ペーパー小話
ワイルドストロベリー
「ずいぶんとかわいらしい鉢植えだな」
スザクの部屋に足を踏み入れた瞬間、それに気付いたのだろう。ルルーシュがそう言う。
「あぁ、それね……」
苦笑と共にスザクは視線を鉢植えに向ける。
「ノネットさんに押しつけられたんだよね」
断れなかった、とため息と共に続けた。
「ノネットか……確かに断るのは難しいな」
ルルーシュが苦笑と共にうなずいている。
「余計なところだけ母さんに似たからな、あいつも」
見習わなくていいものを、と彼は続けた。
「コーネリア殿下もそんなところがおありだし……マリアンヌさんの影響力ってすごいよね」
そう言いながら、スザクは彼に座るように促した。
「しかし、お前に植物の面倒が見られると花。朝顔やひまわりを枯らしていたのに」
「小学校の頃の話だよ……それに、咲世子さんが気にかけてくれているから」
枯らしてはいけないらしい、とスザクは視線をさまよわせながら言った。
「別にお前が枯らしてもノネットは笑って終わらせると思うが?」
「ノネットさんはね。マリアンヌさんも大丈夫だと思うけど、他の女性陣が怒りそうで」
「なぜだ?」
「なんか、これを育てていると幸せが来るんだって言う伝説があるみたいなんだよね。だからだよ」
この言葉にルルーシュは意味がわからないというように首をかしげてみせる。
「要するに、ルルーシュを幸せにしろってみんなが言いたいんだと思うよ」
まぁ、それは当然のことなんだけど。スザクは苦笑と共にそうつぶやく。
「……十分幸せだと思っているがな、俺は」
ルルーシュはさりげなく視線をそらすとこんなセリフを口にしてくれる。その瞬間、スザクの口元に無意識に笑みが浮かぶ。
「僕だってそうなんだけど……女性陣から見るとまだまだ足りないのかな?」
その表情のままこう告げる。
「あいつらの言うことは気にするな」
ルルーシュはそう言いながらスザクの頬に手を添えた。
「俺は、お前と母さんとナナリーがいてくれれば、それで十分だ」
そう言いながら彼はきれいな笑みを浮かべる。次の瞬間、そっと目を閉じた。
それが何をねだっての行動なのか確認しなくてもわかっている。
だから、スザクはためらうことなく自分の唇を彼のそれへと重ねた。