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お隣のランペルージさん

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「ルルーシュ達はどんな劇やるんだ?」
 スザクがストレートに問いかけてくる。
「ブリタニアの童話だよ」
 ルルーシュはあっさりと答えを返す。
「お姫様と騎士が出会って恋に落ちる話」
 恋が実ってめでたしめでたし、で終わるよ。さらにそう続けた。
「あのお話ですか?」
 ナナリーが問いかけてくる。
「お前がどれを想像しているのかはわからないが……まぁ、そのあたりだ」
 似たような話はいくつかあるから、とルルーシュはスザクに説明した。
「ブリタニアの話って言うと、ルルーシュが持ってきたのか?」
「脚本自体はあるものだよ。僕がしたのは日本語に訳しただけ」
 いい勉強になった、とルルーシュは付け加える。
「……そうなんだ」
 俺にはできない、とスザクはつぶやくのが聞こえた。
「まぁ、それは置いておいてだ」
 しかし、すぐに彼は顔をあげる。そして、きらきらした視線でルルーシュを見つめた。
「ルルーシュはなんの役をやるんだ?」
 こいつの目的はこれか。おそらくナナリーも絡んでいるだろう。二人とも、別方面からアプローチを仕掛けてきたのは偉いが、答えるいわれはないだろう。
「内緒だ」
 にっこりと笑うとそう告げる。
「えぇっ! そう言わずに教えてよぉ」
 スザクがルルーシュの肩をつかむとそう言ってねだってきた。
「内緒だ。ナナリーにも言ったが、教えてしまえばつまらないからな」
 前日の総合練習まで待て、とそう続ける。
「やだ! 教えてよ!!」
「……教えてもいいが、そのときはもう家には入れないぞ」
 お前とのつきあいもそこまでだ。そう言ってスザクをにらむ。
「それもやだ!」
「なら、諦めろ」
「教えてよ」
「なら、お前とのつきあいはここまでだな」
「それはやだ」
 コントの様なやりとりを何度繰り返しただろう。
「ルルーシュのけち! こうなったらカレンに聞いてやる」
 スザクはそう言うと家を飛び出していく。
「……あいつは本当にそれを聞き出すためだけに来たのか?」
 その後ろ姿を見送りながらルルーシュはつぶやく。
「教えてくださればいいのに」
 スザクがかわいそうです、とナナリーが言う。
「普段は犬猿の仲なのに、こういうときだけは結託するんだな、お前達は」
 呆れたようにルルーシュが言い返す。
「お前は自分が知りたいだけだろう?」
 さらにそう続けた。
「……いえ……私だけではなくて……」
 視線をそらせながらナナリーが口を開く。
「その……お父様が……」
「絶対に教えない! 当日まで内緒だ」
 むしろ当日もナナリーは外に放り出しておきたい。ルルーシュはそう心の中でつぶやく。
「やっぱり教えなくて正解だったな」
 シャルルにばれたらどうなるか。想像に難くない。
 いや、彼のことだ。
 当日誰かを派遣してくる可能性も否定できない。
 それでも当日なら全部終わっているから問題はないだろう。すぐにそう思い直すことにした。

 スザクはその後、カレンの元に突撃したらしい。
「教えるわけないでしょう?」
 アンタバカでしょう、と彼女はスザクに冷たい視線を向ける。
「言っておくけどクラスメート達皆口を割らないからね?」
 そんなことをしたらどうなるか。いやと言うほどわかっているはずだ。だから、決して漏らさないだろう。
「当日までの楽しみにしておきなさい」
 それとも、と彼女は真顔で問いかけてくる。
「藤堂先生にちくられたいの?」
 スザクはぷるぷると首を横に振って見せた。
 真顔のカレンは怖い。スザクがそう語ったことは内緒にしておこう。



20.03.10 up
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