ペーパー小話
いちご
意外かもしれないが、イチゴだけは日本のものが一番おいしいと思う。それに関しては、ブリタニアでも否定できる人間はほとんどいないようだ。
そう言うわけで、久々に里帰りしたスザクが選んだお土産は日本産のイチゴだった。この時期、お歳暮だのなんだのでハウス栽培の贈答用イチゴが豊富なのもその要因である。
しかも、今回は新品種が出ていたのだ。味見をしてみたが、大きさといい甘みといいとてもおいしかった。
これならルルーシュも喜んでくれる。
それは予想していた。
「……まさか、ここまでうけるなんて……」
目の前で拳半分ほどのいちごをほおばっては目を細めている彼の姿を見ながらスザクはそう呟く。
「これはものすごくおいしいからな」
即座にルルーシュがこう言い返してくる。
「日本人はこんなものまで最高のものを作り出すんだな」
その勤勉さは見習わなければいけないのではないか。彼はそう続けた。
「おいしいものを食べたいのは全世界共通だからね」
そして、とスザクは笑う。
「日本人は手先が器用な人が多いから」
そう言う問題ではないような気がする。だが、それ以外に何と言えばいいのか、彼にはよくわからないのだ。
「言われてみれば納得か」
何故かルルーシュはそれであっさりと納得してしまったらしい。
あるいは目の前のいちごに集中しすぎてスザクの言葉を聞き逃しているのだろうか。それでも相づちを打ってくるのは、彼の性格故だろう。
「本当。農家の人には頭が下がるよな」
苦笑とともにスザクは言葉を口にした。そのまま自分もいちごへと手を伸ばす。
「土からきちんと作らないとこうならないって言うし……」
他にもいろいろと手間暇をかけているからこそ、これだけの品質のものができるのだろう。
「……誰か日本に修行に行かせるか……それとも、空輸してもらった方がいいのか?」
毎日でも食べたいのか。ルルーシュがこんなセリフを呟いている。
「毎日だと日本人の口に入らなくなるから」
慌ててスザクはこう言う。
「……わかっているが、これは捨てがたい」
「たまにのご褒美でいいんじゃない? 月一ぐらいなら、神楽耶に言えば何とかなると思うし」
もっとも、空輸の許可が得られればだが。
「そうだな。たまに食べるからこそ、よりおいしく感じられるか」
そう言いながら、最後の一個を手に取る。
「そうして」
ルルーシュのお気に入りだとしれれば、きっと、他の皇族達も手に入れようとするだろう。輸送費の分だけ日本よりも高くなるが、彼らには大きな差ではないはずだ。それよりも、これが輸出できるとなれば、農家のやる気が変わってくるはず。
「春になったら、日本に行ってイチゴ狩りもいいかもね。畑になっているのを直接もいで、練乳をつけたり、そのまま食べたり出来るんだよな」
あれはあれでおいしい。そう呟く。何よりも、みんなでできるのがいい、と付け加えた。
「楽しそうだな、それは」
どうやらルルーシュも興味を持ったらしい。
「何なら、ナナリーも一緒に連れて行く?」
「もちろんだ」
間髪入れずに言い返されて、思わず笑ってしまう。さすがは筋金入りのシスコン、と言うべきなのか。
「了解」
それでも、一緒に行くのは楽しいだろう。そう考えて言葉を返す。
「と言うことで、もう一種類は明日ね」
さりげなくそう付け加えた瞬間だ。
「まだあるなら、さっさと出せ!」
ルルーシュがこう言いながら身を乗り出してくる。
「もったいないよ。せっかく、今のがおいしいという余韻に浸っているんだから」
それにスザクはこう言い返す。
「ナナリーだって、せめて一種類ぐらいは食べたいだろうし。だから、明日」
そう言えば、ルルーシュは何かを考え込むかのように視線を彷徨わせ始める。どうやら本気で悩んでいるらしい。
そこまでいちごに執着をするのか、と別の意味で感心してしまう。
「そう言うところも可愛いけど」
こんな感想を抱いてしまうのは自分が彼に惚れているからなのか。まぁ、それはそれでいいけど、と言う結論になるのは、末期症状かもしれない。
「……仕方がない。ナナリーのためだ。今日は我慢する」
スザクがそんなことを考えている間にルルーシュも結論を出したようだ。
「代わりに、キスをしろ」
しかし、こう言い出されるとは思わなかった。
「ルルーシュ?」
「いやか?」
「まさか。許可が出るなら、いつだって」
スザクの言葉に彼は満足そうに微笑む。
「じゃ、キスを」
「Yes.Your Highness」
言葉とともにスザクも身を乗り出す。そのまま唇を重ねた。
「うん。やはりおいしいな、このいちご」