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お隣のランペルージさん

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「……あれ、本当にスザク?」
 別人じゃない、と顔を合わせた瞬間、カレンに言われる。
「あぁ……思いきりしごかれたからだろう」
 母さんに、と答えながらルルーシュは視線をそらした。
 まだ、普通の鍛錬中はよかったと思う。スザクも悪態をつきながらもついて行けていた。
 問題だったのは自由研究のことを知られた後だ。
 鍛錬はもちろん、それまでは自由時間だった午後まできっちりとマリアンヌに見張られる。そして、自由研究が彼女の満足郁で気になるまでみっちりとさせられたのだ。
 その結果、字の書き方から何まで彼女にたたき込まれることになった。
 最終的にスザクに礼儀作法が身についたのだからかまわないだろう。
「僕としてはもう少し力を抜いてもいいと思うが……」
「それはダメよ」
 カレンが即座にこう言ってくる。
「せっかくいい子になっているんだから、もう暫くこのままでいてもらった方が静かでいいわ」
「それは別の意味でひどいセリフだと思うけど?」
「いいじゃない。今までずっと迷惑をかけられていたんだから」
「まぁ……それは否定できないね」
 本当に、とルルーシュもうなずく。
「スザクには悪いけど、しばらくはおとなしくしてもらおうか」
 もっとも、いつまで今のままでいてくれるかはわからないが。ルルーシュはそう続けた。
「それがいいわ」
 これから忙しいし、とカレンは笑う。
「どういうことだ?」
 ルルーシュじゃ首をかしげながらそう問いかける。
「アンタは知らなかったのね。二学期と言えば文化祭があるのよ」
 今から準備しないと劇などはものはとんでもない結果になるから。カレンはそう教えてくれる。
「六年生だしね。今回がラストなのよ」
 何よりと彼女は続けた。
「劇ができるのは六年生だけだから。他のクラスには負けたくないし、せっかくなら目立ちたいしねぇ」
 皆が見てくれるんだし、と続ける彼女にルルーシュは苦笑を浮かべる。
「なるほどね」
 ある意味、小学校で学んだことを発表できる最後の場なのだろう。そしてスポットライトを浴びることができる最初で最後の場と言うことか。
「そう言う場に僕が参加していいのかな?」
 自分はたまたまここに来ただけの人間だし、とルルーシュは首をかしげる。
「いいんじゃない? 少なくとも女子はそう思っているみたいだし」
 そうなのだろうか。
 ルルーシュはさりげなく教室内を見回す。そうすれば、女子は皆手をひらひらと振っている。男子の中にもうなずいているもの達がいた。
「アンタ、ものすごく見た目がいいから。劇に出せば絶対に視線を集めるわ」
 それだけでもアドバンテージになる。そう言われてルルーシュはため息をつく。
「あまりうれしくないな、それは」
 別に見目で褒められても自分の実力ではないから、と付け加える。
「劇ではそれが重要だと思うんだけど……」
 違うの? とカレンが真顔で問いかけてきた。
「まずは脚本だろう?」
 劇で一番重要なのは、とルルーシュが反論する。
「僕も詳しいわけじゃないけど……」
 そう付け加えたときだ。前の扉が開いて先生が入ってくる。
「お前達、黒くなったなぁ……」
 教室内を見回すと彼はこう言う。
「と言うことで、小テストをするぞ! 遊んでなかったかの確認だ!」
 そう言いながら彼はプリントを振る。
「鬼!」
「悪魔!!」
「何とでも言え!」  ほら、さっさと後ろに回せ、と彼は言う。それにまた教室は騒がしくなる。
「普段からきちんとやっていれば問題ないぞ」
「予告してくださいって言いたいんです!」
 そんな声を耳にしながらルルーシュは回ってきたプリントを手に取る。
「始めるぞ!」
 この一言で静かになるあたり、さすがだと言えるだろう。そう思いながらプリントをひっくり返した。



20.01.10 up
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