の言葉を口にする。だが、それにルルーシュは言葉を返さなかった。

 最後のリレーはスザクがずたぼろの成績だったのは、そのせいだろう。それでも、ナナリーの活躍でクラスは一位だった。スザクの調子が悪かったのは食べ過ぎと言うことになっていたと知ったのは、しばらくたってからのことだった。



19.05.11 up
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