ペーパー小話
父の日?
「うざいな」
視界の隅をかすめる横ロールが、とルルーシュがはき出す。
「かまってほしいんだよ、きっと」
それにスザクはこう言い返す。
「今日は六月の第三週だから」
そしてさらに言葉を重ねた。
「六月の第三週? 何か意味があるのか?」
まさか知らなかったのか、とスザクは目を丸くする。
「ルルーシュって、頭はいいけど、たまに常識が抜けているよね」
それとも『父親に関すること』だからだろうか。
「今日は《父の日》でしょう?」
確か、ブリタニアが発祥の地だよね、と首をかしげる。
「亡くなった父親に感謝を捧げる日だったんだがな」
いつの間にか生きている父親に感謝を示す日になった。それに関しては別段かまわないだろう、とルルーシュは続ける。
「問題なのは、感謝を示されるに値しない人間までがそれを希望していると言うことだとは思わないか?」
彼はさらにそう続けた。
「うちの親みたいな?」
あれに感謝をするのは難しい。母親ならばまだしも、とスザクはつぶやく。
「そういうことだ」
ルルーシュも苦笑と共にうなずいて見せた。
「仕事は出来ても、親として尊敬できないとだめだよね」
「それ以前に、我が家の場合、あれよりも母さんの方がよっぽど父親らしいがな」
「……千尋の谷に良く突き落としてくれるしね」
「それは言うな」
だが、事実否定は出来ない。
戦場で先陣を切るのも部下に稽古をつけるのも、兵器の開発に関わっているのもマリアンヌだ。自分たちの目につくところで普通の父親がすべきことをしていると言っていい。
「だが、そう考えれば母さんに感謝すべきなのか?」
「そのあたりはルルーシュの判断次第じゃないかな」
「そうだな」
じゃ、そうしよう。ルルーシュはそう言うと視線を書類に戻す。スザクもまた自分の仕事に戻った。
しかし、これが後日、厄介ごとを招く結果になるとは思ってもみなかった。
「陛下がすねておいでなんだが」
オデュッセウスがまず口火を切る。
「この前、お前のところに行ってからなんだよ。何か陛下の悪口でも言わなかったかな?」
その言葉に周囲にいる彼のきょうだい達がうなずいている。
「この前、ですか?」
しかし、ルルーシュは何が悪かったのか思い当たらないようだ。
「あれじゃないかな。陛下よりもマリアンヌさんのほうが男らしいという話」
父親らしいだっただろうか、とスザクは首をかしげる。
「あぁ、あれか。だが、あれは事実しか言っていないぞ」
そうでしょう、と彼は視線を兄姉達に向けた。
「……確かに、それは否定できぬな」
「あの方と比べるのが間違いの元だろう?」
ため息交じりにそう言い返される。
「ですから、俺のせいではありません。第一、執務中の気分転換の戯れ言ですよ? 陛下の前で口にした記憶はありません」
どこで聞いておられたのか、と白々しい主張をルルーシュは口にした。
「陛下の自業自得と言うことだね、つまりは」
シュナイゼルの言葉に誰も異論を挟めない。
「まぁ、適当にご機嫌を取ってくれないかな? 執務が滞る」
「仕方がありませんね」
だから父親としての威厳が失われるのだ、とルルーシュがつぶやく。それは間違いなく正論だろう。
「ここにマリアンヌさんがいなくて良かったね」
スザクの言葉にその場にいた全員が首を大きく縦に振って見せた。