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お隣のランペルージさん

28


 博物館はすごかった。最初は興味がなかったはずのユーフェミアまで目を輝かせて恐竜の骨を見つめている。
「これがこの国でねぇ」
 オデュッセウスも感心したようにそうつぶやいた。
「ブリタニアにもあるとは思うが……」
「開発の方が優先で、こういうものを発掘しようとは考えませんね」
 ルルーシュとマリーベルはそんなきょうだい達の様子を見ながらこそこそとささやき合う。
「でも、あってもいいかもしれないな」
 ブリタニアの国土は広い。ナナリー達が喜ぶなら発掘させて一所に集めてもいいのではないか。ついでに研究でもさせれば国力が上がるだろう。
「ユーリアも興味を持つでしょうね」
「カリーヌもな」
 ナナリーと同じ年の二人だ。彼女の喜び様を見ていればどうなるかぐらい想像が付く。
「兄上はともかく、ユフィのはしゃぎ様はびっくりだけど」
 興味がなかったのではないのか、とそうつぶやいた。
「実は興味があったのでしょう」
 ナナリーに張り合ってわがままを言ってみただけではないか。マリーベルはそう言ってくる。
「なるほど……」
 それならば納得できる、とルルーシュはうなずいた。同時にばかばかしくなってしまう。もっとも、それを顔に出すことはしない。
「これと同じ規模の博物館ぐらいなら作れるだろうか」
 代わりにこう口にした。
「たぶん作れると思うよ」
 いったいいつの間にそばに来たのか。オデュッセウスが声をかけてくる。
「兄上」
「本当ですか?」
「あぁ。君たちが『興味を持った』と陛下の耳元でささやけば、それで十分だろうね」
 あの父は、と二人とも頭を抱えたくなった。
 だが、すぐにそれがシャルル・ジ・ブリタニアという男だと納得する。
 家族に恵まれなかった男。
 だからこそ、子供達を大切にしている。だが、そこに順位ができるのは人として当然だろう。
「まぁ、民のためにもいいのではないかと」
「一番喜びそうなのが誰かは別にしておきましょう」
 妹たちが喜んでいる姿を見るのも楽しいですし、とマリーベルは微笑む。
「確かにね。あれは見ている方もうれしくなるよ」
 オデュッセウスもそう言って微笑む。
「やはり作らせるべきだね」
 そう言って彼はうなずく。
「研究している者達も喜ぶでしょうね」
 ルルーシュもそう言ってうなずく。
「二人とも、触っていいとかいてあるもの以外は触れてはダメよ!」
 不意にマリーベルがこう叫ぶ。どうやら抑えきれない二人が模型に手を伸ばしたようだ。
「仕方がない。捕まえてきます」
 ため息交じりにルルーシュはそう告げる。
「手伝うわ。ルルーシュ一人じゃ無理でしょう」
「……だな」
 それは否定できない、とルルーシュは素直にうなずく。
「頑張ってね。私は戦力にはなれないから」
 オデュッセウスの気の抜けた応援を背にルルーシュ達はユーフェミアとナナリーの所へ向かった。

 はしゃぎ回る二人を捕まえることができたのは、それから十五分ぐらいたってからのことだった。
「お前達は……もう少し周囲のことを考えろ」
 ルルーシュはそう言って二人をにらみつける。
「ここは本国じゃないんだから」
「でも、ルルーシュ……」
 ユーフェミアが言い返そうと口を開く。
「確かにそうだね。ここには他の家族もいるのだから、あまりに見苦しい行動はとってはいけないね」
 だが、それよりも早くオデュッセウスが口を開いた。
「触ってはいけないとかいてあるものは触れてはいけないのだよ」
 おそらくそう書いてあるものは本物の骨なのではないか。それに勝手に触れて万が一のことがあったら二人に何ができるのか。そう続ける彼にナナリーは素直に「ごめんなさい」と口にしている。
「……でも、触りたくなります」
 だが、ユーフェミアは屁理屈をこねた。
「そんなに触りたいなら本国で父上にお願いするんだな」
 あきれたようにルルーシュは口を開く。
「そうですわね。確かにそれならば貴方が壊したとしても泣くのは研究者だけですから」
 さらにマリーベルがきつい一言を投げつけた。
「……ごめんなさい。はしゃぎすぎました」
 ようやく理解できたのか。ユーフェミアも謝罪の言葉を口にする。
「本国ではおとなしいのに」
「ここには周囲の目がないからついつい悪のりしてしまいました」
 オデュッセウスのつぶやきにユーフェミアはこう言い返す。
「だからといって羽目を外しすぎるのは禁止だよ」
 では続きを見に行こう。彼はそう言いながらもユーフェミアの手をしっかりと握る。勝手にどこかに行かないようにするためだろう。
「ナナリー。手をつなごうか」
 ルルーシュもさりげなくこう提案する。
「はい、お兄様」
 うれしそうに告げるナナリーにルルーシュは微笑みながらしっかりと手を握りしめた。



19.06.20 up
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