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お隣のランペルージさん

47


 あれこれと周囲が騒がしかったが、文化祭まであと一週間となった。劇の方の準備は万端とは言わなくてもそこそこ人に見せられる
 しかし、ここで最大の爆弾が落とされるとはルルーシュも予想していなかった。
「兄上、今なんとおっしゃいました?」
 おそるおそるオデュッセウスを見つめながら問いかける。
「陛下がおいでになるそうだよ、文化祭に」
 オデュッセウスがため息交じりにそう告げた。
「目立ちすぎます!」
 シャルルが来るとなれば一般性との父兄は中には入れないことになる、とルルーシュは続ける。皆楽しみにしていたのに、と。
「……やはりそうだよね」
 さて、どうしようかオデュッセウスもため息をつく。
「お父様がいらっしゃるのはうれしいのですが……練習の成果を見てもらえない皆がかわいそうです」
 そのくらいならば来てもら割らなくていい、とナナリーも口にする。
「父上の来訪には条件をつけるしかないでしょうね」
 ため息交じりにルルーシュは言葉を綴り始めた。
「条件というと?」
「ブリタニアの皇帝とばれない、平民と同じ場にいても気にしないし文句を言わない、最後に自分は皇帝だと声高に叫ばない。これが最低限です」
 それができないならばマリアンヌに頼んで玉座にでも縛り付けてもらおう。ルルーシュは心にメモしておく。
「後は、極力偉そうな言動は慎むぐらいでしょうか」
 あの口調で話しかけられては一発で正体がばれる。それでは意味がないのだ。
「しかし、陛下のお顔は変えられないが?」
「他人のそら似とか……それでダメならば影武者役をやっていたことにすればいいのではないかと。体を壊してその座を降りたと言えば納得してもらえるのではないかな、と考えますが」
 もっとも、日本でブリタニア皇帝の顔を知っているものはいないだろう。あの特徴的な髪型さえごまかせれば気づかれないのではないか。
 ルルーシュの言葉にオデュッセウスもうなずいてみせる。
「私も髭を剃っただけで気づかれなかったからね」
「お兄様はおひげがないとお若く見えます」
 オデュッセウスの言葉にナナリーがこんな言葉を返す。
「それがいやでね。少しでも侮られないようにと考えたのだよ」
 シュナイゼルぐらい迫力があれば話は簡単だったのだろうが、とオデュッセウスはため息をつく。
「兄上は今のままでよろしいかと。荒事や謀略に関しては僕たちの役目でしょう」
 自分はまだ幼くて役に立たないかもしれないが、とルルーシュは付け加えた。
「他のもの達が私の座を狙っていると思わないのかな?」
「少なくともシュナイゼル兄上やコゥ姉上をはじめとするきょうだい達は兄上の味方だと思っています」
 他の兄上方はわかりませんが、とルルーシュは正直に口にする。会ったこともないから判断ができないとも。
「君たちが味方なら十分だよ」
 オデュッセウスはそう言って微笑む。やはりきょうだいであら祖ザズにすむとなればうれしいのだろう。
「しかし、陛下が訪問されるとなると皆の邪魔になるか」
 だが、彼はすぐに話題を戻してきた。
「母さんが夏に来たときにはすぐに隔離できましたからさほどではなかったのですが……」
 マリアンヌの場合、目的は温泉だったから可能だった。しかし、シャルルはあくまでも自分達のクラスの劇を見るために来るのだろう。その手は使えない。
「ジェレミアに頼んでビデオを撮ってもらう予定ですから、それで満足してくれれば一番なのですが」
 その可能性は限りなく低いだろう。
「無理だね」
 オデュッセウスはあっさりとこう言ってくれる。
「なら、条件を呑んでもらうしかないですね。母さんには連絡を入れておきます」
「こちらはシュナイゼル当たりを味方につけておくよ」
「ユフィお姉様からコーネリアお姉様に話が行くようにします」
 なんとしても《ブリタニア皇帝》の訪問だけは避けなければ、と三人でうなずき合う。
「シャルル・ランペルージとしてきていただけるのでしたら問題はありません」
 後はこちらでフォローすればいいだけのことだ。ルルーシュはそう告げる。
「それが一番難しいが、確かに無難だろうね」
 陛下にはそう伝えておこう、とオデュッセウスはうなずく。
「遅くなってしまったね。お風呂に入っておいで」
 明日も学校だろう、と彼は続ける。
「そうですね。ナナリー、先に入っておいで」
「はい」
 言葉とともにナナリーはいすから立ち上がった。そしてまっすぐにバスルームへとかけだしていく。
「さて……陛下が素直に聞き入れてくださるか」
「大丈夫でしょう」
 マリアンヌが釘を刺してくれるはずだ。そういえばオデュッセウスもうなずいてくれた。



20.03.20 up
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